SI&クラウドの
独自のサービスを展開
ソフラは2014年にSOFLAクラウドセンターを建設し、IBM iクラウドサービスをスタートさせた。
同センターは、JDCC(日本データセンター協会)のTier3やISO27001(情報セキュリティ)などの高度な基準をクリアした地下1階・地上4階の施設。SIビジネスを展開してきた同社のような企業が、既存データセンターの“間借り”ではなく、独自にセンターを建設したのは“異例中の異例”とも言えたが、その狙いについて代表取締役社長の井本裕順氏は次のように説明する。
「建設を構想した当時(2010年代初め)、日本のクラウドサービスは情報系システムの移行が始まった段階でしたが、クラウドサービスの考え方である“システムの所有から利用へ”の動きは市場全体に徐々に浸透し、やがては基幹系システムに及ぶと見ていました。しかし基幹系となるとシステムの安定運用は必須であり、お客様の改修・拡張のご要望には即座に対応する必要があります。他社データセンターの間借りでは数々の制約があるため、またお客様に理想的な形でクラウドサービスをご提供するには自社センターしかなく、建設に踏み切りました」
同社は、SIで構築した顧客システムをクラウドセンターに収容しサービスを提供するという独自のクラウドビジネスを展開している(ほかにハウジングサービスも提供中)。「そうした取り組みによって初めて、システムの企画から設計、構築、運用、アプリケーション保守までのすべてを一貫してご支援することが可能になります」と、井本氏は強調する。そのために、SOFLAクラウドセンターに隣接する自社ビルに開発・運用部門を配置し、「お客様システムにいつでもすぐにアクセスできる体制を整えています」という。
クラウドサービスの新しい販売スタイル
「SOFLAブランドサイト」をスタート
同社は今年1月にクラウドサービス用としてPower10を2台購入した。P10クラスのマシン2台で、導入時は4コアずつ搭載し(8コアまで拡張可能)、メモリは計384GB、ディスクは計20TBという大容量のリソースを積む。これでセンター内のIBM Powerは、従来からのPower8・9・10マシンと合わせて「20台近く」になったという。
「当社ではこれまでに1社に1台の割合でIBM Powerをご提供してきましたが、最近の需要増と、より小規模なシステム構成とHA・DRなどのより高度なサービスのご要望にお応えするために、新たにマシンを導入しました」と、井本氏は話す。
Power10による新しいクラウドサービスでは、CPUリソースを0.1コア刻みで、メモリやディスクも「お客様システムに最適なサイズ」で提供する。またLPARによる区画の設定やHA・DRも「柔軟に構成可能」という。新しいPower10によるサービスについて井本氏は、「当社にとってサービスのグレードを大きく向上させる、新しいパブリッククラウドサービスの始まりです」と胸を張る。
同社では新しいクラウドサービスの提供に先行して、Web上で「SOFLAブランドサイト」と呼ぶサイトをオープンした。そこで「クラウドサービスの新しい販売スタイル」(https://brand.sofla.co.jp/)を推進する計画という。
同サイトでは、システム開発支援環境「SOFLA」を動画やデモで紹介するとともに、「得意先マスター設定」や「受注管理」といった機能をユーザーが操作できる環境で提供し、気に入ればツール一式をダウンロードし、そのまま本番利用へ進められるようにする。
「SOFLA」の中核をなす設計/開発ソリューション「SOFLA AG」は、業務系基幹システムに必要な機能を取り揃えた統合開発モデルで、画面上の設定だけでプログラムオブジェクトを自動生成し、アプリケーションを開発できるノーコード・ツールである。
同社ではSOFLAブランドサイトの第1弾サービスとして、「SOFLAパッケージ」シリーズの1つである「食肉卸業ERPシステム」を今年10月に公開する予定。「SOFLAパッケージ」シリーズはSOFLA AGに基づくサービスで、ユーザーは画面上の設定だけで保守・改修が行える。
同社は現在、Linux対応の設計/開発ソリューション「SOFLA AG Linux版」を開発中である(2025年に完成予定)。現在のSOFLA AGとあわせて使うことにより、「SOFLA AG上の設定だけで、IBM iまたはLinuxのプログラムを生成できます」という。
「SOFLA AG Linux版の導入によって、オープン系のクラウドサービスをより低コストで提供可能になります。クラウド市場の広範囲な拡大を見越してLinux版の開発とサービスの拡充を進める計画です」と、井本氏は抱負を語る。
[i Magazine 2024 Spring掲載]