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DXの核となるデータ分析力をPHPQUERYによりレベルアップ ~商品センターの開設を機に、IBM iを新規導入して在庫管理システムを一新|株式会社ユーケイデンタル

株式会社ユーケイデンタル

本社:熊本県熊本市
創業:1919年
資本金:4000万円
売上高:89億円(2022年4月)
従業員数:158名(2022年4月)
事業内容:歯科医療・歯科技工用機械、器具、器材、薬品の販売など
http://www.ukdental.co.jp/

創業から100年以上の歴史を誇るユーケイデンタルは熊本県に本拠地を構える歯科器材の総合商社として、歯科医療に必要なあらゆる商品を取り扱っている。福岡、久留米、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の7カ所に営業拠点を展開し、商品の提供からアフターフォローまでのフルサービスを九州全域の歯科医院や歯科技工所に提供している。また最近では、歯科医院経営に必要な1日当たりの患者予測数のシミュレーションをベースに、開業場所やスタッフ獲得、機器・機材、集患、資金調達など開業支援に向けたコンサルティングも展開している。

各拠点の物流業務を
新・商品センターに統合

ユーケイデンタルは2020年10月に全拠点の物流業務を統合した新しい商品センターを熊本市に開設した。敷地面積450坪を擁するこの商品センターは、九州全域に商品を供給する同社物流の中核拠点として機能している。

同社はそれまで国産メーカーのオフコンを40年近く利用して基幹システムを運用していた。しかし商品センターの開設に際しては、新たな在庫管理システムを構築する必要があり、Power SystemsとIBM iへの移行を決定した。

国産メーカーのオフコン提供が完全にクラウド型へ切り替わること、そして基幹システムそのものが老朽化して、新たな業務要件への対応が難しくなっていたなどの理由もあり、IBM i上で販売管理・在庫管理を中心にした新たな基幹システムの新規構築を決めたのである。

システム開発は、東京に本社を置く株式会社マルチタスクに委託した。マルチタスクはIBM iをベースにした歯科業界向けのシステム導入やコンサルティングに実績がある。今回もマルチタスクがILE RPGで開発した歯科業界向けの販売物流管理ソリューションを、ユーケイデンタルの業務特性に沿ってカスタマイズする形で構築を完了させた。

IBM iの導入決定は2019年初頭。1カ月程度の要件定義からスタートし、約1年の開発期間を経て、2020年4月に新システムが本稼働している。

情報システム課の楠元康之主任は、IBM iが本稼働したのとほぼ同じ時期に入社した。医療関係を専門とするSEであったが、同社に転職してからは、IBM iをはじめとするIT環境の開発・運用・保守を担当している。最近は課員が1名増員され、2名のスタッフで基幹システムからネットワークなどのインフラ系、オープン系アプリケーションなど全般を担っている。

「IBM i上の新システムは、以前と比べると機能レベルが大幅に向上し、新しい業務要件に対応する自由度も格段に高くなりました。欠品率は大幅に低下し、在庫管理の精度も向上するなど、ユーザーからは新システムを評価する声が届いています」(楠元氏)

楠元 康之氏

本稼働から約2年、安定的な運用が続いていた2022年夏ごろ、営業部門の責任者から楠元氏のもとへ、営業支援ツールの導入に関する相談が寄せられるようになった。

昨今DXの必要性が話題になるなか、同社もその根幹とも呼ぶべきデータ分析のスキルを高めたいと考えている。人気のあるSFA/CRMソリューションを検討したところ、運用コストが非常に高く、費用対効果が合わない。営業部門の責任者はツールの導入に前向きであったが、コストパフォーマンスのほかにもいくつかの懸念事項があった。

それまでは、国産オフコン時代と同じく、楠元氏がIBM i上でVBAによりプログラムを組み、SQLにより基幹データを抽出して実績管理に利用していた。

しかし今後は何らかのBIツールを利用して、データ分析力を高めたい。それに最適なツールは何か。楠元氏がこの課題をマルチタスクに相談したところ、推奨されたのがIBM i向けデータ抽出・加工・配布の自動化ツールである「PHPQUERY」(オムニサイエンス)であった。

今後はエンドユーザー自身の手で
クエリー定義を作成できるように

「PHPQUERYであれば、当初検討していたSFA/CRMソリューションの約10分の1のコストで、簡単にデータ分析やグラフダッシュボードの作成が可能だとわかりました。シンプルな操作なので、将来的には情報システム課が支援することなく、エンドユーザーが自身の手でクエリー定義を作成できるだろうとも考えました」(楠元氏)

2022年8月に検討を開始し、9月に1カ月間の無償トライアルを実施、10月に正式契約と、導入はスピーディに進んでいったようだ。

導入後は試験導入期間として、導入の発案者である営業部門の責任者、および総務部の2名の担当者の合計3名が、日常業務によく使用する6種類のクエリー定義の運用を開始した。

IBM i導入後の約2年半で、楠元氏はVBAにより約200本程度のプログラムを作成していたが、まず第1弾としてその中から、7〜8万点におよぶ広範なアイテムに対する、商品分類別・顧客別・担当者別による実績管理をメインに、使用頻度の高い約20種類の定義を選んで、PHPQUERYへ移行する予定である。

同社では商品課・営業課を中心に、社員の約90%程度がPHPQUERYの利用ユーザーになると見込んでおり、2023年秋までには、現在利用しているVBAのプログラムを廃止。すべてPHPQUERYに移行して、ほぼ全社員が利用を開始する予定である。

楠元氏は以前の職場でPHPやSQLによる開発経験があるので、当面はSQLによる直接記述でクエリーを定義していく計画だ。しかし今後は当初の狙いどおり、比較的シンプルなクエリーを中心に、ユーザーが自身の手で定義できるように教育していきたいと考えている。

図表1 PHPQUERY ① SQLによる直接記述でクエリーを定義
図表2 PHPQUERY ② ダッシュボード画面

[i Magazine 2023 Winter(2023年2月)掲載]