複数台や複数拠点にまたがる
システムの運用を一元管理
一般に、IBM iの周辺では業務システムを搭載するPCサーバーが数多く稼働しているが、基幹システムにおける処理の結果を業務システムへ反映させる場合、その連携は人手による入力であったり、IBM iからPCサーバーへ転送したファイル/データを手動で業務システムに取り込むということが広く行われている。
この方法は、要員に余裕があり、時間や工数をそれほど気にしなくてもよい場合は問題にならない。しかし、業務処理にスピードや正確性、効率がより強く求められるようになった昨今、ジョブやデータの連携、自動化・スケジューリングのニーズが急速に高まっている。
これに対するソリューションはさまざまあるが、本稿ではその代表例として、IBM i
分野で多数の実績をもつヴィンクスのジョブ管理製品「Hybrid SCHEDULER」とデータベース同期製品「Hybrid DB」を紹介したい。
Hybrid SCHEDULERは、複数あるジョブの先行関係や起動の契機をスケジュール化し自動実行するツールである。これにより複数台や複数拠点にまたがる業務システムの運用を一元的に管理でき、運用負荷の低減や運用ナレッジの標準化・共有化を図ることができる。また、実行中のジョブが異常終了した場合でも、リカバリプログラムを設定しておくことで自動でトラブル対応が行える
図表1は、住宅設備メーカーで運用中のHybrid SCHEDULERの導入事例で、IBM i上の受発注システムでデータが変更になると、PCサーバー上の会計システムが起動してジョブ(B)を実行し、正常終了すると、IBM iの生産システムが起動。そのジョブ(C)が正常終了すると、今度は別のPCサーバー上の実績系システムが起動してジョブ(D)を実行する、というシステムである。このシステムでは一連の処理を、個々の業務システムを変更することなく、Hybrid SCHEDULERとHybrid SCHEDULER Clientの連携だけで実現している。
「業務システムが異なるサーバーに置かれている場合、ジョブの連携を“みなし起動”で行うとタイミングがずれ、正しく処理できないことがあります。Hybrid SCHEDULERは、異機種間にまたがる業務システムのスケジュールを一元管理できるの
で、スケジュールサーバーとしても活用できます」と、運用プロダクト事業部の白神靖久氏(運用プロダクト部 第1課 課長)は説明する。
ジョブEは、先行のジョブDが正常に終了しなかったので待機している状態を示している。Hybrid SCHEDULERでは、こうした待機処理やトラブル処理をきめ細かく設定できる。
IBM iのDBデータを
PCサーバー上のDBにミラーリング
Hybrid DBは、IBM i上のデータベース(Db2 for i)のデータをPCサーバー上のDBにリアルタイムに同期(ミラーリング)するツールである。「IBM i上の基幹データを別サーバーに移して自由に活用したいというニーズに応える製品」(白神氏)で、フィールド単位で細かく同期の設定が可能。また、クラウドを含めて複数のサーバーへの同期が行える。
図表2は、製造業で利用中のシステムである。Hybrid DBの導入前は、各工場の生産管理担当者が本社の工場系基幹システムにアクセスしてデータを取り込み、各工場の生産管理システムに展開していたが、本社と工場とを結ぶネットワーク回線が細かったために時間がかかり、また各工場からのアクセスが集中すると基幹システムの業務に支障が出るという問題を抱えていた。
Hybrid DBにより、工場系基幹システムのデータを各工場のPCサーバー上のDBにリアルタイムで同期し、さらに別のPCサーバー上のOracleにミラーリングするようにした。これにより、各工場の担当者はOracleのデータを取得し、生産管理システムに展開できるようになり、本社システムにアクセスしていたときの問題を解決した。
「Hybrid DBは、必要なテーブルのデータだけのミラーリングも可能なので、セキュリティ対策の面でも有効なソリューションです」と、白神氏は強調する。