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事例|株式会社北陸銀行 ~初めての資産運用をAIがアドバイス「投資ロボアドバイザー はてな君」

投資初体験の顧客に向けた
ロボアドバイザー

 金融とITを組み合わせたFinTech系サービスが急成長している。そのなかでも昨今注目を集めているのが、「ロボアドバイザー」という領域だ。AIが最適な資産運用をアドバイスするソリューションの総称で、米国を中心に国内外でさまざまなサービスが登場している。

 2014年に設立されたスタートアップ企業である株式会社Finatext(フィナテキスト)は日本IBMと協業し、2016年4月から、金融機関に向けたロボアドバイザーエンジンの提供を開始した。その第1号ユーザーが、北陸銀行の「投資ロボアドバイザーはてなくん」である。

 北陸銀行は、1877(明治10)年に設立された金沢第十二国立銀行を母体に、加賀藩祖「前田利家」ゆかりの銀行として創業した。1884年、本店を現在の富山市に移し、以後国内に例を見ない広域地銀として成長してきた。2004年には北海道銀行と経営統合し、株式会社ほくほくフィナンシャルグループの一員となっている。

 同行のロボアドバイザーが運用を開始したのは、2017年7月のことである。 昨年までロボアドバイザーは、同行の総合企画部が担当していた。しかし2017年7月、個人向けのインターネットバンキングを担当するリテール推進部と、法人向けのインターネットバンキングを担当する金融サービス部、そして総合企画部の人員の一部を統合し、新たにIT企画部が発足した。

 AIプロジェクトを主軸にしたFinTechの企画・導入・運用を専門とする同部が現在、ロボアドバイザーの主管部署となっている。同行にとっても、外部に向けて提供するAIサービスは、これが初めての試みである。

 担当したIT企画部の木下秀行部長代理によれば、ロボアドバイザーの検討がスタートしたのは2016年6月、日本IBMとFinatextから提案を受けたのがきっかけであった。

「銀行として、お客様にどのようなAIサービスを提供できるのかを模索するなか、今まで投資したご経験のないお客様に対して、投資に興味をもっていただくためのハードルを下げるサービスとして、ロボアドバイザーは最適なのではないかと考えました」(木下氏) 

木下秀行氏
IT企画部 部長代理

Finatextが提供するロボアドバイザー用のAIエンジンは、完全にブラックボックス化されている。顧客本位の営業活動を旨とする同行では当初、「中身がわからないまま、お客様に責任を果たせるサービスが可能なのか」という懐疑的な意見も出されたという。

「しかし検討を重ねた結果、最終的には店頭などでの営業ツールとして使用しないことを前提に、営業担当者がなかなかお話しする機会を得られないお客様に対して、インターネット上で投資や資産形成に関心を向けていただくよいツールになるのではないかと判断し、採用が決まりました」(木下氏)

FinatextのAIエンジン
日本IBMによる開発

「投資ロボアドバイザー はてなくん」では、スマートデバイスなどを使って、ユーザーが年齢や投資経験、リスクの許容度など簡単な質問に答えると、最適な投資スタイルを選んで表示。さらに、入力した投資金額に応じてポートフォリオを作成し、最適な金融商品を案内する(図表1)。

 商品の購入を決めたら、厳重な認証が必要となるインターネットバンキングのサイトにリンクする。また投資が初めての場合は、必要な情報を表示したうえで、最寄りの支店や電話番号を紹介するなどして、口座の開設へと誘導する。

 インフラとなるのは、日本情報通信が提供する占有型クラウドサービスである「Bluemix Dedicated」。Finatextが提供するロボアドバイザーエンジンとは、APIで接続している。このAIエンジンは、ユーザーからの回答を分析し、7段階のなかから最適な投資スタイルを選択して、ポートフォリオを提案。北陸銀行の金融商品のなかから、過去の実績に基づきスコアリングして、上位の商品から案内していく(図表2)。

 開発がスタートしたのは2017年1月。北陸銀行側は金融商品の情報を準備すると同時に、Finatextが用意した質問の検討や画面デザインのイメージなどを作成し、実際の開発は日本IBMが担当した。3カ月間で開発は終了したが、その後も改良を続け、最終的には2017年7月にサービスインした。以降は順調にアクセス数を拡大しているという。

「今回のサービスは、第1フェーズと位置づけています。今後は購入時の提案だけでなく、アフターフォローとしてのアドバイスといった機能も段階的に提供していきたいと考えています。インターネットバンキングと連携して、実績や残高状況などを参照し、市場の変化に伴うポートフォリオの変更についてアドバイスや情報提供を行うなど、さまざまな拡張が考えられると思います」と、木下氏は語る。

 今のところ個人情報はまったく管理していないが、占有型の「Bluemix Dedicated」を選択したのも、今後の拡張時のセキュリティを考慮したうえでの判断だ。ちなみに現在、個人情報の蓄積はないものの、年齢や投資に対する考え方などの回答情報を分析し、顧客に必要な情報提供のあり方や、より効果的なWeb施策へつなげているという。

 投資という新世界に足を踏み出すために最初の扉を開く役割を、ロボアドバイザーは十分に果たしているようだ。

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COMPANY PROFILE

株式会社北陸銀行

本社:富山県富山市
創業:1877年
設立:1943年
総資産:7兆3293億円
従業員数:2770名
事業内容:ほくほくフィナンシャルグループの一員として、広域地域金融グループのネットワークと総合的な金融サービス機能を提供

http://www.hokugin.co.jp/

 

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