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事例|株式会社京王ITソリューションズ ~これからも「自分たちの手で作る」ことの意味を考え続けたい

情報システム部の分社化以降
アウトソーシングへ移行

i Magazine(以下、i Mag) 最初に会社設立の経緯を教えてください。

後藤 当社は2002年、京王電鉄の情報システム部を分離独立する形で設立した京王電鉄の100%子会社です。2001年から鉄道に敷設した光ファイバーケーブルを用いて電気通信事業を営んでいた(株)京王ネットワークコミュニケーションズと2007年に合併し、京王ITソリューションズ(以下、KIS)に改称しました。現在は京王グループ50社余りを対象に、グループのIT部門としてサービスを提供しています。情報システム部を分離独立して以降、京王電鉄側にはグループのIT戦略を統括する部門が設置され、私はその部門長とKISの取締役社長を兼任する時期もありましたが、現在はKISの職務に専念しています。

後藤 順滋氏
取締役社長

i Mag 京王グループでは今、どのようなプラットフォーム環境でシステムを運用しているのですか。

後藤 主にWindowsサーバーとPower SystemsのIBM iです。電鉄情報システム部時代にはAS/400誕生時から積極的に導入し、RPGによる自社開発でグループ各社の業務システムを展開していました。グループ統一の経理システムもその1つです。しかしアウトソーシング化による生産性の向上とそれに伴うオープン系システムへの移行という流れのなかで、経理システムは2013年にWindows上の海外製ERPソリューションに移行し、経理システムへデータを連携させる各社の周辺システムのみがIBM iに残りました。これらの周辺システムも、そのほとんどがWindowsへの移行を決定しています。

 しかし京王電鉄内の一部の事業部門やいくつかのグループ会社では、今でもIBM i上で独自に開発した基幹となるシステムを運用しています。そこでコスト効率や運用効率の観点から、これらのIBM iを集約することも検討しています。とは言え、技術者を確保し続けることが課題となり、グループ全体で見た場合、IBM iの利用が減少傾向にあるのは間違いありません。

i Mag KISとしては現在、どのような人員体制で業務を進めていますか。

後藤 社員は合計66名です。20代が4名、50代が10名、残る52名は30代・40代がほぼ同数です。30代・40代が多いのは、2002年の分社化に際して、即戦力となる社員を優先して採用した時代の名残です。最近は若手社員を育てるべく、新卒および20代前半の第二新卒といった世代の採用に力を入れています。また京王電鉄のIT管理部に12名。KISには社員以外に、協力会社からのスタッフが30名ほど常駐しており、約100名体制で業務を進めています。

自分たちの手でシステムを作る
その文化は残したい

i Mag 開発は内製が中心ですか。

後藤 当社はグループを対象にしたITベンダーですが、2002年に分社化して以降、社員は上流工程の企画・設計を担当し、実際の開発業務のほとんどを外部に委託するようになりました。社員が何らかの言語を使ってシステムを新規開発することは、今はほとんどありません。それでもIBM i上で経理システムを運用していた時代は、開発の一部を社内で担当していましたが、ERPへ移行してからはそれも減少しています。だから内製かアウトソーシングかと問われれば、完全なアウトソーシング型だと思います。 

i Mag 今、RPGの教育を社内で実施していますか。

後藤 グループ内にはRPGシステムの利用継続を表明している子会社もあるので、RPGでの改修開発は何らかの形で維持する必要はありますが、それはベテラン技術者に任せることになりそうです。若手技術者にRPGを学習させる機会は、残念ながら最近ではありません。当社はITを生業とする会社なので、我々の得意とする言語を積極的に利用していきたい意向はありますが、一般にRPG技術を活かす機会が減っていることもあり、社員のスキルマップからRPGが外されているというのが現実ですね。

i Mag 自分たちの手でシステムを作ることは、もう考えられないですか。

後藤 IBM iは資産継承性や信頼性・安定性に優れたプラットフォームですし、RPGは習得が容易で、開発生産性の高い言語です。そして「社長の決断」という謳い文句は、その当時の中小企業のシステム化推進にベストマッチしていたと考えます。当社は今後の開発についてRPGを選択していませんが、これまで利用してきた全国のユーザー企業が、これからもRPGを使って自分たちの手でシステムを維持していく選択はあり得るし、評価すべきと個人的には考えています。

 かくいう私もシステム/38時代からのRPG開発者であり、RPGを駆使した独自の営業系システムを数多く開発してきました。自分たちの手でシステムを作ることの重要性は、よく認識しているつもりです。現在の業務はアウトソーシングなくしては成り立ちませんが、世の中にあるものを選択する目利き能力だけではなく、かつてRPGで養ったような「自分たちで、どこにもないシステムを開発する」という気概、現代で言うイノベーションを起こす気構えを育てていきたいと考えています。

i Mag 具体的には。

後藤 京王グループは運輸、流通、不動産、レジャー、サービスの各分野で多種多様な事業を展開しています。グループの規模は大きいですが、それぞれのビジネスは、京王電鉄沿線の住民のみな様によりよいサービスを提供するのが狙いで、ローカル志向、地域密着型です。だから、全国・全世界に展開する大規模なナショナルブランド企業と同じビジネスモデルは必ずしもマッチしません。

 我々独自のビジネスモデル、IT利用モデルを生み出す必要があり、それに成功すれば、同じように地域もしくは地方で展開している企業に向けたITサービスとして提供するチャンスを得られるでしょう。そうした発想力、考える力を養うには、自分たちで開発する力が必要です。その教育の一環として、言語の習得と実際の開発経験を位置づけています。たとえばWebを活用してどのような地域密着型サービスを実現できるかにチャレンジする、とか。自分たちで開発すると言ってもすべて自社開発ではなく、協力会社の力を借りることは必須です。その観点から、技術者の今後の教育カリキュラムや人材育成などを見直していこうと考えています。

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株式会社京王ITソリューションズ

IBM i User Profile

運用歴:システム/38時代から
運用システム:京王電鉄のユーザー部門、グループ会社で各システムを運用
RPGのプログラム本数:測定不能
開発言語:RPG、Javaなど
システム部門人員数:66名
構成
20代 4名
30代 26名
40代 26名
50代 10名

COMPANY PROFILE

本社:東京都多摩市
設立:2001年
資本金:6500万円
売上高:20億円
従業員数:66名(2017年1月)
事業内容: 京王グループに向けたシステムの企画・開発、運用サービス、ユーザー支援など

http://www.keio-is.com/

[i Magazine 2017年 Spring (2017年3月)掲載]

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