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GUI画面の拡大と専用帳票からの脱却を柱にIBM iのモダナイゼーションを推進 ~「UT/400-iPDC」により請求書・納品書をPDF化し、業務の効率化とドットプリンタ廃止を実現 |日綜産業株式会社

 

日綜産業株式会社
本社:東京都中央区
設立:1968年
資本金:17億9134万円
売上高:298億円(2021年度)
従業員数:343名(グループ合計 541名)
概要:建築・土木・造船・プラントなどの建設用仮設機材の開発、設計、製造、販売、レンタルおよび建設工事の請負
https://www.nisso-sangyo.co.jp/

「足場」を中心とする仮設機材のメーカーとして創業。仮設業界のリーディングカンパニーとして、豊富な製品ラインナップとエンジニアリング力を武器に、建設資材や土木資材、法面関連で使う足場資材などを幅広く取り扱う。安全な仮設機材の提供や安全管理検査の実施を推進し、創業以来50年間死亡災害ゼロを誇っている。

今後も長く使い続けるために
基幹再構築をスタート

日綜産業がIBM i(当時のAS/400)を導入したのは1992年。それ以来、30年以上にわたりIBM i上で基幹システムの運用を続けている。

同社が構築・運用するのは、売上・請求、発注、仕入、買掛、出荷、返却、検収の各管理システム、および得意先管理や現場管理、製造系の各システムである。

業務の特性上、パッケージ製品の導入が難しい同社では、当初から独自に基幹システムを開発してきた。最初は同社と日本IBM、外部の協力会社がチームを組んで、RPG Ⅲにより構築し、それ以降は基本的に開発・運用およびアプリケーション保守を社内で実施してきた。

管理本部のIT戦略推進室は現在、室長である寒河江幸喜氏を含めて5名のスタッフが所属する。そのうち開発者は4名(うち1名は嘱託社員)。年を追うごとに増大する開発・運用業務に対応するため、7年ほど前からは北海道オフィス・システム(以下、HOS)をパートナーに迎えた。それ以降、新規開発や一部のアプリケーション保守などを委託している。

HOSの親会社である片桐機械株式会社が日綜産業と同業であることから、業務的課題への理解が深く、今やHOSが日綜産業で発生するさまざまな開発案件の提案・開発やプロジェクトマネージャーとしての役割を担っているという。

日綜産業で、ビジネス環境の変化や新規事業への迅速な対応を目指して、基幹システムの再構築プロジェクトが立ち上がったのは2017年である。

基幹システムのコア部分は現状を維持するが、新規開発は原則的にILE RPGと「Delphi/400」(ミガロ.)で行い、開発が発生するたびに関連する既存プログラムをRPG ⅢからILE RPGへコンバージョンしている。

再構築の柱となるのは、5250画面やドットプリンタによる専用伝票の印刷および手書きの廃止である。黒画面ではなくGUI画面の利用を拡大し、タブレットなどの新規デバイスを現場業務で活用する。そしてスプールファイルからPDFを生成し、ドットプリンタではなくオフィスプリンタでの印刷を可能にするなど、段階的にIBM iのモダナイゼーションを進め、今後も長期にわたりIBM iを運用していくためのプロジェクトである。

ビジネスロジックはILE RPGで開発する一方、GUI画面の作成と現場業務で利用するフロントエンドアプリケーションの開発には、Delphi/400を採用する。そしてドットプリンタによる専用帳票印刷からの脱却には、IBM iのスプールファイルからPDFを生成する「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)を選択した。

今後はすべてのスプールファイルを
順次PDFへ

「2020年春に、ある事業部でスマートデバイスを活用し、現場で出荷指示書を確認するシステムを構築したのですが、その際タブレット端末からA4カット紙への出力ができるようにUT/400-iPDCを採用したのが、導入のきっかけでした。UT/400-iPDCであれば、出力量の多い請求書や納品書をはじめ、社内でさまざまに活用している帳票類のPDF化を推進できると考え、全社展開を念頭にUT/400-iPDCの導入を決定しました」と、寒河江氏は語る。

寒河江 幸喜氏

同社では地方の各事業所に合計80台近いドットプリンタを導入し、請求書・納品書を発送していたが、10年ほど前からは東日本と西日本の2カ所に設置したプロフィットセンターに発送業務を集約した。

ここではドットプリンタから出力される3種類の請求書が、3つの分厚い束になる。各プロフィットセンターの業務担当者たちは、そこから顧客先ごとに送付物を抜き出してまとめ、封入・封かん作業を行う。

この作業が以下のように刷新された。

まず、スプールファイルを仕分け・結合する「UT/400-SPA」(アイエステクノポート)を使用して、請求書を顧客ごと・種類ごとに並び替える。そしてUT/400-iPDCにより、そのスプールファイルからPDFを作成する。さらにキヤノン製のオフィス複合機にIBM iからダイレクトに印刷するためのオプション「UT/400-iPDC ダイレクト印刷オプション for Canon」を利用している。

これにより、ドットプリンタによる専用帳票の印刷を廃止すると同時に、顧客ごとに請求書を手作業で仕分けする煩雑な作業からも解放された。

「お客様ごとに請求書を仕分けるのは、大変に神経を使う作業です。時間的な工数削減はもちろんですが、『絶対に宛先を間違えてはいけない』と思いながら作業する担当者たちから、今回の導入は好評を得ています。UT/400-SPAにより、RPGプログラムの改修も最小限に済んだので、開発工数の短縮にも効果がありました」(寒河江氏)

UT/400-iPDCによる3種類の請求書の設計作業は、主に寒河江氏が担当した。請求書はその後、指定請求書で印刷する必要のあるごく少数の請求書を除いて、ドットプリンタの利用は廃止されているようだ。

「スプールファイルのPDF化に成功したことで、今後は今までとは異なる利用シーンがいろいろと考えられます」と、寒河江氏は指摘する。

たとえば営業が担当する顧客への請求書の確認や再発送などに活用するため、いったんPDF化された請求書は各個人のフォルダに自動的に格納されるようになっている。PDF格納時に、部署や日付、担当者・顧客コードなどを含めたファイル名を自動的に採番するので、PDFのファイル名を見ただけで、担当者は必要な請求書を選んで自分のPCで確認できる。

図表 基幹再構築の考え方

最初は請求書・納品書からのスタートであったが、各部門ではさまざまな帳票が印刷されており、PDF化の領域はさらに広がりそうだ。たとえば製造部の利用する原価集計表などもPDF化が完了し、オフィスプリンタでの印刷が実現している。

ペーパーレス化の推進力として、またIBM iのモダナイゼーションを進める中核ツールの1つとして、UT/400-iPDCの活用はさらに広がることになりそうだ。今後はすべてのスプールファイルをUT/400-iPDCにより順次、PDF化していく予定である。

 

[i Magazine 2023 Autumn(2023年12月)掲載]