Text:アッシュ・ギディングス Maxava
クラウドは、IBM iのワークロードを取り巻く状況を劇的に変化させたと言えるでしょう。
多くの企業は慎重な姿勢を崩さないものの、開発用やテスト用のパーティションを移行することからクラウドの利用を開始しています。今後、ますます本番環境のデータがクラウドへ移行するとして、皆さんは検討段階で、すぐにHA/DRソリューションに対応させることができるでしょうか。
MaxavaのHAスイートの基盤はリモートジャーナル上に構築されたIBM iの論理レプリケーションであり、世界中で2000件以上の導入実績があります。
ハードウェアによるレプリケーションは一般的であり、クラウドの登場によって状況は刻々と変化しているものの、今もそれがHA(高可用性)の主流であることに変わりありません。
このため論理レプリケーションには、一種の「リンディ効果」(訳注:「長生きすればするほど、寿命がますます延びる」という法則)が生まれています。長く存在すればするほど、異なる時代やさまざまな環境に適応する柔軟性が生じ、さらに長く存在し続けるのです。
MaxavaのHAスイートは、クラウドへのマイグレーションに使用されるだけでなく、オンプレミスと同様にクラウド環境でも効率的に動作し、HAとDRの両方のオプションが利用できます。
1つのクラウドプロバイダーで全リソースを運用するリスクを最小化するために、複数のプロバイダーを利用して 本番機の領域とバックアップ機の領域を運用する、もしくはこれらのプロバイダーが展開する少なくとも2カ所以上の異なる地域の利用が推奨されます。
MaxavaのHAスイートは、この両方のシナリオに対応しています。
ほとんどのパブリッククラウド事業者は、4時間のSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を提供します。これは、自社のパーティションが存在する物理的なIBM Power Systemの復旧時間に関連します。
SLAはハードウェアの契約ですが、通常、クラウド事業者とIBMの間のハードウェアに関する同様の契約、さらにOSやライセンスプログラムのサポートに関するSWMA(IBMソフトウェア保守契約)の内容に準じています。
またクラウド事業者は通常、稼働時間の保証に加えて、稼働時間が事前に取り決めた時間数を下回った場合の金銭的補償を提供しています。
しかしハードウェアに障害が発生した場合、パーティションの復旧に要する時間は4時間のSLAではカバーされません。
またアプリケーションと障害発生時の状態に加え、アクセスパスの再構築や破損したオブジェクトの復旧なども考慮する必要があります。
さらに停電すると業務は停止し、停電が長引くほど企業の信用を損なう可能性があることにも注意すべきです。
クラウドが提供する優れた利点の1つは、代替ノードでパーティションを起動できることですが、この機能を検討している場合は、サードパーティ・ライセンスを管理しておく必要があります。IBM iソフトウェアのキーの多くはシリアル番号にリンクし、ノードを移動すると変更されてしまうためです。
このような課題を解決するために、クラウド事業者はパーティションの固定化(Pinning)を認め、常に同じノード(シリアル番号)でパーティションが起動することを保証していることが多いです。
この機能を利用する場合、クラウド事業者は対象リソースを他のユーザーに販売できないため、パーティションがアクティブか非アクティブかに関わらず、ユーザーへの課金が発生します。
また、クラウドでワークロードを実行する利点の1つも損なわれてしまいます。
クラウドへのマイグレーションでは、HA/DRの要件を再評価する機会が与えられます。そしてその最初のステップとして、RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)を常に検討しておく必要があります。
RTOとは簡単に言うと、事業継続の中断に伴う許容できない結果を回避するために、事業の中断や災害発生後にビジネスプロセスを復旧させるべき目標期間のことです。
またRPOとは、障害・災害発生時に、過去のどの時点まで遡ってデータを復旧させるかの目標値です。
アーキテクチャを設計する際には、RTO と RPOの双方の数値を現実的に管理することが不可欠であり、HA/DR に向けたサポートサービスやソフトウェアを導入する際も同様です。
Maxavaは、Power Cloud向けのソリューションを提供するMSP(マネージドサービスプロバイダー)と長きにわたり協業してきました。MSPによって提供されるHA、あるいはDRaaS(Disaster Recovery as a Service:災害復旧サービス)の一部として提供されるDR、そしてSkytapやIBM Power Vitual Serverを含むIBM Cloudといったパブリッククラウド向けにも、Maxavaはサービスを拡張し続けています。
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著者|アッシュ・ギディングス(Ash Giddings) 氏
Maxava
プロダクトマネージャー
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