オンプレミスで定評のある製品を
多数クラウド対応へ
三和コムテックは1991年の創業以来、海外の優れたIBM i対応製品を日本市場向けにカスタマイズして販売してきたベンダーである。現在はオープン系やセキュリティ分野にも事業領域を広げ、製品の販売・サポートだけでなく、導入コンサルティングやソフトウェア開発、BCP、RPA、Webセキュリティサービス、脆弱性診断などの事業も展開中である。
同社のIBM iクラウドへの取り組みは、2011年の3.11(東日本大震災)後に始まった。「当社のHAソリューションであるMIMIXが“クラウドに対応しているか”というお問い合わせが当時多数あり、提供を開始したのが始まりです」と、執行役員の福井理雄氏(営業部部長)は振り返る。そのときは、オンプレミスで運用してきたMIMIXのバックアップ側システムをクラウドへ上げ、オンプレミスとクラウド間で構成する内容だったという。
現在は、多数の製品をクラウド対応としている。図表1を見ると、オンプレミスで広く普及している製品の大半がクラウドで利用可能になっていることがわかる。
同社では新型コロナの感染拡大以降(2020年~)、クラウド上での稼働検証を継続し、ラインナップを増やしてきたという。
「当社の製品がクラウド対応しているかというお問い合わせは、その後もコンスタントにありましたが、昨年(2023年)は従来の10倍近くに増え、引き合いや見積依頼も増えました。お客様のクラウドへの向き合い方が変わりつつあるという印象です」と、福井氏は述べる。
MIMIX MOVEの
販売戦略を変更
同社ではこの変化を受けて、「MIMIX MOVE」のリ・マーケティングと販売戦略の変更を進行中である。
MIMIX MOVEは、MIMIXと同じHAエンジンをもつ製品で、「大量のデータを効率よく転送できるソリューション」(取締役の東條聡氏)。「従来は、日本から海外拠点へのデータ転送や、サーバーの入れ替え時やデータセンターの統合時などにシステム移行ソリューションとして使われていました」と、東條氏は説明する。
同社ではMIMIX MOVEを、「オンプレミスからクラウドへ移行する際の移行ソリューション」として販売していく計画。
「オンプレミスからオンプレミスへの移行では物理テープを利用して容易に移行できますが、物理テープの持ち込みに対応しているクラウドサービスは現在ほとんどなく、仮にクラウド事業者への持ち込みが可能であったとしても物理テープのデータと本番データとの間にギャップがあるため、本番システムの切り替え時にダウンタイムが生じる問題があります。これらを解決できるのはHAツールによるシステム移行で、MIMIX MOVEは最強のソリューションとなります」と、福井氏は強調する。
MIMIX MOVEは3カ月単位で利用でき、ライセンスの延長も3カ月単位で行える。「クラウドへの移行という短期利用を想定したライセンス形態」(福井氏)という。
機能としては、本番稼働中のシステムも移行でき、アプリケーション、データ、システム値の本番移行と、データベースおよびオブジェクトのリアルタイム同期を実現する。また移行は、1対1、1対多数、多数対1で行え、スピーディかつ効率的な移行が可能である。さらに、Webブラウザで転送定義やジャーナルなどの設定が行えるのも大きな特徴である。
同社のそのほかのクラウド対応製品は、永続ライセンスで提供される。インスタンスの移動により新たなシリアル番号が必要な場合は、都度、投入する必要がある。またオンプレミスで利用中の場合は、ライセンスをクラウドへ持ち込むことができ、継続して利用できる。永続ライセンスからサブスクリプションへの切り替えも可能という。
同社は現在、「複数のクラウドベンダーと提携を協業中」(東條氏)という。またOEM提供の商談も進行中で、iSecurityなどが候補に上がっているという。
「IBM iのお客様のクラウドへの移行は、IBM iがサブスクリプションへ移行することもあり、今後ますます増加すると見ています。当社でもお客様の多様なご要望にお応えできるようクラウドへの対応をいっそう強化していく計画です」と、東條氏は語る。
[i Magazine 2024 Spring掲載]