画像を利用したチャットボットで
メンテナンス受付業務を効率化
「Minervae ViBOT」(ミネルヴァ ビボット)は、クレスコが2017年9月にリリースした画像認識チャットボット作成ソリューションである。
同社は「IBM Watsonエコシステムプログラム」が発表された2015年7月当時からのエコパートナーであり、(株)フォーラムエンジニアリングがWatsonを使って構築した人材マッチングシステムの開発に携わっている。
その経験をもとに、知恵を司るローマ神話の女神の名をブランド名に冠したAIソリューション、Minervaeシリーズの開発に着手した。同シリーズの第1弾は、2017年4月にリリースしたWatson PoC支援サービス「Minervae PoCKET」。そして第2弾が、前述したMinervae ViBOTである。
Watsonソリューションで今最も多いのが、チャットボットサービスである。ただしそのほとんどが、自然言語によるテキスト認識を中心にしている。これに対してMinervae ViBOTは自然言語でのやり取りに加え、ユーザーが送った画像を認識して自動応答するチャットボットを作成できる点が大きな特徴である。
Minervae ViBOTでは、同社独自のチャットボット作成ツールに加え、Watsonの画像認識APIである「Visual Recognition」(以下、VR)と「Natural Language Classifier」(以下、NLC)を使用し、LINEのユーザーインターフェースなどでユーザーとのやり取りを可能にする。もともとは、チャットボットによるメンテナンスや修理の受付システムを想定して開発された。
「画像を使用することの最大のメリットは、修理の依頼や問い合わせの対象となる商品や製品の種類、型番、さらにその不具合の状況・状態を正確に伝え、やり取りの回数や時間を最小化できる点にあります」と語るのは、先端技術事業部の髙津聡事業部長(兼 スマートテクノロジーオフィス 室長)である。
たとえば、家電製品に関する修理依頼のケースを想定してみよう。テキストだけのチャットボットの場合、顧客は画面から、修理依頼したい対象の名称(たとえば洗濯機)、型番、状態(どこが、どのくらい、どうなっているか)などを何度もテキストで入力せねばならない。しかし画像を送信すれば、これらの情報を的確に、かつ短い時間で伝えられる(型番の認識はテキストを変換して読み込むのではなく、VRがあらかじめ学習した画像により認識させている)。
あるいは靴底の摩耗度診断のケースでは、顧客が靴底の写真を送ることで、摩耗度(大・中・小)とソールの種類(レザーやラバーなど)をVRで認識し、概算の修理費用や修理後のイメージ画像、近隣の修理交換所などを伝える。
対応内容や流れは、ユーザーが描くシナリオに沿ってさまざまだが、緊急度が高いと判断すれば、コールセンターの電話番号を表示させる、オペレータに通知しチャットを有人対応へ切り替えるといった処理が可能。オペレータが引き継いだ場合も、それまでのやり取りの履歴が一目で把握できるので、対応時間の短縮や品質の向上につなげられる。
当初想定した利用領域を越えて
さまざまな業務で検討
Minervae ViBOTは初期費用が100万円?、月額利用料が50万円?。LINEやその他のコミュニケーションツールをインターフェースに利用する場合は、月額3万円?。カスタマイズには、別途見積もりで対応する。またトライアル版も用意されており、本番と同等の機能が2カ月75万円で利用できる。トライアル版の利用後に本番導入する場合は、月額費用が初月無料となる(上記価格はいずれも税抜)。
契約後の流れとしては、まず学習データとシナリオの作成(チャットボットによる自動応答機能を提供するため、1問1答の会話のシナリオを作成する)に始まり、環境準備、学習データとシナリオの投稿を経て運用開始に至る。
昨年9月にリリースされて以降、同社にはさまざまな問い合わせが寄せられている。画像で状態を正確に伝達できる点が評価され、すでにビルメンテナンス業務での本番利用がスタートしているほか、修理の受付、ブランドロゴ使用状況のチェック、清掃管理などもある。
「当初想定していたメンテナンスや修理依頼の受付チャットボットという利用範囲を大きく超えて、多彩なシナリオでの利用が検討されています」と、先端技術事業部の江澤美保氏(スマートテクノロジーオフィス AIサービスエバンジェリスト)は指摘する。
Minervae ViBOTは今秋にも、独自のチャットボット作成ツールの代わりに、WatsonのAPIである「Assistant」を採用した次バージョンのリリースを予定している。
このほか同社では、眼疾患の診断に役立てる「Minervae SCOPE」をはじめ、AIとRPAで入札案件の担当部署決定を支援するソリューション、多岐にわたる技術的な問い合わせに回答するAIシステムなど、ユーザーごとの個別案件に応じた開発を進め、AIビジネスの展開を加速化している。
[IS magazine No.21(2018年9月)掲載]