日本の産官学のデジタル化が遅れていることに大きな危機感を抱き、ITリテラシーを向上させデジタル化を推進しなければ、日本企業はグローバル社会に取り残される。この状況を懸念して、2018年9月7日に経済産業省が公表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』に衝撃を受けました。
それから2年半が経ち、2020年12月28日に公表された『DXレポート2』(中間報告)では、DXの進捗状況として、9割の企業でほとんど進んでいないことに愕然としました。阻害要因は社内の文化・風土だと指摘されている点もさらに驚きです。
今まで脈々と築いてきた業界での優位性を破壊する「ハイパーコンペティション」が、待ったなしの状態で日本企業を浸食しています。
DXの目的は、不確実性が高まる社会において、企業の存在意義/Purposeを貫くことであり、激変するビジネス環境に俊敏に対応するために、あらゆる企業がデジタルを前提としてビジネスモデルを再構築することが求められています。
DXで会社を変える、社会を変える、国を変える。国を挙げての革新的で大きなうねりが始まったところで、私たちは突然、コロナ禍による非常事態に見舞われました。
皮肉なことに、この深刻な事態がDXを加速する原動力になったのです。ピンチはチャンス!! 今こそ衆智を集め、この難局を乗り越えたいと強く願っています。
これまでのヒト・モノ・カネ、さらに既得権や規定や習慣、勘と経験と度胸でやってきたビジネスを、これからはデジタルで考え、創造していくように切り替えねばなりません。
DXの実現に必要なことは、AIやIoTやクラウドを活用したITリテラシーの向上はもとより、トップの理解と権限譲渡、人財開発いわゆるリスキリング(Reskilling、職業能力の再開発・再教育)、社外の企業やコミュニティとの共創。
そして何よりも、「私たちは社会の変化に迅速に対応すべく、自らの殻を破り捨て、『蛻変』 (ぜいへん)しようじゃないか」と、社長がビジョンを高らかに掲げ、全従業員の幸福を追求すると同時に、社会が応援したくなる社格を持ち、文化・風土を刷新するに至るほどのDXを強力に推進する決意と覚悟を社員全員に共感してもらうことだと思うのです。
これが、DXの先にあるのは会社の変革「CX」(Corporate Transformation)と言われる所以です。
ちなみに蛻変(ぜいへん)とは、セミの卵が幼虫からさなぎになり、さなぎの殻を破って羽化して成虫になっていくこと。つまり殻を破り変化していく経営でなければ、企業は成長しないのです。
次回から、具体的なDXの事例についてお話したいと思います。
Technolo爺ぃの知恵の蔵(武藤元美)