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事例|株式会社山形丸魚 ~水産物と一般加工食品をカバーする新物流システムを構築、拡大を目指す倉庫事業対応の機能も搭載

山形丸魚では、この4月に新物流システムをサービスインさせた。同社としては初めて自社開発したシステムで、水産物と一般加工食品それぞれの物流機能をもたせたのに加えて、拡大を目指す倉庫事業対応の機能も搭載した。

 

 

2000年以降、IBM i上で
基幹システムを運用

 山形丸魚は、太平洋戦争中の1942(昭和17)年に発足した「山形県海産物配給統制組合」に端を発している。山形県民への海産物の配給を司る団体だったが、戦後解散になると一部の関係者が集まって「山形県海産物荷受販売組合」を設立し、水産物の卸売業を開始した。これが山形丸魚の前身で、1953(昭和28)年に現在の社名に改称している。

 この創業の経緯と社名からうかがえるように、当初は水産物を中心に事業を拡大してきたが、1994年に加工食品卸トップの菱食(現・三菱食品)と業務提携して以来、一般加工食品分野の扱いを大きく広げ、現在は水産物と一般加工食品の両方を扱う総合食品卸企業に成長している。

 2002年には、天童市の約4万㎡という広大な敷地に本社新社屋を建設して移転し、その新社屋の横に約1万5000m2の広さをもつ本社物流センターも同時にオープンさせた。この物流センターは、マイナス50度での保管も可能な冷凍庫や、低温度物流センター、食品物流センターなど最新鋭の設備を備える。

 近年は、この高機能の物流施設を活用して、他社の商品の保管を請け負う倉庫業に進出し、取扱量を拡大させてきた。本稿では、同社がこの4月にサービスインさせた「新物流システム」を紹介するが、それはこの事業にも深く関わっている。

 

 同社では、西暦2000年問題への対応を機に富士通メインフレームからIBM iへ移行し(1998年)、それ以降、現在まで4回の切り替えを行いながらIBM iを基幹サーバーとして利用してきた。IBM iには現在、販売管理や財務会計などの基幹システムが搭載されている。

 物流システムに関しては、提携先のシステムの一部を遠隔利用してきた。山形丸魚の社内に作業用の端末を置き、システムにアクセスして利用する形態である。

「しかし提携先のシステムは一般加工食品向けの物流システムであり、水産物向けの機能をもっていなかったので、その部分を当社用に開発してもらい利用していました。物流システムに関しては、従来から外部のシステムを利用し、社内では開発を行ってきませんでした」と話すのは、管理本部システム課で基幹システムを担当する菊地拓係長である。

 

 

 そうした経緯をもつ同社が物流システムの自社開発に乗り出したのは、提携先が次世代システムへ移行するにあたって、それに対応する水産物向け追加機能の開発が困難になったからである。そこで同社では、水産物と一般加工食品の両方の物流機能をカバーする総合的な物流システムの開発に踏み切った。

「当初は、パッケージも検討しましたが、生鮮の水産物は商品ごとに重さが決まる“不定貫商品”で、個数と重量の関係が決まっている“定貫”の一般加工食品とは異なり、かなりのカスタマイズが必要になると考え、自社開発を選択しました」(菊地氏)

 また、それに加えて、拡大を目指す倉庫事業への対応が同時に必要であったことも、自社開発を進める理由であった。

「倉庫事業用の管理機能については簡易的なシステムで対応していましたが、本格的な在庫管理を行うには不十分でした。新物流システムでは、お客様ごとにきめ細かな管理が行える、拡張性に富む仕組みを導入しました」と、菊地氏は説明する。

 2014年10月に要件定義をスタートさせ、2015年4月から詳細設計、10月からRPGを用いた開発を進め、この4月にサービスインした。菊地氏は「物流システムは初めての経験だったので、“物流システムとは何か”から勉強し、提携先のシステムの機能も参考にして開発しました」と振り返る。

 同社では現在、「もっと庄内浜!」をキャッチフレーズに庄内浜産の水産物の拡売に取り組んでいる。これには山形県外の小売店への戦略的な出荷も目標に含まれている。「その際の機動的な物流に、新システムは貢献できるのではないかと考えています」と菊地氏は語る。

 

ユーザーの状況を踏まえながら
セキュリティ対策を進める

 同社ではこの4月に、エンドユーザーが使用するPC40台の入れ替えを行った。マシンの老朽化に伴う定期的な作業だが、「2年前にActive Directoryを導入していたので作業がかなり楽でした」と、管理本部システム課で情報系やネットワークを担当する渡部佐和係長は話す。

 

渡部 佐和氏 管理本部 システム課係長(職位は取材当時)

 

「以前は、1台ずつデータを吸い上げて新しいPCに移していたので、大変な労力がかかっていました。Active Directoryによってその作業が不要になり、効率化が図られています」(渡部氏)

 最近、PC周りのセキュリティポリシーを見直し始めている。

「PCを全社に導入した当初は、有効に使ってもらうことが優先事項だったので、セキュリティや利用制限を最小限に抑えていました。しかし、システムの利用が全業務に広がり、セキュリティの事故や違反が重大な事態に発展する怖れがあるので、セキュリティ対策を強化しています」(渡部氏)

 PCへのソフトのインストールを禁止する制限やインターネット利用時のログの取得、ユーザーホルダーのデータ量の制限などだが、「制限し過ぎると使いづらくなるので、その見極めが肝心と思っています」と渡部氏。

 同社ではシステム化の推進を、システム部門からのボトムアップで行う体制としている。Active Directoryの導入やセキュリティ対策なども、システム部門からの起案で始まっている。

「そのためにも、自社の業務内容を深く理解し、エンドユーザーの意向や要望を広く汲み取っていく機能がシステム部門に求められています。ITが業務と密接に関わり、経営や業務に大きな影響を与えるようになっている現在、システム部門の役割は小さくないと考えています」と渡部氏は述べる。

 

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Company Profile

株式会社山形丸魚

本社:山形県天童市
創業:1942年
設立:1953年
資本金:1億円
売上高:246億円(2016年3月)
従業員数:230名(2016年3月)
事業内容:生鮮水産物および加工品、一般加工食品、飲料、瓶缶詰、調味料などの卸
http://www.maruuo.co.jp/

[i Magazine 2016 Summer(2016年5月)掲載]

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