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ロングテール化したIBM i市場で モダナイゼーションとロボティクスを推進|有川 伸行氏◎三和コムテック

 

有川 伸行氏

三和コムテック株式会社
代表取締役社長

海外の優れた製品をいち早く日本へ導入し、市場創出型のビジネスを展開してきた三和コムテック。その代表取締役社長に有川伸行氏が就任した。柿澤晋一郎 前社長(現・会長)のもとでIBM i事業とセキュリティ事業の両軸を成長させてきた同氏に、社長就任の抱負とビジネスについて伺った。

 

堅調なIBM iビジネス
Webセキュリティ関連は急成長中

i Magazine(以下、i Mag) ビジネスの状況はいかがですか。

有川 当社には、IBM iユーザー向けの製品を扱う「クラウド&サーバー事業部」とセキュリティ関連の製品・サービスを提供する「SCT SECURE事業部」の2つの事業部があります。この2つの事業部の売上比率は6対4でIBM i関連のほうが上回っていますが、最近急速にセキュリティ関連のサービスが伸びています。堅調なIBM iビジネスを維持しつつ、セキュリティ事業を飛躍させるのが当面の課題です。

i Mag IBM i市場についてどう見ていますか。

有川 米国のCOMMONに参加して情報を収集したり、製品の開発元と情報交換を重ねていますが、海外では「IBM iはロングテール・ビジネスになった」という見解が大勢のようです。オープンへ移行するユーザーは移行し終わって、今残っているユーザーは当面、IBM iにとどまるだろうという見方です。

i Mag それは日本市場にも当てはまりますか。

有川 去年から今年にかけて、金融機関の多くのお客様からIBM i製品の追加オーダーやリプレースのオーダーをいただきました。そうした大規模なユーザーの動きを見ると、日本もロングテール市場へ移行したのかなと思います。ただし、日本では何かブームでも起きると一気に別の方向へ行ってしまう可能性もありますから、予断は許しません。

 

自由な風土、儲かる仕組みなど
7項目の経営方針

i Mag 4月に社長に就任されて、社員へ何かメッセージを出されましたか。

有川 就任直後に、7項目からなる経営方針を発表しました。ご紹介すると、

・ 現行カルチャーのよいところをさらに伸ばす
・ 儲かる仕組みを新たに作る
・ 社員のやる気を上げて、会社としての総合力を高める
・ 自由な発想、面白いことができる風土を醸成する
・ ブランド力の向上、マーケティングの強化
・ 生産性と品質の向上
・ 人材育成・教育機会の拡大

という7項目です。

i Mag 最初の「現行カルチャーのよいところをさらに伸ばす」に込めた思いは何ですか。

有川 当社は伝統的に市場創出型のビジネスを志向してきた会社です。競合がひしめく既存市場ではなく、市場がまだない真っ白なところへ出て行き、市場を創りながら成長していくのが得意です。その自由な発想と新しいことにチャレンジする精神こそ当社の強みであり、カルチャーです。それを今後も伸ばしていこう、というメッセージです。

i Mag それは4つ目の「自由な発想、面白いことができる風土を醸成する」にも通じることですね。

有川 そうです。言葉は適切ではないかもしれませんが、ノリよく、面白いことにとことん打ち込める風土を作っていきたいのです。たとえば、1つのことを追求して会社ができるくらいに成長したら、別会社として独立させてもいいではないかと考えています。シリコンバレーのような起業精神にあふれた風土です。それが目標です。

i Mag では、2つ目の「儲かる仕組みを新たに作る」とは。

有川 当社は社員32名という少数精鋭の会社ですから、営業が足で稼ぐビジネスモデルではなく、儲かる仕組みを作り、それを回してビジネスにするモデルが不可欠です。MIMIXはその「儲かる仕組み」で成長した製品で、HAだから2台のIBM iが必要になり大きなビジネスになるので、IBMもパートナーも積極的に動いてくれました。そうした儲かる仕組みが新たに必要だということです。

i Mag 3つ目の「社員のやる気を上げて、会社としての総合力を高める」はどのようなことですか。

有川 当社では去年、成果主義の人事制度へ移行しました。ただし、まだはっきりと固まったわけではなく、仕事上のパフォーマンスと報酬と社員個人の満足度をどのようにバランスさせれば最適になるか、いろいろと模索しています。それと働き方改革も進行中で、テレワーク(在宅勤務)やフレックス制を7月から試験的にスタートさせました。半年間様子を見て、来年1月から本格的に実施する予定です。社員のやる気が上がることであれば会社として何にでもチャレンジする、というメッセージを掲げています。

i Mag 5つ目の「ブランド力の向上、マーケティングの強化」はどのような狙いですか。

有川 当社はIBM iの世界ではそこそこ知られていますが、それでもMIMIXやiSecurityのイメージが強く、モダナイゼーション製品をご存じの方はそれほど多くありません。セキュリティ診断サービスについても同様です。先ほど少数精鋭と言いましたが、少人数の会社だからこそブランド力やマーケティング力が重要で、今年はさまざまな場所にたくさん露出して、情報発信も活発に行い、より多くのお客様に認知していただける活動を展開していきます。

i Mag 6つ目の「生産性と品質の向上」は何を目指していますか。

有川 少人数の会社にとってミスやトラブルは、その対応に少なくない工数を取られるので痛手です。だから、それを減らしてゼロにする努力を続けよう、というメッセージです。たとえば、設定ミスは経験と勘に頼った結果起きるのが大半ですから、それを避けるために導入手順書などをきちんと整備する。お客様が間違った操作をしてしまうのは日本語マニュアルの不備が原因のこともありますから、マニュアルの完成度を上げる。お客様でエラーが発生したら迅速に対応できるよう業務の精度を高める――。3年前に品質向上委員会を立ち上げましたが、取り組むべきことはまだいろいろあると考えています。

i Mag では、最後の「人材育成・教育機会の拡大」は。

有川 少数精鋭の会社では何といっても人が財産ですから、人材の育成や教育に、これまで以上に積極的に投資するというメッセージです。社員のやる気、バイタリティ、インスピレーションを引き出すような育成・教育に力を入れていきます。

 

Arcad、ProfoundUI、
MIMIX SHARE、AutoMateの4製品が重点ツール

i Mag 製品・ビジネスについてはどのような計画ですか。

有川 IBM i分野では依然としてMIMIXとiSecurityが最大のボリュームですが、現在はモダナイゼーション・ツールのArcadファミリーに力を入れています。Arcadは最近、Arcad OBSERVERとArcad Transformer RPGの2つのモジュールがIBM iのOSプログラムに組み込まれました。この2つのモジュールがIBM iにバンドルされているので、ユーザーはライセンスキーによる解除ですぐに利用できます。価格も非常に安く設定されています。

i Mag Arcadを日本に紹介し普及の努力を続けてきた三和コムテックとしては、ハッピーなことですか。

有川 IBMがモダナイゼーションの旗を振る意味は非常に大きいと思います。それによってRPG ⅣやフリーフォームRPGへの移行が進みます。実際、今年になって、Arcadに関するお問い合せや引き合いが増えました。当社もその波に乗っていきたいですね。

i Mag ほかの製品はいかがですか。

有川 昨年リリースしたProfoundUIも重点ツールの1つです。IBM iのWebインターフェースを部品のドラッグ&ドロップで作成でき、フリーフォームRPGを生成するツールです。IBM iのモダナイゼーションを実現する製品として、Arcadと一緒に推進しています。

また、マルチ・プラットフォームとマルチ・データベースに対応するデータベース・レプリケーション・ツールのMIMIX SHAREにも注力しています。IBM i同士だけでなく、LinuxやWindowsなど異なるプラットフォーム間でもレプリケーションできるのが特徴で、たとえば、IBM i上で販売管理システムを運用していて、新たにLinuxベースでWeb販売の仕組みを作り、リアルタイムで在庫の引き当てをしたいといったときに、両方のデータベースを簡単に同期できます。最近多いのは、オンプレミスのDB2 for iとクラウド上のDB2の間のレプリケーションです。

それと今、一番に推しているのがAutoMateです。

i Mag それはどういう製品ですか。

有川 定型的な繰り返し作業を自動化するツールで、「毎朝9時に通貨情報をデータベースに取り込む」というような定常的な作業を簡単な設定で自動化できます。これは「RPA」(Robotic Process Automation=ロボットによる業務の自動化)と呼ばれる分野の製品ですが、作業の効率化、人的リソースの有効活用、働き方改革という世の中のトレンドのなかで大きく伸びていくだろうと見ています。

i Mag モダナイゼーションとロボティクスが、今年のテーマと言えますね。

有川 どちらも、これからの市場です。当社が得意とする自由な発想とチャレンジ精神で、新しい市場を創っていきたいと考えています。

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有川伸行氏 プロフィール

1957年、鹿児島県生まれ。中央大学卒業後、銀行系SI会社に入社。2000年、ASPサービス会社を設立し役員を兼任。2002年、アイトレンドを設立。代表取締役社長に就任。2006年、親会社の三和コムテックの取締役常務、2013年取締役専務、2017年4月より現職。三和コムテックに入社後は、販売網の整備、ビジネスパートナーの開拓、マーケティング戦略策定・推進、営業体制の強化、中期経営計画・事業計画の策定などを担当してきた。

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COMPANY PROFILE

三和コムテック株式会社

本  社:東京都港区
設  立:1991年
資本金:7060万円
従業員数:34名(2017年4月)
事業内容:ソフトウェアパッケージの開発・輸入・販売およびサポート、ソフトウェア、ネットワーク導入コンサルティング、ソフトウェア開発、クラウドサービスの販売
https://www.sct.co.jp/ 

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i Magazine 2017 Autumn(8月)掲載

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