ブラブジャパン株式会社
本社:東京都千代田区
設立:1998年
資本金:1億円
従業員数:8名
事業内容:スポーツ用品の製造・輸入・販売
https://brav.co.jp/
ブラブジャパンは、ノルウェーに本拠地を置き、スポーツ&アウトドア分野の有名ブランド「SWIX(スウィックス)」を展開するブラブグループの日本法人である。もともとはノルディックスキーで使用するワックスの研究開発からスタートし、国際ブランドの買収・統合を重ねながら、SWIXをはじめTOKO、Ulvang、Lundhags、Helsportなど、アウトドアや各種スポーツ関連商品をカバーする総合ブランドに成長してきた。
現在は世界8カ国に子会社を擁し、30カ国以上に販売網を広げる。2018年にSWIXスポーツグループからBRAVグループへ、グループ名を変更。それに伴い、日本法人も2021年、現在の社名に変更した。
運用管理業務の解消を目指し
クラウドサービスへ移行
ブラブジャパンはコロナ禍に対応するため、2020年から組織体制をスリム化するとともに、全国各地での完全在宅勤務体制を実現すべく動き出した。東京本社を移転し、大阪営業所は閉鎖。社員は自宅からVPN経由で5250アプリケーションへのアクセスが可能。在宅時でも会社の代表番号に寄せられた電話に、各自のスマートフォンで応答できる。
その一方、2021年8月には第1号となる直営ショップ「OUTDOOR SHOP Brav」を長野県軽井沢にオープンした。顧客ニーズや市場動向をダイレクトにキャッチするアンテナ的な役割と、売上増に貢献する最前線チャネルとしての役割が期待され、コロナ禍のなかでも順調な滑り出しを見せている。
同社の基幹システムを支えてきたのは、20年以上前に導入されたIBM iである。パッケージ型の販売管理システムを大幅にカスタマイズし、きめ細かく機能改修を続けながら、現在も利用する。
ただしここ数年は、「このままIBM iを使い続けてよいのかと、悩んできました」と、萩野武久代表取締役社長は振り返る。
IBM iが今後、どのぐらい継続的に提供されるのか。長年使い続けてきた基幹システムを新しい業務ニーズに迅速に対応させていくにはどうすればよいか。そうした課題に加えて、限られた人員で運営する日本法人にはIT専任担当者を置く余裕はなく、基本的な運用管理やアプリケーション保守を外部ベンダーに委託してきた。
「以前に一度ディスク障害が発生し、その対応に苦労した経験もあり、在宅勤務体制への移行が急速に進むなか、システム障害などの緊急時も含めて、本社に設置したサーバーの運用管理業務をできるだけ削減したいとの要望がありました。いっそクラウド型で提供される新しい販売管理システムへ移行すべきかなど、いろいろと検討していました」(萩野氏)
そんななか、BIソリューションとして導入している「PHPQUERY」の開発元であり、サーバーの運用管理やアプリケーション保守を委託しているオムニサイエンスから、IBM iのクラウドサービスである「IBM Power Virtual Server」(以下、PVS)の提案を受けることになった。
「現在の販売管理システムを継続しながら、日々の運用管理やハードウェアの更新、バージョンアップなどサーバー業務の一切から解放されるという点が、当社にとっては大変に魅力的でした。日頃からお付き合いがあり、信頼関係を築いているオムニサイエンスの支援を得られるという点でも安心でした」(萩野氏)
同社のIP-Sec VPNと
IBM Cloudとの接続を慎重に進める
オムニサイエンスが同社にPVSを提案したのは、2021年5月末。提案内容を即決し、6月初頭には正式契約。移行期間を経て、8月初頭からPVSでの運用を開始した。
PVSの環境はPower S922で0.25コア、メモリは4GB、ストレージは160GB。OSはクラウドサービスへの移行を機に、7.1から7.4へバージョンアップした。
オムニサイエンスにとっても、同社が最初のPVS案件となるため、イグアスからの技術協力を得ながら、アプリケーション面およびネットワーク面で慎重に移行作業を進めた。
アプリケーション面では、OSのバージョンアップを含めたPVSへの移行に約2週間の検証期間を設けた。一次言語を 「2962日本語」にしたため、コンソール上の日本語が文字化けするなどの現象に対応が必要となったが、おおむね問題なく進められたという。
またネットワーク面については、以下のように構成した。
同社では以前から東京本社、東京近郊の流通センター、そして各地の在宅拠点(関東、関西、北陸など)をIP-Sec VPNで接続していた。本社には次世代ファイアウォール「FortiGate」、各在宅拠点には「Forti Client」、流通センターはヤマハ製のルータ「RTX830」を導入していた。
PVSはIBM Cloudのデータセンター内にあるが、IBM Cloudのx86サーバー群(以下、x86エリア)とは独立した環境に構築されている。そこでx86エリアとPVSエリア双方のプライベートネットワーク間を、Direct Linkで接続している。
またPVSを利用するには、まず同社のネットワークとIBM Cloudを接続する必要がある。このため、X86エリアにVRA(Vir tual Router Appliance)を設定した。
さらにPower Systemsの仮想サーバーを構築するだけではオンプレミスで稼働しているサーバーを代替できず、x86エリアにも仮想サーバーを準備する必要がある。そこでx86エリアにNGINXを導入して、仮想サーバーおよびリバースプロキシ—サーバーを構築した。ちなみにこれらは、PVSへの接続で推奨されている標準的な手法である。
「単純にコア当たりの利用コストおよびネットワークコストを5年の使用期間で比較した場合、オンプレミスでの利用よりもPVSのほうがコスト高になるのは確かです。ただ当社では運用管理業務から解放される、テープ交換などのために出社する必要がなくなるなど、TOCで試算した場合、PVSのほうが、はるかにコストパフォーマンスが高いと判断し、採用を即決しました」(萩原氏)
オムニサイエンスではVRAの代替手法などを検討し、ネットワークコストの最適化に向けて努力していくとのことだ。
基幹システムがPVSへ移行したことで、Webアプリケーションとの連携が容易になった。同社では今後、オムニサイエンスと相談しながら、Webを活用した在庫照会や受発注などのB2B、さらに顧客とダイレクトにつながるB2Cなどを充実させていきたいとしている。
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