Project Techno-Cubeの
第1弾の共同開発製品
Tech-Cube DataOneは、アイエステクノポートとクレスコ・ジェイキューブの共創プロジェクト「Project Techno-Cube」の第1弾の共同開発製品である。
IBM i上のデータを照会する機能のほかに、照会・加工したデータをExcelなどへエクスポートする機能や、IBM iと外部システムを連携させるAPI機能ももつ。
また、データベースに加えてスプールファイルもデータの照会先にでき、さらにIBM Db2 Web Query for i(以下、Web Query)の定義情報をTech-Cube DataOneの定義ファイルへ変換するコンバージョン・サービスも提供する。IBM iユーザーの間で関心の高いデータの照会・活用と外部連携の両方に対応する、新しいタイプのデータ活用ツールである(図表1)。
ここで両社の共創プロジェクト、Project Techno-Cubeに触れておこう。
Project Techno-Cubeは、IBM i市場において30年以上の歴史をもつ両社が、それぞれの技術力・販売力を活かして「IBM i市場を活性化する製品・サービスを提供していこう」という意欲的なプロジェクトである。
アイエステクノポートは過去30年以上にわたり、IBM i向けのアウトプットソリューション「UT/400-iPDC」をはじめとして、IBM iの開発支援やデータ活用に向けたミドルウェアを多数提供してきた。
一方のクレスコ・ジェイキューブは、IBM i市場で30年以上の歴史をもつアルスと、IBM i企業への支援で多くの実績をもつネクサス、オープン系とエンタープライズ系に強いエヌシステムの3社が合併して誕生した会社で(2022年7月)、合併後はIBM iを中核事業の1つとして体制を整備してきた。
IBM iエンジニアの数は「当社だけで70人以上」(クレスコ・ジェイキューブの深井淳 代表取締役社長)。両社は今後、Tech-Cube DataOneのような製品開発のほかに、次世代システムの企画・構築やDXに向けた既存ソフトウェアの分析・可視化サービスなどを予定しているという。
Tech-Cube DataOneを構成する
複数のコンポ—ネント
Tech-Cube DataOneは、「IBM iの領域を拡大する新しいデータ活用ツール」というコンセプトの下、「使いやすさと高機能、低コストを実現する作り込みを行って、Webブラウザで利用できるようにした製品」(深井氏)である。IBM i上で稼働し、専用サーバーなどは不要である。
Tech-Cube DataOneのコンポーネントは、以下のとおり(図表2)。
・データベースからデータを抽出してオープン形式のフォーマットに変換機能
・iSeries Siteのワークフローエンジンを搭載する「スマートワークソリューション」のコアフレームワーク
・ドライバー製品の「IBM Toolbox for Java JDBCドライバー」
・スプールファイルからデータを抽出してデータ加工やExcel・CSVなどへの変換オプション
・IBM iと外部システムとのAPI連携オプション
「Tech-Cube DataOneは、両社のIBM i技術にクレスコ・ジェイキューブのWeb化技術を合わせた、それぞれの得意技を活かした製品です」と、クレスコ・ジェイキューブの今井洋氏(ストラテジックマーケティングオフィス 部長)は説明する。
Tech-Cube DataOneの操作は、ログイン後、データの照会先をライブラリから選択し(図表3)、結果フィールド、サマリーキー、出力フィールド、選択条件、出力順序、出力先などを設定して、出力形式を選択するだけである(図表4、図表5)。エクスポートの形式としては、物理ファイル、Excel、CSV、XML、JSONを選択できる。
IBM Db2 Web Query for iの
定義情報変換サービスも提供
Tech-Cube DataOneは、Web Queryの定義情報をTech-Cube DataOneの定義ファイルへ変換するサービスを提供する。というよりも、「Web Queryの定義情報を変換して別製品で使えるようにするのが、Tech-Cube DataOneのそもそもの発端でした」と、深井氏は振り返る。
「アイエステクノポートの金澤(廣志 代表取締役社長)さんとお会いしているときにWeb Queryの保守サービス終了のニュースを知り、“即日のサポート終了ではお困りになるユーザーも多いだろう”という話になり、そこから“お困りのユーザーを両社の力で救済できないか”と発展して、今回の製品開発につながりました」
Tech-Cube DataOne変換サービスは、Web Queryの定義情報を保持するシノニム情報とレポート定義情報を取得して、それらを基にTech-Cube DataOneの定義形式へ変換する(図表6)。シノニム情報はデータベースのテーブル情報、レポート定義情報はデータの表示形式をまとめた情報である。
抽出データをJSONなどに変換し
外部とAPI連携が可能
Tech-Cube DataOneはまた、抽出したデータをJSON形式やXML形式のファイルに変換し、オプション機能を介して外部システムとAPIで連携させることができる。
このオプション機能はIBM iと外部システムを連携させるためのAPIツールで、アイエステクノポートではこの技術をベースにした「UT/400 Cloud Connector for ClimberCloudアダプター」や「UT/400 Cloud Connector for DocYouアダプター」など連携先を固定した製品をリリース済みである。
Tech-Cube DataOneは現在「リリース前の最終テスト段階」(今井氏)で、今年10月に発売の予定。価格は未定だが、「Project Techno-Cubeの第1弾の製品でもあり、競争力のある戦略的な価格を設定し、市場に旋風を巻き起こしたいと思っています」と、深井氏は抱負を述べる。
*1:「Tech-Cube DataOneは現在開発中のため、機能や画面イメージなどがリリース時の内容と相違する場合がある」と、Project Techno-Cubeでは説明している。
深井 淳氏
株式会社クレスコ・ジェイキューブ
代表取締役社長
今井 洋氏
株式会社クレスコ・ジェイキューブ
ストラテジックマーケティングオフィス 部長
[i Magazine 2024 Summer 掲載]