東京大学とIBMは6月7日、量子ハードウェア技術の研究・開発を行うテストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を東京・本郷の東京大学 浅野キャンパス内に開設し、量子コンピュータの動作環境を再現するテストベッドを設置した、と発表した。
同テストセンターの開設は、2019年12月に締結した東大とIBMによる「Japan?IBM Quantum Partnership」に基づくもの。同パートナーシップは、(1)産業界と共に進める量子アプリケーションの開発、(2)量子コンピュータシステム技術の開発、(3)量子科学の推進と教育、の3つから成るが、今回のテストベッド設置はそのうちの「(2)量子コンピュータシステム技術の開発」に基づくものという。
東大とIBMは、今回の量子システム・テストベッドを日本の企業・団体に公開し、量子ハードウェア研究・開発の促進を促す。ニュースリリースでは、「高度な極低温マイクロ波コンポーネントとサブシステムおよび制御エレクトロニクスや、超伝導量子ビットを安定的に動作させるために必要な材料、高品質な信号伝送に必要な高周波部品や配線」と「極低温を実現するために必要な冷凍機やコンプレッサー、それらの制御技術」を挙げている。
東大とIBMはこのほか共同で、量子理論に関する研究、ソフトウェア開発、教育を推進中。また、今年(2021年)3月には神奈川県川崎市に「IBM Quantum System One」を設置し、産業界と学術ユーザー向けに公開することを表明している。
東大とIBMの量子コンピューティング分野における提携の主な歩みは以下のとおり。
・2019年12月 「Japan-IBM Quantum Partnership」設立
・2020年7月 「量子イノベーションイニシアティブ協議会」設立
・2021年3月 「IBM Quantum System One」設置を発表
東大は2017年7月に総長を本部長とする「未来社会協創推進本部」を設置し、さまざまな分野で学外との「協創」を拡大させている。量子コンピューティングはそのうちの1つで、学外との「協創」可能なテーマ・分野として現在58のプロジェクトが登録されている。東大はIBMのほかに富士通やNECなどとも量子コンピューティング関連の共同研究を推進しており、量子コンピューティング分野における東大のプレゼンスが高まっている。
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