本番機をクラウド上に配置する
障害・対策ソリューション
三和コムテックは、昨年(2020年)4月の政府「緊急事態宣言」のさ中に、「テレワークをもっと簡単に!」というキャッチフレーズを付けた「SCT在宅勤務サポートソリューション」をリリースしている。在宅勤務に急遽移行したために基幹システムへのデータ登録や受発注業務などが困難になった企業を対象に、三和コムテックが、リモートから作業を可能にするソリューションを短期間に構築・導入し、運用まで支援するというキャンペーンであった。
「テレワーク対応になってからシステム部門としてやるべきことが増え、非常に忙しくなったという話を多くのお客様からいただきました」と、執行役員の東條聡氏(クラウド&サーバー事業部 事業部長)は振り返る。
同社はこの2年、「DX化推進」をテーマにIBM iユーザー向けのビジネスを推進し、業績を伸ばしてきた。そのポイントは、「DXに向けた仕組みを構築するのに合わせて、IBM iユーザーの課題を同時に解決する」(東條氏)というものだ。
「お客様と話をすると、システム部門の人手不足や高齢化、後継者不足は“待ったなし”の問題です。その一方で、業務部門の要望や新しい経営課題への対応なども山積しています。これらを解決するにはシステムの仕組みを抜本的に変更し、システム部門の動きを変えることが有効です」と、東條氏はDX推進の狙いを説明する。
同社の提案の基本は、オンプレミスとクラウドに両方にサーバーを配置するハイブリッド構成のソリューションである。
たとえば障害・災害対策では、本番機をクラウドに、バックアップ機をオンプレミスに配置するHAソリューションを提案している。HAツールとして利用するのは多数の導入実績をもつMIMIXである。
「HAを求められるお客様は、有事の際にバックアップ機が手元になく、クラウドという自由にコントロールの利かない場所にあることに不安をもっておられます。その一方、本番機の保守・運用に日常的に手間がかかることも避けたく思っています。この2つの課題を同時に解決できるのが、本番機をクラウド側に配置する構成で、本番機の基盤の運用管理をクラウド側に任せることによって対応人員と関連コストを削減でき、有事の際にはオンプレミス側で対応できるので、業務品質の向上を図れます」と説明するのは、執行役員の福井理雄氏(クラウド&サーバー事業部 技術部長)である(図表1)。
バックアップ機をクラウドに配置
オンプレにアーカイブ
もう1つの障害・災害対策は、データバックアップを効率化し、より安全性を高めるソリューションである。
データバックアップの効率化の例として、ディスク・ツー・ディスク(D2D)の仕組みがよく紹介される。D2Dはテープ交換などの手作業を不要にする点で有効な改善策だが、バックアップ機がオンプレミスにある場合、バックアップ機の保守・管理が必要になり、クラウドへのバックアップの場合はバックアップデータが手元に残らない不安が生じる。
同社の提案は、クラウド上にバックアップツールのLaserVaultサーバーを配置し、IBM iから自動でバックアップデータを受け取り(自動転送用のCLプログラムが必要)、さらにそのデータをLaserVaultサーバーからオンプレミスのアーカイブサーバーへ自動転送するという仕組みである。これにより、バックアップ機の保守・管理のための人員コストなどを削減でき、より強固なデータ保全を実現できる。LaserVaultは強力なデータ圧縮機能(1/5〜1/20)や暗号化機能を備えているので、「ディスク容量を抑え、安全なバックアップが可能」という(図表2)。
ARCAD APIのクラウド配置により
外部連携を容易に
この1年、問い合わせが増えているのはARCADである。「以前は検討段階で終わるお客様が大半でしたが、最近はコンスタントに導入が増えています」と、東條氏は話す。
ARCAD製品に新しく登場したARCAD APIは、5250アプリケーションからREST
ful Webサービスを生成し、IBM iとWebやスマホなどのアプリケーションや外部のさまざまなシステムとの連携を実現するツールである。この機能を使うと、たとえばIBM iにアクセスして利用する基幹アプリケーションの仕組みを、アプリケーションの改修なしに、WindowsからマウスとGUIを使って利用できるように変えられる。
同社の提案は、ARCAD APIサーバーをクラウドに配置し、これを経由してPower Virtual Server上のIBM iを利用する仕組みである。さらに、今年6月にリリース予定のIBM i版ではARCAD APIサーバーが不要になるため、よりシンプルな仕組みを構築できるという。
「IBM iをリモートから利用したり外部システムと連携させる仕組みは、DXのための高度なシステムを構築していくうえで、きわめて重要になると考えています。ARCAD APIはそれを可能にする製品で、今後さまざまなユースケースをご用意し、お客様をご支援していくつもりです」と、東條氏は述べる(図表3)。
クラウドへのツール配置で
多様な環境間でデータ同期・交換
コロナ禍となって出荷を伸ばしているもう1つの製品は、Connect CDCである。同製品は、異なるプラットフォーム上にあるデータベース間でデータの同期・交換・強化を容易に実現するツール。「リモートワークの長期化が避けられない状況になったことを受けて、本格的なデータ連携システムの構築に乗り出したお客様が導入しておられます」(福井氏)という。Connect CDCは、マルチDB対応に加えて、相互リアルタイム連携や単方向・1対N・双方向の連携機能などをもつ。
同社の提案は、Connect CDCサーバーをクラウド上に配置し、クラウド-クラウド、クラウド-オンプレミスのリアルタイム・データ連携の仕組みを作ることである。
福井氏は「基幹サーバー上の最新データをどの環境でもリアルタイムに利用できるようになるため、各部署で共通の最新データを使いながら業務を進めるというデータドリブンな業務体制を敷くことができ、業務のスピード化も図れます。Connect CDCもDXに欠かせないツールと考えています」と語る(図表4)。
同社が「DX化推進」として提案中の製品は、「障害・災害・BCP対策」「データ活用」「データ保全」「テレワーク対応」とバラエティに富む(図表5)。
東條氏は、「これらのご提案のなかに、お客様が運用中の基幹システムを次へつなげる解決策が必ずあると思います。ハイブリッドという仕組みは、これからは避けて通れないテーマだと考えています」と話す。
[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]