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会社・上司からの指示をチャンスと捉える|生川友子氏  ~エキスパートのセルフ・キャリア・マネジメント

生川 友子氏

JBサービス株式会社 セキュリティ事業部
DX推進部 AIビジネス推進グループ

 

 

会社の指示で
ITIL資格を取得

 生川友子氏は1996年に転職でJBCC(当時、日本ビジネスコンピューター)に入社している。前職でcc:MailやMS Office製品(Excelなど)のトレーナーを務めていたこともあるため、JBCC入社後はノーツやMS Office製品などの外部向けトレーナーやセミナー講師の担当となった。

 その後、1999年〜2000年と2003年〜2004年に出産・育児休暇(各1年)を取得し、復職後、2004年に運用センターSMACへと異動、ノーツなどのヘルプデスクサービス部門の配属となった。

 その生川氏が「ITILエバンジェリスト」への道を歩み始めるのは、2006年にITIL V2ファンデーションの資格を取得してからのことである。

「ITILを受験したのは、SMACのサービス基盤の強化を目的にITILに精通した人材を育成しようという会社方針の下に、資格の取得を指示されたからです。私は一緒に受験した数名のうちの1人でした」(生川氏)

 しかし、きっかけはともあれ、生川氏はそれからITサービスに関わるさまざまな仕事に従事していき、その過程で時どきの仕事に必要な、あるいは必要になると思われるITサービスマネジメント関連の資格を取得し、エキスパートとしてのキャリアを積んでいくのである。

 

ISO20000取得プロジェクトで
ITIL資格を活かす経験

 

 なかでも「大きな節目でした」と振り返るのは、転籍したJBサービスで立ち上げられたISO20000(ITサービスマネジメント認証基準)取得プロジェクト(2008〜2009年)への参加である。そこで、SMACでの業務経験や2007年と2008年に取得したITIL V3ファンデーションとISO20000内部監査員資格の知見を活かせるという経験をした。

「ITILは、ITサービスマネジメントの実践で得られたベストプラクティスを集約し体系化したものなので、それに倣えば大きな失敗をしなくて済むというメリットがあります。また、ITILへの準拠によって運用メンバーが同一の定義で会話でき同じアクションを取ることができるので、ITサービスの品質を担保できるメリットもあります。

 運用センターではお客様とのやり取りが日常的に発生しその記録が必要ですが、ITILへの準拠によって正確な記録が可能になり、報告書なども正しく作成できるのです。

 ただし、お客様とのやり取りをITILに基づき記録するのは、そう簡単なことではありません。しかし、それらの記録を集めればビッグデータの材料ともなり、その解析で得られるナレッジを業務改革や経営戦略につなげていくことも可能です。ITILを導入する意義は、単に運用プロセスの標準化にとどまらず経営面でも非常に大きく、その必要性をISO20000プロジェクトで実感しました」と、生川氏は述べる。

 

ITILエバンジェリストとしての
使命を自覚、社内外で啓蒙活動

 

 2012年にITサービスのデリバリーを担当するサービス事業部へ異動し、顧客企業のITILベースの仕組み作りやITILに関する社内・社外向けの啓蒙活動に従事することになった。

 社内向けの活動については、「当時も今も、ITILを自ら実践することにアレルギーをもつ人が残念ながらいます。しかし、社内でITILを徹底しなければ業務の品質向上は望めないばかりか、お客様にITILをご提案することもできません。社内のITILリテラシーは年々着実に上がってきていますが、ITILの普及・啓蒙はその当時から私のミッションと思い、活動を続けてきています」と話す。

 また、顧客向けの活動もさまざま行ってきた。大手自動車メーカーのアプリケーション保守のための仕組み作りでは、ITILベースのインシデント管理・問題管理・変更管理のプロセスを整備した経験もある。

 2016年にJBサービスがプライバシーマーク(Pマーク)を取得することになり、そのプロジェクトリーダーに抜擢された。このときは、ITILとISO20000の知見を活かすことができ、1年という短期間で取得を実現した。しかも審査時の外部審査での指摘事項はゼロだったという。資格取得の支援を仰いだ外部コンサルタントからは、「10年以上いろんな会社のPマーク取得を支援してきたが、このような評価は聞いたことがない」との感想が寄せられた。

 

仕事をアサインされるのは
会社・上司が期待しているから

 

 生川氏は現在、自他ともに認める「ITILエバンジェリスト」として活動を続けている。

 生川氏の歩みを図表にまとめた。そのなかから取得した資格を抜粋すると、次のようになる。

 

・2008年 ISO20000内部監査員
・2012年 ITILエキスパート
・2012年 ISO9000内部監査員
・2013年 TIPAリードアセッサ資格
・2019年 ITIL 4ファンデーション

 

 これを見ると、時どきの仕事に沿って資格を取得しキャリアを積んできたことがわかる。生川氏は、「資格を取得したいと思って始めたわけではなく、自分がやるべきことを考え、キャリアを重ねていくなかで、仕事での必要性や会社から求められて挑戦したものも多くあります」と話す。

 そう述べる生川氏は、自身の経歴を振り返り、また部下をもったことのある経験から、キャリアについて次のような考えを抱いているという。

「ある人に会社や上司が仕事をあてがうのは、その人ならできるだろう、この人はこれが得意だから、あの経験があるからこなせるだろうという見込みや期待があるからです。私自身はこれまで、割り振られた仕事の要請に応えようと取り組んできただけですが、その1つ1つの成果や経験が次につながり、それらの積み重ねで現在があると痛感しています。自分のキャリアをどう築くかという選択肢はその人のなかにしかありませんが、仕事上のチャンスは外から与えられることが大半で、それを活かすかどうかは本人の考え方と努力次第だと考えています」

 

女性を戦力とするための
企業風土・仕組みの必要性

 

 生川氏はJBCCへの入社後、2度の出産を経験し、主婦として、また母親としての役割もこなしつつ仕事を続けてきた。

 JBグループに「女性が働き続けることを支援する充実した制度と、個人の状況に応じた働き方を可能にするテレワークなどの仕組みがある」ことを、仕事を続けてこられた大きな理由として生川氏は挙げる。また社会的には、「病児保育を提供する施設の整備・拡充が働く女性を増やし支援するためにも不可欠」と、自身の経験から話す。

 その一方、子供をもつ女性を企業の十分な戦力として捉える考え方や風土の重要性も指摘する。

「これは私自身の経験でもありますが、ある仕事をアサインされたときに、“子供がいるからこの部分の担当は無理でしょう”と決めつけられて、納得できない複雑な気持ちを抱いたことがありました。子供をもち仕事を続ける女性の多くは、ほかの社員と同様に、会社や部門、同僚、お客様への貢献を望んでいます。だから、“子供をもつ女性だから”というフィルターは仕事上ではまったく不要で、一般の社員と同じように、ごくふつうに話を振ってみて欲しい。そのときに、仕事を依頼された女性が“大丈夫です、担当できます”と答えたら、そこは信頼して任せるような企業風土が重要で、社会全体がそうなって欲しいと思います」

 生川氏は2019年末にITIL 4ファンデーションの資格を取得し、今年1月にDX推進部へと異動した。約8年ぶりの運用サービスの現場への復帰である。

「ITサービスに長く携わっていると、世の中で進むDXにはITILが不可欠で、必須であることが見えてきます。私がDX推進部へ異動となったのも会社がそのような認識をもっているからで、今後ますますDXのためのITILが必要性になるでしょう。SMACにおいてITILをさらに浸透させるのが私の役割だと自覚しています」

 生川氏は今、国家資格の「ITサービスマネージャ」の資格取得を目指して準備を進めている。「ITサービスマネジメントには終わりがありません。これからも、環境の変化に応じて社会や会社が求めるスキルを身に付け、また新しいことにチャレンジしていきたいと思います」と、生川氏は話す。

 

 

[IS magazine No.27(2020年5月)掲載]

 


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