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Z世代のIBM i担当者たち ~第4回 諸先輩に残しておいてほしいもの 古いソースへの注釈、トラブル対応マニュアルほか

 

第4回は、大阪のユーザー2社と日本IBMからIBM i担当者にお集まりいただいた。先人と先輩たちが築いてきたIBM i資産を継承し、守り、成長させようという意思が、3者3様に語られた。

出席者(写真左から)

今尾 友樹氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス

小林 遥香氏
株式会社OSPホールディングス
ITソリューション戦略本部
ITシステム開発部
ITシステム開発第2課 主事

藤川 航大氏
芦森工業株式会社
情報システム部

 

実際に触ってみると
IBM iの印象はガラッと変わる

i Magazine(以下、i Mag) 最初に自己紹介をお願いします。

今尾 私は昨年(2023)4月に日本IBMに入社し、IBM Powerテクニカルセールスに配属されました。3カ月間の新入社員研修をへて、テクニカルセールスとしてお客様を担当させていただいています。IBM iのほかにLinuxも勉強中です。新入社員研修ではIBMの製品・技術全般について学びましたが、昨年7月から部内の定期的な勉強会に参加して、Powerについて勉強しています。またそれとは別にIBM i、AIX、Linuxに関してはそれぞれを専門とする先輩から継続的に特訓を受けています。

小林 私は2013年の入社で、システム部門に配属されてから4年間は社内業務を学ぶかたわら、サポート業務に従事していました。そして4年後に外部研修会社のRPG Ⅲコースを受講し、その後はRPG Ⅲによる開発、保守、運用を担当してきました。この3年ほどはIBM i上のデータをAPI連携で活用する外部システムの設計・開発を行っています。

藤川 私の入社は2019年で、今年で入社6年目になります。新入社員研修の後に情報システム部門に配属され、現在は機能製品事業本部の基幹システムの開発・運用・保守を担当しています。IBM iに関してはシステム部門への配属後に「学習プログラム」(EOL)をテキストにして自習をし、わからないところはネットで調べたり先輩方に尋ねるという方法で学習してきました。最初の頃はRPG Ⅲを覚えるために、ひたすらプログラムを書く毎日でした。

i Mag IBM iとRPGに触れた最初の印象はどうでしたか。

藤川 私は情報系の学部出身で、大学ではCによるプログラミングを勉強しました。その経験があるので、最初はRPG Ⅲの考え方や操作法に少々戸惑いました。しかしRPG Ⅲを使っていくうちに慣れてきて、そのうちに抵抗感はなくなりました。今はむしろ非常に使いやすいという印象です。

藤川 航大氏

小林 私は入社時の志望は印刷機械のオペレータだったのですが、システムを作る部署へ配属されて、何も知らないところからスタートしました。システムの仕組みもプログラミングも一から覚えるという感じで、最初に黒画面に文字と数字が並ぶ5250画面を見たときは、これを使って仕事ができるだろうかとすごく戸惑ったことを覚えています。でも実際に触ってみると、わかりやすくて覚えやすく使いやすいので、印象がガラッと変わりましたね。

i Mag 藤川さんと小林さんは戸惑うような印象が最初にあって、その後一変するという経験をしているのですね。

今尾 私のほうはAIXとLinuxを学習した後にIBM iの勉強を始めたので、ちょっとしたカルチャーショックでした。ただ私もそのうちに慣れてきて、IBM iというユニークなプラットフォーム上でさまざまなお客様が多種多様なシステムを構築して運用中であることに驚きというか、奥の深い世界を見るような気持ちに変わりました。今は、強固な独自性を堅持しつつオープンであるという類まれな特徴をもつプラットフォームだとIBM iを認識しています。

今尾 友樹氏

i Mag 小林さんはIBM i上のデータを活用するデータ連携システムを開発しているとのことですが、仕事内容をもう少しお話いただけますか。

小林 私が担当しているのは社内改善活動の一環で、さまざまな業務で手作業がまだ多く残っているので、それを減らして効率化したり高度化することが大きなテーマになっています。担当した仕事の成果の1つとして、API-Bridgeを利用してIBM iのデータをAPI公開することで、各種ツールとの柔軟なデータ連携が取れるようになりました。 

また最近、ビジュアル表現できるローコードツールのFileMakerやBIツールのMotionBoard、チャットボットとIBM iとの連携システムの開発を担当しましたが、IBM iデータの活用の幅をさらに広げることができました。

藤川 業務の現場で手作業が多いというのは、私の会社も同じですね。私は今は生産管理システムの開発と運用・保守をメインに担当していますが、基本的なテーマは業務改善で、業務効率化と生産性向上が目標です。そのなかでも手動で行っている業務をシステム化して自動化できないかという相談を受けることが多く、相談を受けたら現場へ出向き、ヒアリングや話し合いをして、改善できる部分が見つかったら要件定義をして開発へと進んでいます。

ネット上にはIBM iの情報が少ない
それに加えて・・・

i Mag 仕事の中で技術的にわからないことがあったときは、どうしているのですか。

今尾 私はテクニカルセールスになって1年ほどなので、先輩方のほうから気づいた点をアドバイスしてくれています。それも技術的なことだけでなく、プレゼンのまとめ方やお客様との会話の仕方までいろいろです。また私のほうでわからないことがあったらまずは社内リソースで調べて、それでも解決しないときはSlackを使って諸先輩方に尋ねるようにしています。みなさんすぐに回答やアドバイスを返してくれるので、ほんとうに助かっています。

藤川 私の場合はわからないことがあったらネットで徹底的に調べるのと、プログラム関係であれば似たような動きをするプログラムが社内リソースのどこかにあるので、コードを読んで解決策を探るようにしています。それでもわからないときは、先輩や上司に尋ねて教えてもらうことにしています。

小林 私も同じですね。わからないことがあると調べる癖があるのでネットでまず調べ、解決しないときは先輩方に助けを求めています。ただしIBM i関連の情報は他の技術情報と比べるとネット上に多くないので、先輩方にサポートしていただくことが多くなっています。

それとIBM様のサイトにはIBM i関連の情報が膨大にあるのですが、いろいろなセクションに分散しているので、チャットボットなどで調べられたら便利だろうなと思うことがありますね。

小林 遥香氏

今尾 IBM iのページでチャットボットの用意はないですね、残念ながら。

藤川 IBM iに関してネットを検索するとIBMサイトに行きつくことが圧倒的に多いのですが、そこに掲載されている文章をもう少し柔らかくわかりやすくしていただけるとありがたいなと思うことがありますね。読み解くのに苦労することがよくあります。

今尾 そこはIBM社員の私も困っている点で、すっと理解できる日本語の文章が少ないですね。たとえば、マニュアルに関しては英語サイトの情報を機械翻訳しているので読みづらいところがあるかもしれません。技術的な内容をわかりやすくお伝えするという点では課題があると認識しています。

システム資産を継承していくために
諸先輩に残しておいてほしいもの

i Mag みなさんは会社の諸先輩方が築いてきたものを引き継いでいくお立場ですが、IBM iに関して諸先輩方に残しておいてもらいたいものは何ですか。

小林 私の会社では、私が入社する以前から動いているプログラムがたくさんあります。それらが順調に稼働しているときはいいのですが、万が一トラブルが起きたり改修や拡張が必要になったときは、すばやく対応できることが若い世代の課題だと思っています。

そのことに関して、ソースプログラムのポイントとなる部分に“ここではこの処理を行っている”という注釈があると改修作業やトラブル対応がスムーズにいくのではないかと思うことがよくあります。何が書いてあるのかわからないと一からコードを調べて理解する必要があるので、時間も手間もかかります。そこは先輩方にお願いしたいところですね。

藤川 私が先輩方に残していただきたいと思うのは、一番は仕様書です。弊社でも私が生まれる以前から動いているプログラムがたくさんありますが、そうした古いプログラムは仕様書がないことが多く、ブラックボックス化しています。プログラムを直すときに、あるコードがプログラムのなかでなぜ必要なのかがわからず、コードを読み解くのにかなりの時間を要したことがありました。仕様書があれば改修のポイントをすばやくつかめ、効率よく対処できたのではないかと思います。

それとトラブルが起きたときの対応マニュアルは、ぜひとも残していただきたい1つです。対応マニュアルがあるのとないのでは解決までの時間や作業効率がまったく違ってくると思えます。

今尾 私は技術資料やプレゼン資料を残しておいていただきたいと思っています。過去のお客様案件でどのように解決策をご提示し説明したのかとか、技術的な検証や調査の記録ですね。

i Mag 今後について考えていることや計画はありますか。

藤川 私は入社以来、IBM i関連の仕事をずっとさせていただいてきましたが、これから10年先20年先もIBM iに関わる仕事をしていたいと思っています。また今後は新しい案件を提案したりプロジェクトをリードする存在に成長していきたいと考えています。

小林 私は、IBM iは他のプラットフォームと比べてほんとうに優れていると思っています。ですのでIBM iを基幹システムとして長く使い続けられるように、私の担当であるデータ連携をより幅広く展開して、IBM i をより使いやすくしていきたいと思っています。それと今はRPG Ⅲ中心ですが、私よりも若い技術者がより使いやすくなるようにフリーフォームRPGなどへの対応も進めていきたいと考えています。

今尾 私はテクニカルセールスとしてお客様からの質問に何でも答えられるようになるのと、Powerのエキスパートになるのが当面の目標です。直近では、IBM iの最新情報や製品・技術の便利な使い方についてご存じないお客様も少なくないので、わかりやすく情報発信したり情報をお伝えすることに努めていきたいと思っています。

それと、IBM iに長く関わってこられて深い経験やスキルをお持ちのお客様と同じ目線で会話できるように、企業システムについての理解を深め、エンジニアの方々の気持ちに通じることが目下の大きな目標です。

 

撮影:井上翔也

 

[i Magazine 2024 Autumn 掲載]

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