日信電子サービス株式会社
本 社:東京都墨田区
設 立:1967年
資本金:4億8000万円
売上高:連結:202億円、単体:141億円(2021年3月期)
従業員数:連結:891名
単体:576名(2021年3月)
事業内容: 高度医療機器や駐車場関連機器等の販売およびメンテナンス、駅務機器やコインロッカー、道路交通システム、鉄道保安システムのメンテナンス、ITシステムのトータルサポートなど
http://www.open-nes.co.jp/
信号機のトップメーカーである日本信号の子会社であり、創業以来、半世紀近くにわたり、電気・電子機器のメンテナンスサービス専門企業として成長してきた。現在は自動改札機や自動券売機などの駅務システム、画像診断システムなどの高度医療機器、交通信号や交通管制システムなどの交通システム、コインパーキングなどの駐車場機器などの保守サービス、およびITシステムのトータルサポートを全国規模で展開している。
2021年4月に
新体制でDX開発センター発足
日信電子サービスは長年にわたり、IBM i上で基幹システムを運用してきた。もともとは4GLツールを使って基幹システムを構築していたが、2013年に新たな開発ツールとして「LANSA」を採用し、全面的な刷新に着手した。
LANSAは2001年から販売管理・在庫管理システムを構築してきた経緯があり、その経験と技術の蓄積を活かして新システムの開発基盤としての採用を決めたという。販売管理や在庫管理をはじめ、駅務システムの保守支援システムや駐車場保守管理システム、交通保守支援システム、勤務報告・経費精算システムなど、基幹システムの中核部分がLANSAで構築されている。
また、同じLANSAのファミリー製品である「LongRange」を利用して、交通信号の保守点検業務をiPadで実施するモバイルアプリケーションの開発にも取り組んできた。このほかRPAにより業務の自動化を図るなど、業務改善に積極的に新しい技術を取り入れている。
その推進部隊であった経営情報システム部は2021年4月、DX開発センターという新たな組織としてスタートを切った。もともとの経営情報システム部は5名の人員を擁していたが、そこに事業開発部から3名、その他の事業部門から5名が加わり、総勢13名の体制で新たなチャレンジに取り組んでいる。
DX開発センターはその名のとおり、同社のDXを追求し、具現化していく部門である。経営トップの意向を受け、社長直轄の部門として組織化された。
DX開発センターを率いる番場修治センター長によれば、「システム開発・導入・運用・保守という従来の業務に加え、『ITを使って新しいビジネスを開発する』というミッションを担っています。そこでITに精通した経営情報システム部の人員に加えて、今まで事業開発に取り組んできたスタッフや、業務ノウハウに詳しい現場部門のスタッフなどを加えた混成部隊として組織化しました」
初めに、同センターが取り組むべき今後のフォーカステーマを議論し、今まで着手していない新しい事業を開発する「新規ビジネスの開発」、これまでの顧客とのつながりのなかで新たな商材や機能強化を考えていく「既存ビジネスの開発・拡張」、そして社内外を問わずビジネスプロセスの改善を追求していく「業務改革」という3つの重点テーマを決定した。
さらに2021年8月、発足してから約4カ月を費やして提案された約20に及ぶ開発テーマのなかから、6つのフォーカスプロジェクトに絞り込んだ。すなわち、(1)ロボティクス関連ビジネス、(2)包括医療ビジネス、(3)AIカメラ対応ソリューション、(4)電子決済サービス、(5)ビジネスプロセス改革、(6)日本信号グループ共通ネットワークの構築、である。
グループ全体のテーマである(6)以外は、それぞれにプロジェクトマネージャーを据えて、8月以降は現場部門などとのヒアリングを重ねつつ、情報収集を加速化させ、具体化に向けて急ピッチで作業を続けている。
ビジネスプロセス改革
DXの新しい視点で
前述した6つのプロジェクトのなかで、最も進展を見せているのが、(5)ビジネスプロセス改革である。実際には4月以前、経営情報システム部の時代から検討してきた案件なのだが、DX開発センターの発足とともに、新しい視点での要素を加えることになった。
「このビジネスプロセス改革プロジェクトには現在、2つの柱があります。1つは売上として基幹システムに計上される前段階の業務プロセスをシステム化することです。具体的には見積もりや受注業務を全拠点で一元管理し、現行の販売管理システムへ連携させる仕組みで、『案件管理システム』と、仮称しています。もう1つはワークフロー&ペーパレスで、これは経理部を中心に請求書や納品書のペーパレス化を目指します」と語るのは、ビジネスプロセス改革プロジェクトでプロジェクトマネージャーを務める小野田好浩氏である。
現在、見積もりや受注管理は全国の各拠点がExcelやFile Makerなど、それぞれの裁量でツールを利用しながら独自のやり方で実施している。案件管理システムはこれらを標準化・統合化し、販売管理システムへ連携させることに狙いがある。
「案件とはなにか」という共通認識の醸成から始めて、要件を詰めている段階にあり、今後はIBM i上で実現するか、あるいはオープン系サーバーで運用するかなどを含めて、実現手法を検討していく計画である。
「LANSAを使った既存システムの追加開発や改修など、これまでの開発・保守作業に加えて、ビジネスプロセス改革を推進するわけですが、既存システムの延長線に置くのではなく、DXという新しい視点でプロジェクトに取り組むように心がけています」と、DX開発センターの芥川格氏は語る。
「IBM iについては信頼性に優れ、運用管理に手をとられない安定的なプラットフォームであると高く評価しています。今後もLANSAを使って基幹システムに関する多様なニーズを吸収し、機能を強化していけると考えています。ただしIBM iは全体から見れば構成要素の1つであり、今後はIBM iだけでなく、オープン系の基盤技術、AIやIoTなどの新技術の習得、クラウドサービスの利用スキルに加え、新しいビジネスを開発していく発想力などを含めて、新たな人材の育成に取り組んでいく予定です」と、番場氏は指摘する。
DX開発センターの小林奈穂美氏は、ITベンダーでの約7年間のSE経験を経て、昨年途中入社でメンバーになった。
「それ以前はOracleやSQLをメインにした開発に従事していましたが、入社後はすぐにLANSAの言語を学習し、既存システムの改修や保守に携わっています。これまでのオープン系開発での経験を活かしながら、DXで求められる多様なニーズに対応していきたいと思います」(小林氏)
番場氏は今後、経営情報システム部に在籍していたメンバーに限らず、DX開発センターの全員に対して広く、システム開発力やRPAによるボット作成スキルなどの習得を奨励していくという。
「最も重要なのは、『システムを開発する』のではなく、『新しいビジネスを開発する』という当センターのミッションへの理解を浸透させ、それに沿った能力を育てていくことだと考えています」(番場氏)
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