トライビュー・イノベーションの設立は2012年。IBM iのベンダーとしては、比較的後発である。
SIベンダーとして、業種を問わない全方位のサービスを提供する中で、銀行を中心とした大手金融機関の大規模システムの運用代行や運用設計コンサルティング、PMO支援などの事業にも取り組み、実績を上げている。
対象ユーザーも大手から中堅・中小まで幅広く、「TRUST事業」と「ENTERPRISE事業」の2つを軸に、メインフレーム、IBM i、オープン系など全プラットフォームを対象にして、システム開発の上流支援からソフトウェア開発、運用・保守までを提供している。
自社開発のツールやソリューションを扱っていると、どうしてもそれらの導入へ誘導するような営業スタイルになることを嫌い、SIを軸にユーザー各社のそれぞれの業務ニーズにきめ細かく対応できるサービスを心がけている。
TRUST事業の中から、とくにIBM iユーザー向けに切り出したのが、「IBM iアプリケーション外部保守委託サービス(TRUST SS)」である。
最近は1〜4名程度のシステム人員でIBM iを運用するユーザー企業から、緊急SOSに近いような問い合わせを受けるケースが増えてきた。
今までアプリケーション保守を担っていた担当者が定年で会社を去り、後継者が育っていないという状況、あるいは今までアプリケーション保守を担当していたベンダーがIBM iから撤退したという状況の中、「IBM iの基幹システムをもう少し使い続けたいが、アプリケーションを保守できる人材がいない。どうしていいかわからないので相談に乗ってほしい」という切羽詰まった問い合わせが、同社サイトに用意されたフォームを通じて寄せられている。
そうしたユーザーでは、人員不足に悩んでいるものの、具体的な解決策をもたないケースが多い。そこで同社ではまず、IBM iアプリケーション外部保守委託サービスを提案する。
このサービスでは、IBM i向けのシステム解析ツール「REVERSE COMET s(リバースコメットエス)」を使用して、既存プログラムを可視化する。
そして保守対象とするシステム領域と改修頻度を特定し、予算を決めてサービス提供に入る。ツールによる既存プログラムの可視化作業は有料であるが、REVERSE COMET sはサービスとして提供し、ユーザーがツールをライセンス導入する必要はない。
現在、同社がサポートする数十社のIBM iユーザーのすべてが同サービスを利用中である。そしてそれを最初の足掛かりに、約半数のユーザーがシステム部門の機能をほぼ丸ごと、同社へ委託するアウトソーシングサービスへと移行している。
業務アプリケーションの運用・保守は、インフラ系のそれとは比べものにならないほど、複雑で難易度が高い。そこで同社では外部の教育機関に依頼して、製造業をモデルにした業務ノウハウに関する教育を社員に受講させ、業務に強いエンジニアの育成に力を入れている。
そしてアプリケーション保守を手掛かりに、ユーザーの業務をより深く知ることで、システム部門の業務を受託するアウトソーシングサービスへ、さらにIBM i上の新たなシステム開発や周辺システムへの連携、オープン系アプリケーションの構築といったSIにつなげていく方針である。
経営と業務をよく知るユーザー側の担当者を窓口にコミュニケーションを重ねながら、インフラ、セキュリティ、アプリケーション、データマネジメント、ネットワークの全般を引き受けるのが最終ゴールであり、ユーザーを悩ませる要員不足への対策にしたいと考えている。
[i Magazine 2024 Spring掲載]