基幹システムのPowerVS移行を
日本で初めて支援
MONO-X(3月にオムニサイエンスから社名変更)はこの10年間、IBM iシステムのDX・モダナイゼーション支援に意欲的に取り組んできた1社である。リリースしてきたツール/サービスは、データ活用ツール「MONO-X BI(PHPQUERYを改称)」やシステム連携ツール「MONO-X API(API-Bridgeを改称)」など10種以上に上る。
またPower Virtual Server(以下、PowerVS)にいち早く注目し、取り組みを拡大してきたベンダーでもある。2021年に日本で初めて基幹システムのオンプレミスからPowerVSへの移行を成功させたのを皮切りに(ユーザーはブラブジャパン)、2022年にPowerVSへの移行をサポートする総合サービス「PVS One」をリリースし、2023年には光世証券の証券業務システムのPowerVS移行も支援した。
営業本部の朝倉啓考氏(営業推進部 部長)は、「この1〜2年、IBM iクラウドに興味をもつお客様が一段と増え、次期プラットフォームの選定では必ずと言っていいほどクラウドサービスが選択肢に入るようになりました」と、IBM iユーザーの変化を指摘する。
取締役 COOの下野皓平氏は、「私たちのPVS Oneのサービスがなぜ20社以上のお客様に本番採用いただいているか。その理由は大きく2つです。オンプレが第1候補だったお客様にも価格的に十分検討できる価格で提案できること。そして、人不足の中で、お客様の運用管理の手間が大幅に楽になり、すぐにアプリの構築を開始できるなど、DXのスピードが増すからです」と話す。
「IBM Cloudスターターパック」など
オプションを多数用意
PVS Oneは、運用中のシステムを対象にしたアセスメントを基にサイジングを行い、PowerVS上の環境構築やネットワークの選定、システム移行を実施し、移行後はインフラの保守・運用までを支援するトータルサービスである。
下野氏はPVS Oneの特徴について、「お客様の人員が少ない中でも生産性を上げられる、インフラ全般の移行・運用サービスです」と話す。
また取締役 CTOの菅田丈士氏は、「PowerVSへの移行やクラウド上の運用では、IBM iのスキルよりもクラウドのスキルのほうが重要になりますが、クラウドは多くのお客様やベンダーにとって未経験の領域であるため、高いハードルを感じておられます。そこを技術面でサポートするのがPVS Oneです」と特徴を述べる(図表1、図表2)。
朝倉氏は、PVS Oneの1つの特徴として、「IBM Cloudのネットワーク環境を熟知した提案が可能なことです。主要3キャリアの回線、インターネットVPNまで、通常想定されるほとんどの構築経験があり、金額的にハードルの高いVRA(仮想ルータ)を利用しない構成が提案可能なため、一般的な他社の提案よりも月額10万円以上は下げて、ご提案が可能です」と強調する。
PVS Oneはオプションとして、「IBM Cloud請求代行」や「IBM Cloudスターターパック」などをラインナップしている。IBM Cloud請求代行は、IBMとの契約に伴う煩雑な手続きを代行し、安価な料金で利用できるサービス。IBM Cloudスターターパックは、IBM Cloudをすぐに利用可能にするセットアップ・サービスである。
このほかPowerVSの利用状況を月次で報告する「パフォーマンス分析レポート」や部門ごと(インスタンスごと)の利用料金をレポートする「クラウド月次使用料レポート」、「無期限型クラウド・クレジット」などがある。無期限型クラウド・クレジットは、「IBM Cloud・PowerVSを、IBM社から購入すると(最大)1年間の有効期限が設定されているため、余裕を持って1年分買うなどができず、期間内に使い切るのは困難です。その不便さをカバーするのが無期限型クラウド・クレジットです」と、朝倉氏は説明する。
菅田氏は同社のクラウドサービスについて、「クラウドでは新しいサービスが日々登場し、サービスの改訂や終了も頻繁です。当社ではそうした情報に継続的にアクセスし、サービスにすぐに適用しています。それが可能な技術力と体制が当社の強みであり、特徴です」と語る。また下野氏は、「IBM iを長期にわたって使い続けたいというお客様に対して、今後に関するさまざまな選択肢をご提案し実現できるのが当社の強みです。また、弊社内でもサービスの定型化が進んできており、パートナー様との協業による販売も今後検討していきます」と続ける。
同社ではPowerVSに関する情報発信も積極的に行っている。YouTubeでは「菅田丈士のクラウドch」を開設し、多くの視聴者を集めている。セミナーやイベントでの講演も頻繁だ。
「クラウドへの移行といってもオンプレミスにあるものを移すだけですが、しかしクラウドへ移行すると環境をすぐに構築でき利用へ進めるので、インフラの調達に関する意識が一変します。そしてクラウドのその価値をいったん体感されると、業務システムの導入・変更がスピードアップし、業務を支援するシステムの価値が高まります。当社ではそうした価値を共有できるお客様を増やしていき、クラウドサービスをとおしてお客様に貢献していきたいと考えています」と、菅田氏は抱負を語る。
[i Magazine 2024 Spring掲載]