オープンソース団体のQiskit.orgは4月7日、量子コンピュータの利用範囲を拡大する2つのモジュールを発表した。
1つは、古典コンピュータベースの機械学習を支援する量子コンピュータ用の機械学習モジュール「Quantum Machine Learning」。機械学習のプロセスの一部に量子コンピュータを適用することにより、プロセス全体の処理を早めたり最適化を可能にする。
古典コンピュータによる機械学習は、より複雑かつ膨大なデータセットを学習対象とするようになっているため学習時間が延び、データの汎化困難やオーバーフィット(データを予測できないモデルの生成)の問題が生じている。
一方、量子コンピュータによる機械学習は、「大規模なデータセットを量子コンピュータに読み込む必要があるため、潜在的な量子的優位性を打ち消してしまう場合がある」(発表文)。
Qiskit Machine Learningは、古典コンピュータからオフロードされたデータを量子コンピュータ上で処理するための量子回路設計や実行、複雑な観測値を評価するための機能などを提供する。フレームワークであるQiskit上で構築されているため、「使いやすく、量子コンピューティングの深い知識がなくても利用可能」という。
もう1つのモジュールは、自然科学の諸問題を調査・シミュレーションするための「Qiskit Nature」。物理学・化学・物質科学・生物学などの研究者が、実機上で量子シミュレーションや実験が行え、問題のモデル化や解決などを支援するという。「自然科学と量子シミュレーションのギャップを埋めるユニークなプラットフォーム」と発表文にはある。
また、Qiskit Natureを用いてシミュレーション用のプログラム開発も可能で、量子コンピューティングのスキルに応じてさまざまな使い方ができるとしている。
提供中の化学用量子プログラム「Qiskit Chemistry」は、Qiskit Natureに適合するよう再構築されたという。
2023年の1000量子ビット以上の量子コンピュータへ向けて、ソフトウェアの改良・進歩が続いている。
Introducing Qiskit Machine Learning(Mediumサイト)
Qiskit’s Machine Learning module
Qiskit Nature API Reference
Qiskit
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