キンドリルとマイクロソフトは11月12日、両社のグローバルな戦略的パートナーシップについて発表した。
両社は今後、Microsoft Azure(*)を利用するハイブリッドクラウドの普及で協力し、アプリケーションやプロセスの近代化、ミッションクリティカルなワークロード、モダンなUXなどで最先端のソリューションを提供する。注力する主な分野は、データの近代化とガバナンス、AIによる産業の革新、サイバーセキュリティとレジリエンシー、ミッションクリティカルなワークロードのクラウドへの移行、などとしている。
(*)ニュースリリースでは、Azureではなく「The Microsoft Cloud」と表現されている
キンドリルは今回のパートナーシップにおいて、「複雑なハイブリッドIT環境のためのアドバイザリー、導入、マネージドサービスをリードする」。
これによりキンドリルは、すべての産業分野で新たな市場と顧客を獲得することができ、両社に数十億ドルの収益機会をもたらす、としている。キンドリルにとってこの種の提携は、IBMからの独立後、初めて。
両社は今後、共同でイノベーションラボを設立し、Azure向けの新しいやソリューションの開発を進める。またマイクロソフトはキンドリルの社員向けに「Kyndryl University for Microsoft」を設立し、Azureに関する技術的な専門知識やスキルの向上を促すという。
サービスを拡大する自由を得た
キンドリルにとって今回の提携は、マネージド・インフラストラクチャ・サービスに関する知識・経験・技術力をコアに、ITサービスの全分野へ事業領域を拡大する戦略の「肝」となる提携である。同社がニュースリリースで、今回の提携を「画期的」(landmark)とするのは、その意味からだ。
同社は10月に開催した投資家向け説明会で、中期目標として、アプリケーション、セキュリティ、クラウド、データサービスの各分野でのシェアおよびプレゼンスを高め、アドバイザリー(コンサルティング)とインプリメンテーションサービスの売上を拡大することを示した。とくにクラウドに関しては、クラウド関連の資格保有者の全従業員に占める割合を、現在の20%から50%へ引き上げるとした。
これにより同社は、2024年の売上高を、IBMから分離した時点(190億ドル:2兆1600億円)の2.7倍にあたる510億ドル(5兆8300億円)とする事業計画を立てている。2021~2024年の年平均成長率(CAGR)は7%という高成長である。売上計画を示した下の図には、上部に「キンドリルは、ミッションクリティカルな専門知識を、より成長の速いサービスに拡大する自由を得た」、下部に「IBMから分離した初日に、1750億ドル(約20兆円)規模の新しい市場が開かれる」と記されている。
キンドリルは今後、ハイパースケール企業やISV、システム・インテグレーターなどとパートナーシップ契約を結び、「広範で統合されたITエコシステム」を構築する計画(前出の「事業計画図」参照)。キンドリルは今回のマイクロソフトとの提携によって、マネージド・インフラストラクチャ・サービスからトータルITサービス企業へと変身する道筋をつけたと言えそうである。
なお、キンドリルの日本における事業規模は約3500億円(2021年)、ITサービス企業の売上高ランキングでは6~8位あたりと推定される。
[i Magazine・IS magazine]