株式会社JRC
本社:大阪府大阪市
創業:1961年
設立:1965年
資本金:8000万円
事業内容:コンベヤ製品の設計・製造・販売、ロボットを活用した自動設備などの設計・製造・販売
https://www.jrcnet.co.jp/
1961年の創業以来、ローラやプーリなど、ベルトコンベヤ部品のトップメーカーとして、国内シェアナンバーワン(約50%)を保持し続けている。現在は、旧来の事業領域だけでなく、その知識や経験を活かして、顧客の課題を解決し、利益向上に貢献する「ソリューションプロバイダー」としての事業領域を拡充しながら、さらなる成長を目指している。
Query/400に代わるBIツールとして
「PHPQUERY」の採用を決定
JRCは1994年にIBM iを導入して以来、販売管理・生産管理を軸とした基幹システムを自社開発型で構築し、継続的に運用している。主要な開発言語はRPG Ⅲ。また2011年からは、「Delphi/400」(ミガロ.)を採用して生産管理系システムを中心にGUI画面へ移行させてきた。
同社が長く利用してきたQuery/400の後継ツールとして、「PHPQUERY」(オムニサイエンス)を採用したのは、2021年3月のことである。それまではユーザー部門の依頼を受けて、その都度、システム部門に相当する経営企画室の担当者がQuery/400でクエリーを作成し、データをExcelに落としてエンドユーザーに渡してきた。
「しかし経営企画室の業務量が増大するなか、基本的なクエリーの作成は経営企画室が担当するものの、現場サイドでユーザー自身がもう少し自由にデータを加工できるツールが必要なのではないかとの検討がスタートしました。それに応える形で、2020年春ごろから、ツールの検討を開始しました。数種類のBIツールを比較検討した結果、Query/400の継承性や使い勝手、機能性、コストパフォーマンスなどの点を評価して、導入を決めたのがPHPQUERYです」と、経営企画室の山口尚之室長は語る。
2021年に導入してから約2年間、同社では営業部門と生産部門にPHPQUERYの導入を進めてきた。実際にはQuery/400とExcelを活用する従来の利用方法、およびPHPQUERYによる新しい利用方法を併用させ、段階的にPHPQUERYへの移行を行ってきた。
Excelの高度なピボット機能を必要とする一部の部門では従来型の運用であるのに対し、自由に、簡単に、そしてリアルタイムにデータを活用したいと考えるユーザーにはPHPQUERYという棲み分けである。
Query/400時代に作成した数百種類のクエリーを整理し、現在は100種類程度に絞って、使用頻度の高いクエリーをPHPQUERYへ移行させ、活用を拡大させている。
「PHPQUERY」により
見積・受注の承認ワークフローを実装
ここまではPHPQUERYの使い方としては一般的で、よく見られる活用状況であると言えるだろう。
しかし同社がユニークなのは、PHPQUERYを一種の開発ツールとして、承認ワークフローを実現している点である。その内容を以下に詳しく見ていこう。
同社では内部統制の強化やペーパレス化への対応を踏まえ、2021年度のIT課題として、見積と受注に関する承認ワークフローの実現が掲げられた。そして2021年春から実施手法の検討をスタートさせている。
これまでは、Delphi/400で開発した見積作成ソフトを利用していた。基幹DBと連携し、1段階の承認機能、つまりある一定額の見積に対して営業所長が承認する機能のみを備えていた(少額の場合は担当者のみで、上長の承認は不要)。それ以外の、すなわちある一定額を超える見積に関する承認は紙で回していたのである。
しかし内部統制の強化とペーパレス化を狙いに、今後は一定額を超える見積に対する本部長の承認、および2023年4月からは高額の見積に対する統括責任者の承認もワークフロー化することになった。
当初は現状の見積作成ソフトが備える承認機能をDelphi/400で拡張することも考えた。しかし想定していたより難易度が高く、開発工数が膨らむことが明らかになった。サードベンダー製のワークフローソフトも検討したが、本部長や統括責任者までの承認頻度は少なく、新しいワークフローソフトの導入は投資対効果の点で疑問符が付いた。APIによるデータ連携も検討したが、当時はまだAPIの活用事例が少なく、実施に踏み切るにはためらいがあったという。
実現手法に頭を悩ませていた経営企画室の長村恵資課長が思い付いたのが、すでに導入済みのPHPQUERYを活用することであった。
「PHPQUERYには、見積ナンバーや受注ナンバーをパラメータとして渡すことで、CLプログラムを起働させる機能があります。これを利用すれば、基幹データを活用した承認ワークフローを実現できると思い付きました」(長村氏)
開発対象は本部長の見積と受注に関する承認機能、そして営業所長の受注金額に関する承認機能である。たとえば営業所長の受注承認の場合、流れは以下のようになる。
営業所長はまず、ブラウザからPHPQUERYにログインする。メニューから所属する営業所、さらに所長フォルダを開き「受注承認」、さらに実行ボタンをクリックする。すると未承認の受注情報が一覧で表示されるので、承認する場合はチェックを入れ、承認ボタンをクリックする。受注ナンバーをクリックすると、簡易的に内容を確認することもできる。
同様の操作で、見積・受注の取り消し処理も実行できる。見積の新規承認リストや受注の未承認リスト、受注の金額変更リストなどは、承認者に通知メールが送られる。承認された見積はPDFに出力され、顧客に送付したり、Web上での開示が可能になる。
オムニサイエンスでは、こうした承認ワークフローの実現に際して、「ユーザー検索条件」という機能をカスタマイズで実現している。これは正当な承認者だけがアクセスできるように、承認者の真正性や否認防止性を担保する機能である。
たとえば前述のような受注承認の流れの中では、所属する営業所および所長フォルダをクリックすれば、誰でもクエリーを実行して承認できることになる。また承認者と所属する営業所ごとにクエリーを作成すると、クエリーの数が増えて管理が煩雑になる。
そこでユーザー検索条件という機能を使って、ログイン中のユーザーに合わせて承認クエリーを実行するアクセス権限を自動的に変更する仕組みを実装した。これにより、共通フォルダに配置した見積・受注等のデータ内容は営業部門の全ユーザーが閲覧できるが、クエリーを実行して承認できるのは営業所長や本部長のみとなる(ユーザー検索機能は現在、PHPQUERYの標準機能として搭載されている)。
またどの承認者に対しても、1つのクエリーだけで対応できるので、承認者の数だけクエリーを作成する必要がない。
開発作業は約2カ月程度。対象は前述した見積と受注、それに販売掛け率に関する承認の3種類である。いずれも2022年4月から運用がスタートした。また2023年4月からは、統括責任者の承認機能も新たに追加されている。
承認ワークフローの利用開始とともに、営業部門でのPHPQUERYの活用はさらに広がっているようだ。
同社では今後、自動見積機能などWebサイト上での顧客サービスを強化していく方針である。
[i Magazine 2023 Spring(2023年5月)掲載]