日本総研は9月30日、「生成AIを活用したシステム開発の現状と展望」と題する調査研究レポートを発表した。
システム開発に生成AIを適用する取り組みがIBM i分野でも広がりつつあるが、今回のレポートは、このテーマに関する市場の動向を幅広く整理し、今後のシステム開発がどのように変化していくかを考察したもの。急速に変化しつつある市場の動向を目配せよくコンパクトにまとめている。
レポートは、次の4章で構成されている。
第1章 システム開発における生成 AI 活用 ~ユースケースと生成 AI サービス
第2章 システム開発における生成 AI 活用の各社動向
第3章 関連する研究動向
第4章 最新の動向を踏まえた今後の展望
第1章では、生成AIがシステム開発においてどのような場面で活用できるかを述べ、ユースケースに対応した「汎用的な生成AI」(ChatGPT、Geminiなど)や「エンジニアアシスタント型生成AI」(GitHub Copilot, Cursorなど)を紹介している。
この章のポイントとして、以下を挙げている。
• ChatGPTなどの汎用的な生成 AI はシステム開発の全工程で役立つ。
• GitHub Copilotなどのツールは、エンジニアのコーディング作業の効率化に役立つ。
• テスト自動化、SQL生成、脆弱性対応などのエンジニア特有の業務やプロジェクト管理に特化して効率化を支援するツールも存在する。
• クラウドベンダーが提供する生成AIサービスにより、開発プラットフォームが強化されつつある。
第2章では、ITベンダーやSIerでの事例を中心に、各企業におけるシステム開発領域での生成AI活用の動向について述べている。
紹介されているITベンダー/SIerは、IBM、NTTデータ、NEC、富士通、日立製作所、サイバーエージェント、LINEヤフーなど。
この章のポイントは以下のとおりである。
• ITベンダー・SIerでは、上流工程も含めた開発の全工程で効率化を試みる取り組みや、モダナイゼーションに利用する取り組み、開発ガイドラインや独自ツールの整備の取り組みなどがある。
• 信頼性の高いシステムが求められる金融業界でも、日本での事例は少ないが、システム開発に生成AIを活用し始めている。海外ではGitHub Copilotをエンジニア向けに取り入れて、開発の効率化を試みる取り組みが存在する。
• そのほかに、生成AIを活用してコーディング業務や内製開発を効率化した企業がある。
第3章では、研究機関・アカデミアにおける研究事例について述べている。
紹介されている研究事例は、以下のとおり。
◎コード自動生成の研究動向
・Finetuning を用いたコード生成例:AlphaCode
・プロンプトとRAGによるコード生成例:AceCoder
・LLMによるコードのパフォーマンス最適化の研究例
・セキュリティ面で安全なコード生成に関する研究例
◎テスト自動生成の研究動向
・単体テスト自動生成の研究例:ChatUniTest
・GUIテストツールの研究例:GPTDroid
◎要件定義フェーズにおけるLLM 活用の研究動向
・LLMを活用した要件定義の研究例
・自律的な要件定義を行うLLMエージェントの研究例
◎保守・運用フェーズにおけるLLM 活用の研究動向
・既存コードのバグ修正の研究例:ChatRepair
・セキュリティリスク対応の研究例
・自律的なソフトウェア改善の研究例:AutoCodeRover
◎AIエージェントによる自律的なシステム開発の研究動向
・ソフトウェア開発エージェントの研究例:MetaGPT
・AIソフトウェアエンジニア: Devin AI
この章のポイントは以下のとおりである。
• コーディング支援やテスト自動化に関する研究が多い。
• システムの要件定義や保守運用に関する研究も出てきている。
• LLMエージェントを用いて自律的にシステム開発を行う研究も出てきており、今後に期待がかかる。
第4章では、生成AIによってシステム開発がどのように変化していくかを考察している。
この章では、生成AIの進化により次のような変化が生じる、とまとめている。
• 短期的変化:人間とAIの協調による開発効率化
• 中期的変化:AI導入が前提となるシステム開発手法の確立
• 長期的変化:システム内製化のハードルが下がることによるIT業界のビジネス構造の変革
また、「生成AI活用におけるリスクと対策」として、ハルシネーションによる誤情報
出力、機密情報流出、著作権やライセンスの侵害、の3点について事例と今後の対策について見解を述べている。
・日本総研「生成AIを活用したシステム開発の現状と展望」
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=108813
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