IBM iのCTOを務めるスティーブ・ウィル氏は2月12日、2025年のIBM iの戦略について「IBM i in 2025 ~A Strategic Preview」と題するWebセミナーを行った。IBMがシリーズで行っている「IBM i Guided Tour 2025」の2月実施分。
IBM i関連では今年、IBM i(OS)の新バージョン「IBM i 7.6」や新世代のPowerプロセッサを搭載したPower 11マシンの発表・リリースが予定されるなど、節目の年になる。
ウィル氏は「IBM iの今年の主な発表・イベント」として、以下を挙げた。
● IBM i 7.6の発表(第2四半期)
● 新しいPower 11マシンのための機能強化(Power 11マシンは今年後半発表予定)
● Db2 Mirror技術のユースケースの拡大
● RPG Code Assistantの発表
● 以下の製品の機能拡張 ~IBM iコミュニティの要望に基づき、テクノロジー・リフレッシュ(TR)で発表される
-Db2
-Navigator for i
-ACS
-セキュリティ
-アプリケーション開発
-オープンソース関連

IBM i 7.6では、「セキュリティとAI関連の機能が大幅に強化される」とした。
ウィル氏は、このIBM i 7.6の説明に先立って、IBM iの「この15年間の大きな特徴」として、「IBM iの常時稼働」に関する投資を積極的に行ってきたことを述べた。
「IBM iの信頼性が非常に高く、それが競争力の源泉になっていることは周知のとおりです。しかし近年では、お客様の要望として「常時稼働」がさらに求められるようになり、私どもはそれに対する投資を行ってきました。その結果、IBM iをできる限り継続的に利用可能にするためにさまざまなオプションが提供されており、それらの多くはIBM iの統合技術によって実現されています。つまり、IBM iはビジネスの継続性を確保するための重要なプラットフォームとなっているのです」
またIBM iをクラウドで稼働させるための技術への投資も活発に行い、「多くの進展がありました」という。
「たとえば、IBM iをクラウド環境に移行する際に発生するダウンタイムを最小限に抑える新技術としてDB2 Mirrorを導入し、さらに昨年末には、本番稼働中にオンプレミスからPowerVSへの移行を実現するIBM i Migrate While Activeをリリースしました。これらはビジネスの継続性を確保するための技術です」
次にウィル氏は、IBM iの将来像について言及した。
「IBM iの伝統的な役割は、トランザクションベースのアプリケーションを動かし、DB2のデータを活用することです。我々はこの基盤を維持しながら、新たなデータ統合を推進し、クラウドやAIのユーザーがデータを活用できる環境を整えていきます。この変化の中で、セキュリティやデータの完全性は引き続き最優先事項です。
そしてそれを実現するためには、開発者の視点からもIBM iの学習をより簡単にする必要があります。我々は、新たな開発者がIBM iに馴染みやすい環境を提供するため、オープンソース技術の活用を推進し、既存のスキルを活かせる環境を整えています。
また、スキルの問題だけでなく、IBM iの管理方法についても学習を容易にする必要があります。クラウドの普及に伴い、管理ツールのオープン化を進めており、IBM i の管理をより直感的に行えるようにしています。
IBM iの将来は、単なるトランザクションプラットフォームにとどまらず、クラウドやAI、オープンソースと統合された新たなプラットフォームとして発展し続けるでしょう」
ウィル氏は、近年アプリケーション・パッケージの利用が増えてきているものの、「70%の顧客が独自開発のアプリケーションやコードを稼働させている」ことを指摘。ユーザーがIBM iアプリケーションを開発する際の支援が重要になっていることを強調した。
その中でウィル氏は、最近の市場調査における「変化」を紹介した。
「Rational Developer for i(RDi)はすでに市場に15年以上存在しており、IBM i のモダン開発を支援するツールとして長年利用されています。しかし、今回の調査では、Visual Studio Code(VS Code)ベースの「Code for IBM i」がRDiとほぼ同等の利用率に達していることが明らかになりました。これは、開発環境における大きな変化を示しています。
現代のプログラマーは、ほぼすべてのコーディング作業をVS Codeベースの環境で行っています。そのため、IBM i向けのオープンソースプロジェクト「Code for IBM i」によって、オープンソース系を含む多くの新しい開発者がIBM iを採用しやすくなりました。
特に、IBM i を知らない新入社員であっても、慣れ親しんだ開発環境を使えることで、学習コストが大幅に削減されます。これは、IBM iの開発・モダナイゼーション・AI統合の方向性を決定するうえで、重要な要素となっています」
次にウィル氏は、IBM iと生成AIの統合に言及した。そしてその開発目標として、以下の5つの項目を挙げた。
・IBM iのアプリケーション開発およびモダナイゼーションのための生成AIアシスタント
・Db2におけるAIの活用、およびDb2がAIによるデータ活用を容易にする機能
・Powerの機能とIBM iの基盤を活用して独自のAI機能を開発するソリューション・プロバイダーとしての役割
・AIワークロードの簡素化されたデプロイメントと管理
・IBM i環境の管理と問題の予測を支援するAIアシスタント
そして、昨年10月に開発意向表明を行った「RPG Code Assistant」に関しては、「最初に「既存のRPGコードを説明する機能を提供する」とした。
「このユースケースは明確です。たとえば、新しい開発者に既存のRPGコードを引き継ぐ際、そのコードが何をしているのかを自動的に説明してくれるツールがあれば便利です。特に、新しい開発者がコードを読みながら作業しているときに、「このコードは何をしているの?」と尋ねられるようになれば、学習プロセスがスムーズになります」(ウィル氏)。
ウィル氏によると、その操作性は「RPGコードの一部をハイライトし、“このコードを説明して”とRPG Code Assistantに尋ねると、“このコードは〇〇をするためのプロシージャで、××という動作を行う”といった解説が表示される」というものだという。

ウィル氏は最後に、RPG Code Assistantの今後のスケジュールについて紹介した。
・2024年第1四半期の終わりまでに、少数の外部ユーザーによるテストを実施
・2024年第2四半期に、一般公開向けのデモを実施
・2025年後半に正式リリース(GA)
「正式リリースの後は、定期的に新機能を追加していく予定です。特に、コードの説明機能が安定した後、コード変換やリファクタリング支援などの新機能が加わる予定です」(ウィル氏)
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