株式会社田中德兵衞商店
本 社:埼玉県川口市
設立:1871年
資本金:3000万円
従業員数:12名
事業内容:全国有名味噌・醤油・塩およびその他食料品の卸し・小売業
http://www.central-group.co.jp/miso/
セントラルグループ
本社:埼玉県川口市
設立:1951年
資本金:3億円
売上高:372億円(2017年12月)
従業員数:633名
事業内容:地元地域に密着した食・住・遊を柱とする快適生活創造企業グループの形成
http://www.central-group.co.jp/
田中德兵衞商店の創業は、豊富な穀物と良質な水に恵まれた川口の地で麦味噌の醸造を開始した明治4年。1960年には環境変化に即応して味噌およびその他の商品の卸し売業に転換する一方、自動車教習所の開設を契機に、地元に役立つことを心がけながら事業領域を拡大し、セントラルグループを形成するに至る。同グループは、BMWなどの正規ディーラーとして二輪・四輪の輸入車を販売するセントラル自動車技研(株)など、11社を擁する。
流通BMSやWeb-EDI に向け
新たなEDI環境の構築を目指す
田中德兵衞商店を母体に発展したセントラルグループのシステム開発・運用は現在、同グループに属するセントラル自動車技研の情報システム部が担っている。
グループ各社はそれぞれのニーズに応じてさまざまなシステム環境を構築しているが、現在は田中德兵衞商店およびセントラル自動車技研の2社がIBM i上で販売管理や顧客管理などのシステムを運用している。
グループ内で多種多様なシステム構築が進むなか、田中德兵衞商店は2018年5月、ファイル転送管理ソリューション「GoAnywhere」を利用して、新たなEDIデータ受信環境を構築した。その内容を詳しく見てみよう。
田中德兵衞商店では、電話やFax、EDI、あるいはWeb-EDIなど多様な手法で受発注データをやり取りしているが、数年前から以下の2つの課題に対応する必要が生じていた。1つは次世代EDIと呼ばれる流通BMSへの対応。もう1つは、2020年代にISDNサービス(INS回線)が終了するのに伴って必要とされるJCA手順からの移行である。
流通業界では現在、ISDNサービスの終了に加え、「多様なデータ形式に対応できない」「通信モデムが高額で、製造・販売も減少している」などの理由で、従来型EDIからインターネットをベースとする新しいEDIへの移行が進んでいる。
田中德兵衞商店、およびセントラル自動車技研の情報システム部では、この動きにどう対応するか、数年前からさまざまな角度で検討を重ねてきた。
導入検討を本格化する引き金になったのは、ある取引先が2018年6月を目標に流通BMSへ切り替える計画を立て、同社にその対応を求めてきたことであった。これに向け、2017年12月ごろから、ハードウェア保守やシステム開発などで以前から付き合いのあるソルパックの協力を得ながら、EDIへの対応手法を調査することになった。
「今後拡大するであろう流通BMS、そしてJCA手順からWeb-EDIやメール受発注への移行に対し、どういった手法やツールであれば、効率的・生産的に対応できるかを検討してきました。従来までは独自に開発した専用プログラムにより、基幹システムであるIBM iへ受注データを自動的に連動する仕組みが整っていました。そこで新しく導入する場合も、今までどおりに自動化処理を継続し、できるだけ手作業を排除した運用を実現したいと考えていました」と語るのは、セントラル自動車技研株式会社の情報システム部で同プロジェクトを担当した塚田悟朗氏である。
GoAnywhereの採用により
短期間・低コストの移行を実現
ソルパックはこの課題に対し、複数の手法で解決策を提案した。検討の結果、採用されたのがGoAnywhereを使った新たなEDI環境の構築である。
「GoAnywhereの最大の特徴は、プログラムレスの手法により、対応工数を最小化できることです。流通BMSへの対応はもちろん、パラメータの設定変更のみで、Web-EDIやメールから受発注データを受け取り、基幹システムへ自動で連携する仕組みを実現できる点に着目して、最終的に導入を決めました。他社からの提案も検討しましたが、ライセンスコストや開発工数などを比較すると、GoAnywhereのほうが圧倒的にパフォーマンスがよいと評価しました」(塚田氏)
無償トライアル期間で性能を確認し、導入が正式決定したのは2018年4月である。最初のプロジェクトは、前述したように、同年6月に予定されていたある取引先での流通BMS対応である。流通BMSの場合は、取引先のフォーマットに対応して個別にプログラムを開発する必要があるので、ソルパックがその開発を担当した。
開発期間は約2カ月。流通BMSが採用している通信プロトコルの1つであるJX手順で対応した。流通BMS用サーバーでの送受信、およびそのスケジュールもすべてGoAnywhereで実行・管理している。
さらにその後、同年11月までの5カ月間で、JCA手順からWeb-EDIやメール受発注へ移行する3社の取引先に対応した。ここではWeb-EDIとメール用に、IBM i側で共通化させたデータ受け取り用プログラムをソルパックが作成している。この共通プログラムにより、Web-EDIやメールについては、GoAnywhereの設定変更だけで、新たにプログラムを作成することなく新規先へ対応できる。
プログラム作成が不要なため、新規対応時も短時間でのサービスインが可能。実際、JCA手順から移行した3件目の取引先に対しては、わずか1週間でサービスインを実現したという。
またメールの場合は共通プログラムの仕組みに加え、あらかじめスケジュール設定し、フォルダに入った受注データをIBM iの基幹システムに送信して、受注ファイルを自動更新する。JCA時代の自動化処理をほぼそのまま実現しているわけだ。
現在も、JCA手順でEDIを実施している取引先は多い。
「今後、取引先が流通BMSあるいはWeb-EDIやメールへ移行する場合も、今回の方法で対応することを考えています。とくにWeb-EDIやメールへの移行時は共通プログラムを利用できるので、低コストかつ短期間でのサービスインが期待できます」(塚田氏)
ISDNサービス終了に対処するために、そして流通BMSという新たなスタンダードに向けて、流通EDIは進化が求められている。同グループはその対応をすでに完了させたようだ。
[i Magazine 2019 Spring掲載]