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事例|株式会社石川県農協電算センター ~フリーフォームRPGに対応したアプリケーション可視化・影響分析ツールを導入

X-Analysisによりプログラム開発・改修時の影響範囲調査を効率化


株式会社石川県農協電算センター
(JA石川電算センター)

本 社:石川県金沢市
設 立:1977年
資本金:1億9237万円
従業員数:41名
事業内容:系統農協および系統農協が出資または出捐する各団体の業務の電算機処理システムの研究開発と提供など
https://www.is-ja.jp/center/

JAは購買・販売・信用・共済などの事業を総合的に推進するが、効率的な事業展開を図るため、事業ごとにJAと連合会による事業組織を形成している。JAグループ石川は、16のJA(農協)、連合会(JA石川県中央会・JAバンク石川信連・JA全農いしかわ・JA共済連石川)、その他の関連団体・会社によって構成されている。

このJAグループ石川と一体になり、システム開発・運用を担うのが、JA石川電算センターである。最新テクノロジーを活用し、多種多様なJA業務、連合会業務および共通基盤業務を支えている。

プログラムの大半が
FF RPGで書かれている

JAグループ石川のIT推進を担う石川県農協電算センター(JA石川電算センター)では2005年に、それまで使っていたメインフレームからIBM iへの移行を果たした。

このとき、設計情報をもとにデータベースやビジネスロジックを定義してアプリケーションを自動生成する超高速開発ツール「Sapiens eMerge」(サピエンステクノロジー・ジャパン)を採用。基幹システムの全面再構築を実施している。

現在稼働している合計1万6000本のプログラムのうち、メインフレーム時代に利用していたCOBOLプログラムの一部をストレートコンバージョンした以外は、RPG ⅣおよびCL、DDSが占める。

とくにRPGはほとんどがフリーフォームRPG(以下、FF RPG)で書かれている。IBM iは運用歴の長いユーザーが目立つが、同社では2005年と比較的導入が新しかったこともあり、今後主流となるであろうFF RPGの採用に踏み切ったようだ。

とは言え、導入から約15年が経過し、開発人員の世代交代は進んでいる。

現在、JA石川電算センターの開発部は2チームに分かれており、基幹システムの開発・運用を担う「業務担当」に7名、オープン系システムを担う「情報担当」に5名のスタッフが所属する。

業務担当の全員がIBM iの開発に携わり、人員構成は20代が3名、30代が3名、40代が1名と、若手が多い。開発者の高齢化が指摘されるIBM iにあって、世代交代が順調に進んでいる好例であろう。ただしその分、開発当初のコンセプトやプログラム構造を知る人員は少なくなっている。

 2005年の導入当初、再構築プロジェクトの中心にいた田中秀和次長(開発部 業務担当)は、当時を知る数少ないメンバーの1人である。

田中 秀和氏
開発部 業務担当
次長

「今も日々、アプリケーションの保守・改修作業が発生しています。ドキュメントは作成していますが、必ずしも変更内容をすべて反映しているわけではなく、改修に伴う影響範囲を調査する作業にかなりの工数を費やしていました。世代交代に伴って、プログラム情報を正確に継承・共有する必要性を感じていました」と、田中氏は語る。

2017年にはその状況を解決すべく、あるIBM iのプログラム資産分析ツールを導入した。しかしこの製品は、FF RPGには対応していなかったため、全面的な問題解決には至らなかったという。

「プログラム資産の大多数を占めるFF RPGに対応していないため、日常的に発生する影響範囲の調査には使えず、結局、ソース検索ツールのような使い方に終始していました」(田中氏)

こうしたツールは、IBM iの運用歴が長いゆえにブラックボックス化しがちなシステム資産の可視化に使われるケースが多い。運用歴の長いユーザーは固定フォーマットでのRPGが多いので、FF RPGへの対応をあまり重視しない傾向にあったようだ。

そんななかで、FF RPGに対応するアプリケーション可視化・影響分析ツールとして出会ったのが、「X-Analysis」(ジーアールソリューションズ)である。

「X-Analysisであればソースコードとオブジェクト双方を解析し、アプリケーションの構造とその構成要素、関係性、フローダイアグラムなどを可視化できます。なによりFF RPGに対応できる点が決め手となって、導入を決めました」と、照田宏明調査役(開発部 業務担当)は語る。

照田 宏明氏
開発部 業務担当
調査役

開発作業中は常時起動
影響範囲調査は大幅に工数短縮

X-Analysisの導入は2020年5月。同年7月ごろ、コロナ禍が続く状況を考慮し、リモートによりジーアールソリューションズから操作方法や便利な使い方に関する講習を受けた。同時にジーアールソリューションズへ要望点なども伝えながら、全員が操作を習得した。

「過去の全プログラムに正確なドキュメントを整備するような使い方は想定していません。基本的にはログイン後に起動し、そのままずっと起動させて、開発作業中は常時使用しています。日々の開発・改修作業が発生したらその都度、影響範囲を調査します。たとえばフィールド属性の変更作業における影響範囲調査では、以前は1フィールド当たり20~30分を要していましたが、X-Analysisの『変数使用箇所』機能を使うことで、わずか数秒で完了できるようになりました。調査時間は大幅に短縮されました」と語る山口諒氏(開発部 業務担当)に続けて、矢守善之氏(同上)も次のように指摘する。

山口 諒氏
開発部 業務担当
矢守 善之氏
開発部 業務担当

「以前は調査対象ファイルがどのプログラムで、どのように使用されているかを、ソースコードを検索しながら抽出していました。しかし今はX-Analysisにより、一目で確認できます。また従来はプログラム修正仕様書のファイル相関図をExcelでその都度書いていましたが、X-Analysisのデータフローダイアグラムで出力したスクリーンショットを添付するだけの運用に変えたので、仕様書作成に要する時間も大幅に短縮されています」

このほか、フルスクリーンでソースコードを確認できるので、ソースコードの可読性が向上し、ここでもプログラム解析の時間短縮に貢献している。

X-Analysisは個々の開発者がそれぞれに利用しているが、こうした使用事例と効果を社内ブログ上に掲載することで全員がナレッジとして共有し、役立てるようにしている。

「実際にX-Analysisを使って分析してみると、『思っていたのと違う』と感じる結果が予想以上に多かったです。こうした『思い込み』が開発生産性を阻害する要因でもあることを、あらためて実感しました」(田中氏)

同社では今後、日常的な改修作業だけでなく、資産の棚卸しという観点でもX-Analysisを活用していく計画である。基幹システムの今後の方針を考え、現状の資産を今後どのぐらい継承し、活用していけるかを判断していく情報入手の手段としても、X-Analysisは有効なツールとなりそうだ。

図表 X-Analysisの運用概要

 

[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]