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今後の生産性・運用性・迅速性を考慮し、内製が可能な開発体制へ移行 | 株式会社古川製作所

株式会社古川製作所

本社:広島県三原市
創業:1957年
設立:1962年
資本金:16億円
売上高:98億円(2021年1月)
従業員数:286名(2021年1月)
事業内容:真空包装機、自動袋詰シール機、トレーシール機、自動殺菌冷却乾燥装置などの製造・販売
https://www.furukawa-mfg.co.jp/

1957年に国産初となる真空包装機を開発して以来、自動袋詰シール機やロータリー真空包装機などの先進マシンを開発・製造・販売してきた包装機械のトップクラスメーカーである。製品の対象分野は食品から医療用・工業用まで多様で、現在2万5000社以上への納入実績と40%を超える国内シェアを誇る。また最近では、中国・台湾・タイに拠点を築き、海外事業を拡大させている。

基幹システム「FAITH」
外部依存の開発体制を見直す

古川製作所は1988年にAS/400を導入した。その後、いったんはオープン系サーバーへリプレースして8~9年使用したのち、IBM iへ再び移行し、販売管理、生産管理、会計の各システムを構築した経緯がある。再移行後の約20年は、基幹システムを「LANSA」(ランサ・ジャパン)で開発してきた。

IBM iから一般的なオープン系サーバーのパッケージ製品で基幹システムを全面再構築するプランが浮上したのは2016年のことである。Power Systemsの保守終了が発表されたことが、検討開始の直接のきっかけであったという。

検討依頼は、「このままIBM iの利用を続けても大丈夫なのか」と不安を抱く経営層から寄せられた。

「当社は独自要件が非常に多く、長年にわたる現場要望による改造でプログラムがスパゲティ化し、開発スキルが属人化していました。ベテランが1人退職することになって、それだけでも保守開発の生産性が低下するのは明らかでした。このことから情シス部門でも将来的なシステムの維持管理に不安を抱いていました」と語るのは、余越紀之執行役員(IT戦略室 室長 兼 情報システム課 顧問)である。

余越 紀之氏
執行役員
IT戦略室 室長 兼  情報システム課 顧問

主要なパッケージ製品を調査し、そのなかの1製品に焦点を絞って、ベンダーとの協議、部門へのヒアリングと課題の洗い出し、要件定義へと作業を進めた。

しかし想定以上にカスタマイズ量が膨らみ、周辺システムと連携するインターフェースの開発も必要となる。とくに次期生産管理システムは大量生産と個別生産の両方の特性を併せ持ち、同社の要件を標準パッケージで対応するのは課題も多い。予算的にも環境的にも、パッケージ製品を採用するメリットは得られないと結論を出さざるを得なかった。

そこで従来のVisual LANSAによる開発環境を継続しつつ、現行のV12から最新版であるV14へ移行し、既存システムと連携しながら、スクラッチ型開発での構築を目指すと決定した。これが2018年春からスタートした「FAITH」(Furukawa Advances and Invents Things Handy)というプロジェクトの第1ステップである。

図表 基幹システム再構築の流れ

生産性や保守性を考慮し、Visual LANSAのフレームワークを先に開発し、テンプレートに従った標準的なコーディング手法を採用した。地元広島をはじめ、関東・関西、九州各地のビジネスパートナーが最大6社参加し、基盤開発、各種マスター、顧客情報などから着手し、2019年3月から新システムの運用を開始したという。

業務ロジックと画面開発を分離
それぞれに最適手法を選択

その後、第1ステップの残作業や不具合への対応を終えたのち、同年夏ごろからは第2ステップがスタートする予定であった。しかし第1ステップでは想定以上の開発コストが発生していた。参加したパートナー数が多く、プロジェクトマネジメントが難しかったこと、独自要件の多い同社のニーズを正確に伝えきれなかったこと、パートナー間でスキルの分野やレベルに差が見られたことなどが要因として指摘されている。

そこでコスト問題を解決するために、内製化へのシフトが検討された。しかし第1ステップで採用した開発フレームワークは高いスキルが要求され、情報システム課内でなかなか理解が進まなかった。また第1ステップで完成したシステムに対しては、部門のユーザーから操作性や画面などの見直しが寄せられていた。

そこで、このままの体制では内製化は難しいと判断し、2020年初頭に、内製化を前提にした開発手法の見直しに着手した。それがFAITHの後継となる「FAITH V2」である。

まずLANSAのV12からV14、そしてLANSA系統の別フレームワークなどが混在する環境を整理し、内製を意識しながらV14開発環境に統一した。その後、V14によるWeb開発教育を実施したが、想像以上に内製化メンバーとのスキルギャップがあり、さらなる開発手法の見直しを検討することになった。サーバーサイド(業務ロジック)とクライアント(Web画面)を完全に分離し、それぞれで最も生産性が高いと思われる開発手法を採用し、開発言語も新たに追加した。

Web画面の開発にはJavaScriptを採用した。これに対してサーバーサイドではデータベースとしてDb2 for iをそのまま利用し、オープン系のLinuxサーバー上でPHPを使って業務ロジックを実装。Web画面とのやり取りにはRESTful方式、流通データはJSONでやり取りし、ライブラリーはWebixを利用する(Webixはドキュメントやデモ情報が充実していてリッチクライアントの実装が可能になると判断した)。

「画面はJavaScript、業務ロジックはPHP、応答はJSONで実装し、画面と業務ロジックを分離させて生産性を向上させています。Db2 for iはそのまま継続し、LANSAで開発した既存システムと共存・連携させつつ、段階的に移行していく計画です。数度にわたってシステム人員のトレーニングも実施し、パートナーに一切依頼せずに内製化が可能な体制が整備されつつあります。一定期間に開発・検証できる機能数は、FAITH時代と比較すると3倍以上の生産性があります。簡単な画面であれば、3~4日で動作検証を完了してリリースが可能になりました」と語るのは、総務部情報システム課の貞安啓孝副長である。

貞安 啓孝氏
総務部
情報システム課 副長

現在は現場の要望事項を整理し、FAITH V2環境での内製開発に着手している。また2021年7月には生産管理システムの要となる所要量計画(MRP)をPHPで開発可能であるかを判断し、MRP機能を内製化で維持できる体制と2022年6月の運用開始を目標に、開発に着手している。

ただし以下のような課題もある。

(1)既存システムと新規システムが共存しているため、DBに2種類のテーブルが並行運用されている状況をどう解決していくか。
(2)IBM iとオープン系の2つの文字コードをハンドリングする必要があるので、文字化けなどを避ける対策が必要である。
(3)所要量計画のような複雑な業務ロジックをPHPだけで実装できるか(対策としてGO言語などの活用も検討中)。
(4)当初の想定以上にプログラム量が膨大かつ複雑で、現場部門からの絶え間ない改修要望に応えながら、円滑に新システムへ移行していくにはどうすればよいか。

「システムの内容も向上し、内製化を支える人員体制も確実にレベルアップしている実感があります。ただ現場からの要望に応えつつ、複雑な環境を整理しながらシステムの再構築を手がけるには、外部の支援も適切に得ていく必要があると感じています。その努力は今後も続けていくつもりです」(余越氏)

 

[i Magazine 2021 Summer(2021年7月)掲載]

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