本 社:広島県広島市
設立:1959年
資本金: 1400万円
事業内容:工業用洗剤・油剤とこれに類する化学製品および関連機械・装置の製造・販売など
http://www.sevenrivers.co.jp/
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売掛管理と買掛管理を
別系統のシステムで運用
セブンリバーは1989年にシステム/36を導入して以来、約30年にわたって基幹システムの運用を続けている。5?6年のサイクルでハードウェアをリプレースしながら、アプリケーションの改修を重ねてきた。
社内に情報システム部門をもたず、ハードウェアの運用管理からアプリケーションの改修・保守まで、IT関連の作業が発生した場合は、導入当初から田中電機工業がサポートしている。
同じ広島市内に本社があり、何か支障があればすぐに駆け付ける田中電機工業の支援もあり、社内にITの専従スタッフを置かなくとも、これまで運用に支障が生じたことは一度もない。
ただし長い時間を経過したシステムだけに、現在の業務要件との乖離が生じていたことも確かである。また販売管理システムの核となる売掛管理と買掛管理が、それぞれ別系統のシステムとして構築されていたことも、運用・保守面で大きな負荷を生んでいたようだ(図表1)。
売掛管理システムはRPGによって開発されていた。1989年当時はRPG Ⅱで、1996年以降の追加開発ではRPG Ⅲを使用しているが、プログラムの大多数はRPG Ⅱのままである。
一方の買掛管理システムは1990年初頭に、開発ツールである「db Magic V4」(マジックソフトウェア)を使って構築された。MS-DOS上で開発されたあと、Windowsへ移植し、Magic uniPaaSへバージョンアップしていたが、設計思想はDOS時代のままである。
売掛管理は5250画面、買掛管理はGUI画面とそれぞれに操作環境が異なる。どちらもDb2 for iを使用しているが、個々に独立したデータベースとして機能し、マスタも別々である。そのため製品コード変換ファイルを使って、両者の連携を維持せねばならない。
つまり販売管理システムは、操作画面も、マスタも、開発言語も、開発ベンダーも異なる2系統のシステムで構成されていたために、システムの二重保守、機能の重複、業務連携の欠如など、さまざまな課題が顕在化していたのである。
モダナイゼーションを軸に
2つのシステムを統合する
そこで田中電機工業では現場部門のユーザーにヒアリングを重ね、次期マシンリプレースのタイミングに合わせて、販売管理システムのモダナイゼーションを提案した(図表2)。
その内容は、「売掛・買掛管理システムの統合」「ITモダナイゼーション」「課題解決によるシステム機能の拡張」の3つを柱にしている。現行システムをすべて捨てて全面再構築するのではなく、既存資産を最大限に活かしながら刷新し、さまざまな課題解決を目指そうというわけだ。
たとえば売掛管理は既存資産をベースに、買掛管理は新規に、ILE RPGで業務ロジックを開発する。データベースは既存を前提に拡張し、マスタはコンバージョンして一部を残しつつ、整理・追加・統合する。
またフロントエンド側は「Magic xpa Application Platform」(以下、Magic xpa。マジックソフトウェア)により、リッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)として、Windowsライクな操作画面を実現する。
このRIAサーバーからは各PCへプログラムを自動配布するので、今までのクライアント/サーバーと違って、各PCへのプログラム配布作業は不要になる。
ちなみにMagic xpaを採用したのは、開発生産性の高さに加え、従来からのライセンスを利用できるため、構築コストを低減できると考えたからだ。こうして既存の資産を最大限に活かしつつ、売掛管理と買掛管理を統合してシステム刷新を実現するのが、この提案の狙いである。
さらにエンドユーザーへのヒアリングで寄せられたさまざまな業務課題には、システム改修で対応する。これには入力処理業務の改善、出荷場所との連携強化、在庫管理の精度向上、先行管理による段取り・手配の最適化、得意先名や品名コード・品名の桁数拡張、単価設定機能の見直しなどが挙げられる。
このほかBIツールにより、各部門で基幹データを自由に加工・分析することも提案された。今までは基幹データをExcelに出力して、管理帳票類を作成していたが、今回のシステム刷新を機に、BIツールとして「REPORT EYE」(イグアス)を導入。ブラウザ画面で基幹データをリアルタイムに検索・照会し、Excelへも簡単に出力できる環境を整備することで、管理帳票の統廃合などの業務改革を進める。
さらにMagic xpaのオプション製品であるプリンティングツール「ReportMagic」を利用して、ドットプリンタからレーザープリンタへの移行を図る。これにより請求書や納品書をカット紙で印刷し、コスト削減に役立てる(ただし運送会社への送り状は従来どおり、ドットプリンタで印刷する)。
さまざまな場面で
業務改善効果を確認
田中電機工業から上記の刷新計画が提案されたのは2016年夏。同年9月に正式決定し、10月にプロジェクトがキックオフした。1年の開発期間を経て、新たに導入したPower Systems S814上で新システムが本稼働したのは2017年10月である。
同社側では、営業部 本社営業課の土井聡課長(プロジェクト当時は管理部に在籍)が窓口となり、田中電機工業との折衝や進捗管理を担当した。
このシステム刷新により、画面の統一やマスタ統合、BIツールによる有効なデータ活用、プリンタのオープン化などが実現し、旧システムと比べると全体に画面が明るく、見やすく、操作も簡単になったとユーザーに好評である。もちろんさまざまな場面で、業務の効率化も実現している。
たとえば、得意先に商品が届いているが、使用分のみを売上に計上する「預け在庫」や、得意先に売上を計上しているが、自社に商品を保管している「預かり在庫」など、在庫場所と売上計上をリアルタイムに反映した処理が可能になり、在庫管理の精度が大きく向上した。
また出荷場所との連携強化という観点では、事務所と出荷倉庫、研究室の間で出荷時に添付する書類の有無(たとえば研究室が作成する試験成績表など)が出荷表に明記されるようになり(今までこうしたやり取りは電話で行われていた)、部署間の連携がスムーズに進むようになった。
さらにREPORT EYEを使用したデータ活用もレベルアップしている(図表3)。
「今まで以上にデータ検索や集計作業が使いやすくなりました。たとえば1社の取引先が多店舗で展開している場合は、得意先マスタに機能追加されたグループコードによる集計が可能です。売上は本社に1本化して参照しつつ、各店舗での売上を簡単にドリルダウンできます」と語るのは、管理部の角屋直江部長である。
ちなみにREPORT EYEによる定義作成は、当初は田中電機工業が担当していたが、現在は土井氏が自ら担当し、各部門から寄せられる数々の依頼に対応している。
2018年初頭には、追加開発として、今までExcelで作成していた見積もりを販売管理システム上で作成する機能なども追加された。
「パッケージ製品にしろ、スクラッチ開発にしろ、コストやそれに伴うリスクを考えると、全面的なシステム再構築には踏み切れませんでした。しかし当社の業務やシステム運用を熟知する田中電機工業の提案は、過去の資産を最大限に活かしたうえでのシステム刷新だったので、納得して前に進むことができました」と語るのは、堀口剛代表取締役である。
これから積極的にITを活用していく環境を整備するうえでも、今回のIBM iモダナイゼーションは大きな意味があったようだ。
[i Magazine 2019 Autumn掲載]