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女性技術者が毎月集い、語り合うことから得られるもの、芽吹くものとは? COSMOS WGの活動について聞く ~TEC-JのWGメンバーを訪ねて❺

女性技術者が身近なテーマをフランクに語り合うワーキンググループ「COSMOS」(正式名称は「ITLMC COSMOS 女性技術者交流会」)。2018年に活動をスタートし、ほぼ毎月オンラインやリアルで集合し、仕事やプライベート、家庭などのさまざまな悩みや課題、問題を語り合ってきた。WG活動を継続する思いや狙いを、リーダーの村田紗矢子氏とサブリーダーの森田圭子氏にうかがった。

村田 紗矢子 氏

キンドリルジャパン株式会社
カスタマーマネジメント本部
クライアントトラスト&リスクマネジメント
シニアITスペシャリスト

森田 圭子 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング
アーキテクト

 

-- 最初に「ITLMC COSMOS 女性技術者交流会ワーキンググループ」(以下、COSMOS WG)をご紹介ください

村田 一般に知られた存在として、日本IBMには「COSMOS」という女性技術者のコミュニティがあります。2005年に結成された歴史のあるコミュニティで、女性技術者のステータスの向上や組織を超えたネットワーキング、女性技術者特有の問題の解決に取り組んでいます。コア・メンバーは技術理事など錚々たる方々です。

それに対して私たちのCOSMOS WGは、COSMOSコア・メンバーの方々により企画・運営されている活動とは別に、女性技術者が抱えているさまざまなテーマについて身近に語り合える場として2018年に設立されたものです。ライフ、キャリア、技術に関わるテーマを幅広く取り上げ、月1回のペースで会を開催しています。ゲストをお招きしてセミナーを開いたり、メンバー同士でディスカッションしたり、運営スタイルもいろいろです。

またメンバーになるのも、年代やプロフェッション、部門、ロケーション、バンド(役職・階級)などに関係なく、いろいろな方が自由に参加しています。2021年度の参加は45人で、2018年からの延べ人数は約100人になります。

-- COSMOSとはどういう関係ですか。

村田 COSMOSコア・メンバーからは毎年2人の方を派遣してもらって、困ったことがあると相談に乗っていただいたり、アドバイスをもらっています。運営に関しては、COSMOS WGが独自に進める形です。

森田 COSMOSは日本IBMの女性技術者全員が参加するコミュニティで、そのメンバーが自由に交流する場がCOSMOS WGという関係ですね。

-- 「COSMOS WGで取り組みたいこと」というアンケート結果を拝見すると、仕事、キャリア、プライベート、女性特有の問題などさまざまなトピックが挙げられています(図表1)。一方、メンバーの方々が作成した「幸せのたまご」を見ると、それぞれに仕事・プライベートなどのウエイトが違うことがわかります(図表2)。各回のテーマはどういった観点で決めているのですか。

図表1 「WGで取り組みたいこと」アンケート結果(2020年)
図表1 「WGで取り組みたいこと」アンケート結果(2020年)
図表2 幸せのたまご(2021年)
図表2 幸せのたまご(2021年)

村田 できるだけ目配せよくテーマを決めたいと思っているのですが、2019年秋~2020年秋の1年間は、ゲストをお招きしてキャリアップやスキルアップについて話をうかがうことが多くなりました(図表3)。日本IBMの人事の方にキャリアの研修をしていただいたり、インドに長く赴任していた方やITツールに詳しい方に話をうかがっています。

そして2020年秋~2021年秋の1年間は、メンバー同士のネットワーキングをテーマにすることが増えました。メンバーにアンケートしたところ、自分のことを話したいという要望がとても多かったのです。おそらくリモートワークが長く続き、人と交流したいという気持ちが強くなっていたのだろうと思います。Webex(オンライン会議システム)のブレークアウトセッション機能を使って参加者に小グループに分かれてもらい、時間がくるとシャッフルして、いろいろな人と会話できるようにしました。

図表3 月次の活動(2019~2021年)
図表3 月次の活動(2019~2021年)

森田 そのネットワーキングは毎回好評で都合4回開催しましたが、参加したメンバーは年代も仕事もキャリアも実にさまざまでした。それぞれの方が、ふだん会話しないような人と会話したり聞けないような話が聞けたりして、刺激的な経験をしたのではないかと思います。

私が参加したグループは、どの回もバラエティに富んだ顔ぶれでした。ある回は新入社員から「4人の子供を育て上げました」という大ベテランまでいる構成で、私が「今キャリアのほうを頑張っています」という話をすると、皆さんからたくさんの励ましをもらったり、ストレートな意見をいろいろとうかがいました。またメンバーからは、現場に行くと女性技術者の数が極端に少なくなって仕事上の悩みを共有できないという打ち明け話や、キャリア上の悩み、仕事と家庭とのバランスで苦労していることなどを聞かせてもらいました。深く考えさせられたり啓発されたりの連続でしたが、自分のすぐ側にいる人が自分と同じようなことに悩んでいるという気づきは、それだけで勇気づけられる思いがしました。

村田 私自身がWGに参加した頃を振り返ると、いろいろなことに悩んでいて、人の話を聞いてみたいような気持ちでしたね。    

-- というと。

村田 私は2002年に日本IBMに入社して、8年目に第1子、12年目に第2子を出産しています。この間、育児休暇と復職を経験していますが、仕事に戻ってからは仕事と家庭とのバランスに悩むようになりました。仕事については当時の男性上司がとても公平でそれなりに充実していたのですが、その一方、育児と家事の負担がかなり大きく、もやもやした気持ちでいたのです。それで、何か自分の状況を打開できるものはないかと思ってCOSMOS WGに参加したのです。

-- 森田さんもそうした経験をおもちなのですか。

森田 私も村田さんと同じような経験をしているのですが、私のほうは育児などに時間を取られている中で昇進なんてとてもできないけど、このまま昇進しないままではだめなのだろうか、という戸惑いのほうが強くがありました。とりたてて強い昇進欲があるわけでもなく、むしろ家庭の時間を大切にしたいという気持ちのほうが大きかったのですね。そうした思いがあるので、昇進して周りでバリバリ働いている人たちとうまく折り合いをつけてやっていけるのだろうかという悩みもありました。COSMOS WGは、私と同じような悩みを抱えている人も集まっているのだろうと思い、何かヒントになる話が聞けるのではないかと考えて参加しました。

-- 村田さんはCOSMOS WGの設立時に参加されて、1年後にリーダーになっていますね。これはどういう動機ですか。

村田 実は36歳になった頃に体に変調をきたして、プレ更年期のような症状を経験しました。その時は子供も小さく大変だったのですが、いろいろと調べて見ると、女性のホルモン量の変化と女性の退職年齢に関係がありそうということを知ったのです。すると、長くハッピーに会社人生を送るには、そうした身体の変化ともうまく付き合っていく必要があります。また同時に、私と同じような気持ちを抱いている女性技術者は少なくないだろうなとも思ったのです。そうであるならば、体の変化を超えて仕事を続けている先輩社員に話をうかがったり、同じような経験をしている女性技術者同士の情報交換をリードしたいと思ったのです。それがリーダーになろうと思った1つの動機です。

それと同じような時期に、「子供が小学校に上がったのだから、もっと長い時間働けないか?」と、別の上司に言われたのです。それがなぜかとてもショックで重苦しい思いをしばらく抱えていたのですが、そのうちに、長時間勤務が評価されること自体を変えないと、女性は出産後、約10年間はキャリアの低迷期となってしまい、心もモチベーションも低迷してしまうと思ったのです。

仕事は勤務時間の長さではなくパフォーマンスによって評価されるべき、ということは、私たち女性社員からも声を上げて、伝えていくことをあきらめてはいけないと思うのです。その意味では、私たち女性社員はパフォーマンスで自らをアピールする術をもっと身につけないといけないですね。

-- COSMOS WGに参加するメンバーは、さまざまな課題や悩みを抱えています。WGをリードするお二人は、今後どのように進めていくつもりですか。

村田 まずメンバーが関心をもっていることをテーマに取り上げて、いろいろな角度から幅広く考えられる機会を作ることだろうと思います。それにはゲストをお呼びしたりメンバー同士の意見交換だったりいろいろあると思いますが、常に何かのヒントが得られる場にしようと思っています。

森田 先ほどのネットワーキングでも触れましたが、COSMOS WGの場で話をしたりメンバーの話を聞くこと自体が、悩みの解決につながらなかったとしても、安心感を得たり気持ちの切り替えになったり、背中を押してもらうことにつながるのだろうと思います。その意味で、COSMOS WGを継続していくことが重要だと思っています。


村田 紗矢子 氏

キンドリルジャパン株式会社
カスタマーマネジメント本部
クライアントトラスト&リスクマネジメント
シニアITスペシャリスト

2002年日本IBM入社。現在キンドリルジャパンに在籍。入社時より、弊社アウトソーシング・サービスのセキュリティ・デリバリーに従事。セキュリティ・ポリシーの適用にあたって必要とされるプロセス/ツール構築の両面に携わる。さまざまなタイプのメンバーがいるからこそ、仕事がおもしろいのだと実感中。
CISSP・CISA・CISMを保持。

森田 圭子 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業
アーキテクト

2002年日本IBM入社。2児の母として、短時間勤務も経験。COSMOS WGには初年度よりメンバーとして参加し、2021年度よりサブリーダーとして活動中。製造業のお客様向けの基盤構築案件からキャリアをスタートし、最近は、通信、航空、保険といったさまざまな業種のお客様への連携基盤システムの構築案件に従事中。

*本記事は話し手個人の見解であり、IBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。


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