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IBM iを中心にしたシステム構成から、データ連携が主役の将来構想へ |株式会社JRC

株式会社JRC

本社:大阪府大阪市
創業:1961年
設立:1965年
資本金:8000万円
事業内容:コンベヤ部品の設計・製造・販売、ロボットを活用した自動設備などの設計・製造・販売
https://www.jrcnet.co.jp/

IBM iの継続か、ERPへの移行か
二者択一の選択に悩む

JRCは1994年にIBM i(当時のAS/400)を導入し、生産管理および販売管理を軸とした基幹システムを自社開発型で構築した。当初はRPG Ⅲで開発し、2011年からは「Delphi/400」(ミガロ.)を使って生産管理系を中心にGUI画面へ移行させている。そんな同社が、「JRCにとってのDXとは何か」を考え始めたのは2019年のことである。

「当社のシステム環境は信頼性の高いIBM iにすべてのデータを格納することを前提に、システムを設計してきました。IBM iの中でデータが完結し、安全性が高く、取り扱いも容易でしたが、昨今はクラウドサービスや製造IoTの導入もあり、全データをIBM iに取り込む設計が難しくなりつつありました。このことが、システムの柔軟性や拡張性を阻害していると感じ始めました」と、経営企画室の山口尚之室長は語る。

山口 尚之 氏

 

経営企画室
室長

 

これに加えて、IBM i開発者の高齢化問題も指摘されていた。IT部門に相当する経営企画室には7名のシステム担当者が所属するが、そのうちRPGで開発が可能な人員は2名。1名は定年が視野に入り始めた年代で、若手技術者をIBM i向けに教育するのも現実的には難しかった。

「IBM i=レガシー」というイメージが濃厚で、IBM iを使っている限り、DXは実現不可能という極端な意見も聞かれたという。「IBM iの継続か、ERPへの移行か」という二者択一に悩むなか、結論から言うと、同社はIBM iの継続を決め、2021年にPower Systemsをリプレースしている。

「現時点ではハードウェアのスペック面、セキュリティ、運用性、保守ノウハウのいずれから見ても、IBM iは最も安全で親和性の高い環境であると判断しました。ただしIBM iにメリットがあれば継続するが、メリットがなければ撤退する。IBM iから動けないから、仕方なく継続するのではなく、IBM iに縛られないシステム構成を目指し、次のリプレース時期となる2028年には、その時に最適と判断したシステムへスムーズに移行できる環境を整備しようと決断しました」と、経営企画室の長村恵資課長代理は指摘する。

そしてIBM iの運用ノウハウを維持しつつ、DXを実現する手段として注目したのがデータ連携ツールであった。

長村 恵資 氏

経営企画室
課長代理

 

多様な連携手法に対応できる
「GoAnywhere」を選択 

IBM iの継続方針を受け、同社ではIT環境の将来構想を描き出した。 

そこでは今までのようにIBM iを中心に置くのではなく、データ分析基盤であるDWH やクラウドサービス、Webサーバー、その他の周辺システムと同じように、IBM iを数ある構成要素の1つとして捉える。そして「GoAnywhere MFT」(ソルパック。以下、GoAnywhere)で各システムを連携するという考え方に変更したのである。

これまではCSVであったり、FTPであったり、自作のプログラムで作り込んだり、アプリケーションやサービス側で用意されたインターフェースを利用したりと、連携手法は多種多様であった。そのため連携プログラムを作り込むのに時間を要し、また連携手法がシステムごとに異なるため、保守作業も煩雑であったという。

「しかしGoAnywhereであれば、多彩な連携に対応できます。GoAnywhereが一種の緩衝材の役割を果たして、連携手法の違いを吸収してくれるので、連携できることが当たり前になり、『より効率的に連携するにはどうすればよいか』という部分から検討を始められます。GoAnywhereを得て、将来の構想案が一気に広がったように思います」(山口氏)

DXの考え方を受けて、具体的なシステム刷新プロジェクトがスタートしたのは、2021年11月のことである。最初の対象となったのは、Web EDIの刷新であった。それまでもWeb EDIは稼働していたが、使い勝手や機能について現場からも顧客からも、多くの改善要望が寄せられていた。

そこで、まず2023年6月を目標にインターフェース面の改良を進め、さらに2024年の本稼働を前提に基幹システムの中核である受発注システムの刷新を目指すことになった。

受発注システムは新たにオープン系サーバーで稼働するWeb型のパッケージ製品を採用。約半年でフィット&ギャップを実施し、その後の約1年半をかけてカスタマイズ開発する。そしてIBM iはDb2 for iを活かして、データベースサーバーとして継続することになった。IBM iからビジネスロジックを切り離し、安定的で高速なデータベースマシンとして運用するわけである。

同社ではWeb EDIの刷新に先立って、ユーザーとなる顧客に、使い勝手に関するヒアリング調査を実施した。そのなかで多かったのは、受発注データを自社システムに連携させたいという要望である。ただし連携手法は顧客によってさまざま。将来的にはAPI連携が主流になると思われたが、自社でAPI連携の環境を用意できるケースも少ない。現実的には、CSV連携を望む声が最も多かったという。

GoAnywhereは、このヒアリングから連携要件を導き出すなかで導入が決定した。

「多様な手法をサポートしていることが選定時の要件でした。当初は代表的なEAIツールを検討しましたが、ライセンスコストが予算に合わず、いろいろと探すなかでGoAnywhereに出会いました。GoAny
whereであれば、将来的なAPI連携を視野に入れつつ、お客様から要望の多かったCSV連携、あるいはDB連携などにも対応できます」(長村氏)

GoAnywhereの正式契約は2022年8月。現在は社内の改善要望に応える形でGo
Anywhereを活用し、連携手法への理解を深めようとしている。

たとえば最初に着手したのは、マスター保守の効率化を目的に、GoAnywhereのAPI連携を活用することである。定期的に顧客関連のマスターデータを更新しているが、フィールド単位ごとに変更していくので、修正量が多いと時間のかかる煩雑な作業となる。

そこでExcel上に条件を指定し、ボタンを押すと、GoAnywhereでAPIが起動。IBM iから必要データを取得してExcelに添付し、それを使って一気にDb2 for iのマスターを更新する仕組みを作成した。承認フローを組み合わせれば、各部門のユーザーがExcelを使って必要なマスター更新を実行できるようになる。

IBM iをデータソースの1つに位置づけた新しいシステム環境が動き出すのは、少なくとも2年ほど先になる。それまで同社では連携手法への知見を深めながら、DWHの選定やクラウドサービスの利用拡大など、1歩ずつDXを推進していく。

GoAnywhereを中心とするシステムの将来構想

[i Magazine 2022 Autumn(2022年11月)掲載]