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複雑なデータ照会ニーズへの対応と使いやすさを重視し、ローコードツールを採用 ~GUI開発、ブラウザ利用、Excel出力を評価してValenceを採用 | 芦森工業株式会社

芦森工業株式会社
本社:大阪府摂津市
創業:1878(明治11)年
設立:1935(昭和10)年
資本金:83億8800万円
売上高:683億8900万円(2024年3月期)
従業員数:2442名(連結、2024年3月期)
概要:自動車安全部品事業としてシートベルト、エアバッグ、内装品など、機能製品事業として「パルテム」用の材料・資機材、消防用ホース・防災関連資機材などの防災製品、合繊ロープ・ベルト、帆布・シリカスクリーンなどの産業資材の製造・販売
https://www.ashimori.co.jp/

国産サーバーをIBM iへ移行
COBOLをRPG Ⅲで書き換える 

芦森工業は1878年に創業し、今年146年目を迎える企業である。綿麻糸商として事業をスタートさせ、1885年年には日本で初めて機械による伝導用綿ロープを製造。以来、繊維を用いた産業資材のメーカーとして事業領域を着実に拡大してきた歴史をもつ。

現在は、自動車のシートベルトやエアバッグ、消防ホースや水害対策ホース、管路更生工法「パルテム」用の材料・資機材、漁業・船舶用ロープといった繊維技術をベースとする「安全・リニューアル分野」を主力事業としている。

組織・体制は、自動車安全部品事業本部と機能製品事業本部の2つの事業本部に分かれる。そして基幹システムも2020年までは事業本部ごとに別々のプラットフォームで運用してきた。1つは自動車安全部品事業本部のIBM i、もう1つは機能製品事業部の国産メーカーのビジネスサーバーである。

自動車安全部品事業本部のIBM iのスタートは、1987年のシステム/38の導入に遡る。それまでは国産メインフレームを使用してきたが、自動車安全部品事業の拡大に伴い、同事業のシステムを切り出してシステム/38へ移行した。以来、生産計画システム(MAPICS)、WebEDI(2005年)、人事給与・固定資産パッケージシステム、原価計算システム、会計システムなどを導入し、事業の拡大に対応してきた。

一方、機能製品事業本部のビジネスサーバーは2010年代後半になると老朽化が目立ち始め、2020年に自動車安全部品事業本部のIBM iへ移行して、基盤統合を行った。

「統合による運用工数の削減、コスト削減、基幹システムのスリム化が大きな狙いでした」と語るのは、情報システム部の藤川航大氏である。

藤川 航大氏

移行・統合にあたって、COBOLで構築された基幹プログラムをRPG Ⅲで書き換えた。「業務ロジックは旧システムを踏襲し、かなりの規模の改修と追加・拡張を実施しました」と、藤川氏は話す。

図表1 システム化の主な歩み

利用中のデータ照会ツールを断念し
ローコードツールを採用

機能製品事業本部用の新しい基幹システムでは、基幹データを照会するシステムも新たに導入した。従来は5250画面によく似たビジネスサーバーの黒画面でデータ照会を行っていたが、新しい照会ニーズへの対応と、ITスキルがどのレベルのユーザーでも直感的に使えるようにするのが導入の目的だった。

データ照会用のシステムは、ミガロ.のローコードツール「Valence」で開発した。新規開発の画面数が多数に上ることが見込まれたので、「手組みよりもツールによる開発」を当初から決めていたという。

Valenceを選択した理由について、藤川氏は次のように言う。

「じつは自動車安全部品事業本部でIBM i対応のデータ照会ツールを導入し、幅広く使っていました。そのため、一時はそのツールの採用に傾きかけましたが、あらためて詳しく調べてみると、機能がシンプルすぎて機能製品事業本部の複雑な照会ニーズには対応しきれないことが判明しました。そこでほかのツールを探索し、いろいろと比較した結果、Valenceを選択しました」

藤川氏によると、Valence採用の決め手は、

・GUIで開発できる
・ユーザーはWebブラウザのみで利用できる
・照会結果をExcelへ簡単に出力できる

の3点だったという。

Valenceによる開発は、データの参照先となるIBM i上のファイルを指定し、次に抽出したデータの表示方法を「ウィジェット」と呼ぶ部品から選択して定義し、さらにアプリケーションを作成する、という3ステップで行える。「簡単なものなら半日で、かなり複雑な照会でも2~3日程度で開発できます」と、藤川氏は述べる。

図表2 データ照会システムの管理者用トップ画面

新しいデータ照会システムは、機能製品事業本部の基幹システムのサービスインと同時に約50画面をリリースした。この約50画面は、2019年入社の藤川氏がシステム部門に配属された直後に「一人で開発したもの」という。

「担当になった当初はIBM iや業務システムのイロハもわかっていませんでしたが、1カ月もするとコツがつかめ、スムーズに開発できるようになりました。ユーザーの要望を聞いて実装し、不明点はミガロ.のサポートを受けるというやり方で作業を進めました」と、藤川氏は振り返る。

開発した照会システムの1つの「売上日計表」はIBM i上の多数のファイルからデータを抽出し、ユーザーごとに必要なデータを表示するもの。ユーザーはドリルダウンやビューを変えることで多角的にデータを参照できる。

「売上日計表は複雑すぎて従来はシステム化を断念していたものですが、Valenceでは少数の例外を除いて難なく開発できました。開発のスピード、品質、動作パフォーマンスとも問題なく、導入は成功だったと考えています」(藤川氏)

今後は、まだ使いこなせていないValenceの機能を活用して、照会システムのブラッシュアップと拡充を図っていく考え。またValenceはエントリー機能も充実してきているので、「そちらも検証していく予定です」と話す。

 

[i Magazine 2024 Summer 掲載]

 

 

 

 

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