野村総合研究所は11月29日、「IT活用実体調査(2022年)」の調査結果を発表した。
この調査は2022年9月に、国内企業におけるIT 活用の実態を把握するためのアンケート調査を大手企業のCIO(最高情報責任者)またはそれに準じる役職者を対象に実施しており、全業種にわたって466社から回答を得た。同社では2003 年から同調査を毎年実施しており、今回で20回目となる。
同調査では、これまでも行ってきたIT 投資などの定点観測項目のほかに、企業のデジタル化への取り組み年数や、成果の獲得状況についての項目を新たに追加している。
調査結果は、次のとおりである。
◎2023年度は49%の企業がIT投資の増加を予測
2022年度の自社のIT投資が前年度に比べて増加したと回答した企業は52.9%で、2021年度の調査よりも7.7ポイント増加。
一方、減少したと回答した企業は6.1%に過ぎず、IT投資の増加傾向が顕著となった。2023年度のIT投資については、2022年度よりも増加すると予測した企業が49.0%とほぼ半数に上った。
◎デジタル化推進で得られている効果は業務の改善や効率化
デジタル化の推進による効果は、「業務プロセスの改善、生産性向上」 と 「業務に関わる人数や労働時間の削減」 をあげた企業がそれぞれ81.5%、77.4%となった。
一方で、「顧客数や顧客単価、顧客満足度などの向上」 や 「既存事業における商品・サービスの高度化」をあげた企業はそれぞれ35.0%、34.4%。「新規事業や新サービスの創出」 や 「SDGs、地域活性化などの社会課題解決への貢献」をあげた企業は、それぞれ28.8%、17.1%にとどまり、事業や社会を変革していく観点での価値創出は、各企業の今後の取り組みに委ねられていると言える。
◎最大の課題はデジタル化を担う人材の不足
デジタル化の推進から効果を得る上で各社が直面している課題については、「デジタル化を担う人材の不足」をあげた企業が最も多く、80.5%。
これに対して、課題解消のための取り組みとして、「人材のスキル向上や専門人材の採用」をあげた企業は48.2%にとどまっている。人材の不足は課題として大きく認識されているものの、解消のための具体的な取り組みはまだ途上にあると言える。
◎デジタル化への取り組み年数が長い企業ほど成果を獲得
デジタル化の取り組みについて、「顧客に対する活動のデジタル化」「業務プロセスのデジタル化」「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」の3つの領域に分け、取り組みの年数をたずねた。
その結果、「業務プロセスのデジタル化」では5年以上取り組んでいる企業の割合が39.3%であるのに対し、「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」ではそれぞれ16.3%、10.7%にとどまった。
また、「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」では、「取り組んでいない」と回答した企業の割合もそれぞれ31.3%、36.2%にのぼった。
さらに同調査では、3つの領域のそれぞれについて「取り組んでいない」と回答した企業以外を対象として、投資から財務上の成果や、他の定量的な成果を得ているかをたずねた。
「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 もしくは 「他の定量的な成果(顧客獲得数、顧客満足度など)は得られている」と回答した企業の割合は、「顧客に対する活動のデジタル化」の領域では、取り組み期間が3年以上5年未満の回答企業で56.7%、5年以上の回答企業で69.2%だった。
どの領域でも、取り組みの期間が長いほど 「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 と回答した企業の割合が高いという傾向が見られた。
この調査結果からは、デジタル化への取り組みを3年以上進めている国内企業では、定量的な成果を得られた企業が半数を超えることが明らかになった。デジタル化への投資を意味のある成果につなげるには、中長期の視点を持ち、腰を据えて取り組む必要があると指摘している。
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