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IBM iの基幹データをAPIでAIシステムへ連携 ~「API-Bridge」を採用し、APIの開発工数を最小化 |日本ハム株式会社&日本ハムシステムソリューションズ株式会社

日本ハム株式会社

本社:大阪府大阪市
設立:1949年
資本金:362億9400万円(2022年3月末)
売上高:7753億5400万円(単体)、1兆1743億8900万円(連結)(2022年3月期)
従業員数:2239名(単体)、2万7649人(グループ合計)(2022年3月)
事業内容:食品の製造・販売 等
https://www.nipponham.co.jp/

1949年の創業以来、ハム・ソーセージの製造販売から始まったニッポンハムグループの事業領域は、現在では食肉をはじめ、加工食品、水産品、乳製品、天然系調味料など、食に関するあらゆる分野へと広がっている。

日本ハムシステムソリューションズ株式会社

本社:大阪府大阪市
設立:1985年
資本金:1000万円
売上高:59億4700万円(2022年3月末)
従業員数:186名(2022年4月)
事業内容:日本ハムグループ各社へのIT支援サービス
https://www.nh-ss.co.jp/

日本ハム100%出資のシステム子会社として、日本ハムグループの情報化を支援する。日本ハムが展開する各事業に精通しながら、システムの企画・開発・運用・保守に従事。また基幹システムの統合・再構築、グループ全体のネットワーク構築、スマートワーク環境構築などを支援している。

IBM iの基幹データを
AIシステムへ連携する

日本ハムシステムソリューションズのITサービス事業部 加工事業サービス部は、ハムやソーセージをはじめ、各種の調理加工品を製造・販売する日本ハムの加工事業本部を対象にIT利用を支援し、在庫・物流・販売管理などの基幹システムに関する企画・開発・保守・運用を担っている。

その加工事業サービス部が、日本ハムで進行中のAIプロジェクトに参画したのは、2021年7月のことであった。

日本ハムでは、2021年からスタートした「中期経営計画2023」の中で、機能戦略の1つにDXへの取り組みを位置付けている。デジタルを活用したビジネスモデルへの変革と収益力向上を目標に、「グループ基幹システムの統合・再構築」「ビッグデータ、AIの活用」「モバイル/クラウドファースト」を実現していく。

そしてこれにより、DXを活用した既存事業の効率化・生産性の向上および新規事業の立ち上げを加速し、10年後には食のサービス・顧客価値に関して、デジタルを通じた新しいビジネスモデルを目指す。

これに沿って、AIを活用した取り組みがすでにいくつも進行している。日本ハムの加工事業本部が取り組んでいるAIによる在庫引当システムもその1つである。

これはIBM i上で稼働する在庫管理システムである「LINQS」で、ベテラン担当者が経験を交えながら実行している引当・欠品割り当ての機能をAIで最適化し、業務の効率化と標準化および引当精度の向上を目指すプロジェクトである。すでに2021年上半期からPoCが進められ、2021年7月からはパイロット導入に着手した。

LINQSとAIシステムの間は、DXプラットフォーム(SAP BTP)を経由して、自動的かつリアルタイムに連携する。AIが最適値の算出に必要とする在庫情報や販売計画、欠品割当、納品限度などの基幹データ(マスターデータ)は、LINQSからDXプラットフォーム経由でAIシステムへ連携。そして引当処理の結果は、リアルタイムかつ同期的にLINQSへフィードバックし、物流センター側で従来よりはるかに精度の高い引当を実行する仕組みである。

日本ハムシステムソリューションズの加工事業サービス部は、このプロジェクトでLINQSとAIシステムの連携部分の開発を担うことになった。パイロット段階では両者をFTPで連携していたが、実運用ではリアルタイム性を重視して、API連携を採用することになり、加工事業サービス部では2021年7月から早速、両者を連携するインターフェース手法の検討に入った。

「API-Bridge」を採用し
APIの開発工数を最小化

「API連携を実現する手法については、主に2つを検討しました。1つはIBM iのOS機能を活用してネイティブにRest APIを作成する方法。もう1つは、オムニサイエンスが提供するIBM iのAPI連携ツールである『API-Bridge』を活用する方法です」と、日本ハムシステムソリューションズの川瀬裕一郎グループリーダー(ITサービス事業部 加工事業サービス部 加工物流SCMグループ)は、検討の経緯を語る。

川瀬 裕一郎氏

検討を開始したのは2021年7月。物流センターでの最初の稼働目標は2022年3月であり、AIシステム側との結合テストやパフォーマンステストなどを考えると、API連携の実質的な開発期間は3カ月程度になる。この短期間で初めてのAPI連携を実現するには、ツールを使うほうが効率的との判断が働いたようだ。

在庫管理システムであるLINQSは、生鮮品・食材管理向けの物流ソリューションである「Cool/400」をベースにしている。その開発元である共栄情報システムが実際のAPI開発作業を担当するので、同社とともに概算の開発見積もりを算出したところ、OS機能を使ったネイティブ開発では約6人月、API-Bridgeを利用した場合は約4人月という結果を得た。

OSネイティブと比較した開発生産性の高さに加え、今後はIBM iと周辺システムや外部システムとのAPI連携が増えると想定されたため、同社ではAPI-Bridgeの採用を決定した。2021年10月のことである。

開発がスタートしたのは、同年12月。AIシステム側に連携する基幹データの種類を特定し、連携データをJSONフォーマットに変換して、API-BridgeによりAPIを作成するという一連の作業は予定どおり3カ月で完了した。

「最初にAPI-Bridgeを検討した際、当社の連携要件と合致しない点がいくつか見受けられたので、オムニサイエンスに機能改修できないかと相談しました」と、日本ハムシステムソリューションズの斎藤修氏(ITサービス事業部 加工事業サービス部 加工物流SCMグループ)は語る。

斎藤 修氏

たとえば同一のクライアント端末上で複数定義を同時実行させる、ファイルにメンバーをセッションごとに分離して作成する、処理後もセッションログを保持するなど。こうした機能要件が、開発をスタートする前に、日本ハムシステムソリューションズからオムニサイエンスに伝えられた。

API-Bridgeをリリースしたばかりで、機能強化に注力していたオムニサイエンスでは、これを受けて即座に機能改修を実施し、バージョンアップ版に標準機能として搭載することになった。

「国内ベンダーならではの、オムニサイエンスのこうした対応の迅速性、柔軟性も高く評価しています」(川瀬氏)

最初にAIシステムがサービスインした2022年4月以降、全国12カ所にある各物流センターで順次、運用がスタートした。2022年中には、全センターで本稼働する計画である。日本ハムでは、このAIシステムの稼働により、約40%の業務工数削減を見込んでいる。

日本ハムグループでは今後、「中期経営計画2023」に沿ってDXを実現していくなかで、とくに新しい領域でのシステム構築に際しては、Rest APIを前提にした連携アーキテクチャを重視していくという。APIにより、IBM iの基幹データを多彩なシステムで活用する取り組みが今後、増えることになりそうだ。

[i Magazine 2022 Autumn(2022年11月)掲載]

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