IPA(情報処理推進機構)は9月14日、「成長しない日本のソフトウェア・スタートアップ 国内競争を促進してエコシステムを創出する」と題する“ディスカッションペーパー”を発表した。
日米の創業1~10年前後のソフトウェア・スタートアップ(企業)を対象にアンケートを実施し、それを基に「日本のソフトウェア・スタートアップが抱える課題とその解決策」を考察したもの。
ソフトウェア・スタートアップを調査する理由について本ペーパーは、次のように説明している(要旨を箇条書き)。
●日本企業が急激に変化する競争環境に対応していくには、事業展開のアジリティが求められる。
●そのアジリティを実現するには、「内製や外部委託によるフルスクラッチ開発」(Build)依存のソフトウェア調達から脱却し、「ソフトウェア・プロダクトの導入」(Buy)へと転換を図るべき。
●そのためには、企業ニーズを満たすソフトウェア・プロダクトが市場に存在する必要がある。
●その種のソフトウェア・プロダクトの提供者としては、ソフトウェア・スタートアップが重要な役割を果たす。
●ソフトウェア・スタートアップをできるだけ多く国内で生み育てることができれば、市場における競争が促進され、より優れたソフトウェア・プロダクトが日本市場に供給されるようになる。
本ペーパーは、スタートアップの立ち上げ段階を「顧客発見」「顧客実証」「顧客開拓」「組織構築」の4つのステップに分け、各ステップにおけるスタートアップの取り組みや考え方を集計・分析して調査結果をまとめている。
調査は、2022年3月(米国)と2023年2~3月(日本)に実施され、それぞれ261件(米国)、135件(日本)の有効回答があった。
顧客発見
顧客発見では、「カスタマージャーニーマップ」「デプスインタビュー」「コンテキストインタビュー」といった7つの手法を、米国のスタートアップは「いつも使う」「やや使う」のに対して、日本のスタートップは「全く使わない」「あまり使わない」が目立ち、「この手法を知らない」という回答が「突出して多かった」。
顧客実証
顧客実証では、MVP(Minimum Viable Product;顧客からのフィードバックを引き出すための実用最小限の製品)に取り組むスタートアップは、日本が70%、米国は90%という結果だった。
また、MVPの効果測定で検証する要素については、日本のスタートアップが「顧客課題の解決」をとくに重視し、「顧客セグメント」「プライシング」「市場規模」「チャネル」をそれほど重視しないのに対して、米国のスタートップは、いずれの要素も重視する傾向がある。
顧客評価の計測方法については、日本のスタートップが「顧客に対するインタビュー」「顧客からのレビュー」という定性的方を「突出して」採用しているのに対して、米国のスタートップは約半数が定量的データを採用している。
ビジネスモデルのピボット(方向転換)
顧客発見や顧客実証で得られた課題に対してどのような対策を講じたかという「ビジネスモデルのピボット」(方向転換)については、日本のスタートアップが9つある対策要素のうち「ソリューション」を偏重しているのに対して、米国のスタートアップはすべての要素を変化させることに取り組んでいることがわかった。
また、ピボットを実施する理由について、日本のスタートアップは“顧客起因”(より本質的な顧客課題の発見、顧客のネガティブな発見)を主として挙げ、“市場起因”(他社との競争激化、他の有望なテクノロジーの出現)などの割合は「軒並み低い」のに対して、米国のスタートアップは、「他社との競争激化」「他の有望なテクノロジーの出現」を最多数の理由とし、“顧客起因”と“市場起因”の両方を見てピボットを実施している。
創業年数別のステージ
本ペーパーでは、スタートアップの事業成長を、シード、アーリー、ミドル、レイターの4ステージに分け、創業年数別にマッピングしている。その結果は、日本のスタートアップはアーリーとミドルに集中しているのに対して、米国のスタートアップは、シードからアーリー、ミドルへと増えてレイターが最多数となる。つまり米国では、企業年数の長いスタートアップほど後半のステージへ成長することが見て取れる。
本ペーパーはこの後に、マイケル・クスマノ氏が説くソフトウェア企業が成功するための「8つの必要条件」を日本のソフトウェア・スタートアップが満たしていないことを指摘し、解決策として3つの提言を行っている。
・「成長しない日本のソフトウェア・スタートアップ 国内競争を促進してエコシステムを創出する」発表リリース
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/business-of-software-startups.html
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