清水建設は1月13日、高速道路やトンネル、ダムなどの建設現場で発生する搬出土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を量子コンピュータを用いて構築した、と発表した。
このシミュレーション技術は、クラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼラン・ブロックス)」を提供するグルーヴノーツと共同開発したもの。MAGELLAN BLOCKSは量子コンピュータやAIなどを利用可能なクラウドプラットフォームで、今回の土木現場で稼働中の約40台のダンプトラックの運行データを用いて行ったシミュレーションでは、1日あたりの土砂運搬量を約10%増加できることが検証できたという。
大規模な建設工事現場では大量の搬出土が発生し、その運搬作業の効率化が不可欠。そのため道路の渋滞情報などを勘案した最適ルートをドライバーにリアルタイムに通知することが求められているが、従来のコンピュータでは最適ルートの導出に多くの時間がかかってしまうため、今回のシミュレーション技術を共同開発した。
シミュレーションでは、前提条件として出発地や到着地、および両地点を結ぶルート数(今回は一般道、高速道路、待機場所経由道路の3ルート)などをMAGELLAN BLOCKSに登録。次にMAGELLAN BLOCKS上で、ダンプトラックに搭載されたGPSのログデータから顕著な低速走行エリアや時間帯別の滞留量などを分析し、ルートを最適化する計算モデル(イジングモデル)を構築。この計算モデルを量子コンピュータにインプットし、ダンプトラックの位置情報や待機場所の滞留台数、地図アプリから取得した各ルートの運行所要時間などのリアルタイム情報を取り込むことにより、瞬時に最適ルートを導出した。
グルーヴノーツがMAGELLAN BLOCKS上で構築し量子コンピュータで利用した「イジングモデル」は、膨大な選択肢から制約条件を満たす最適解を探索するための計算モデル。MAGELLAN BLOCKSはさまざまな情報からイジングモデルを自動生成することが可能なプラットフォームで、「ユーザーは最適化問題の定義やイジングマシンの構造を意識することなく、業務上のルールや制約をインプットするだけで最適解が得られる」と、同社は説明している。また、MAGELLAN BLOCKSを利用することにより、今回のルートの最適化に加えて、積載、工程、シフトの最適化なども行えるいう。
また清水建設は、「今後、ドライバーへのルート通知方法などについて検討し、本技術の実用化を目指し」、さらに「建設発生土の積載や排出場所の数がより多い複雑な走行ルートでの運搬についても本技術の適用を検討し、実用化していくことで土木工事の生産性向上につなげていく考え」と述べている。
・清水建設
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2021062.html
・グルーヴノーツ
https://www.magellanic-clouds.com/blocks/
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