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クラウド型のオープン系パッケージ移行を検討するも、IBM iとLANSAの運用環境継続を決定 ~「自社開発に勝るものなし」を強く実感 |株式会社オリエンタルダイヤモンド

株式会社オリエンタルダイヤモンド
本社:東京都千代田区
創業:1905年
設立:2007年
資本金:1億円
売上高:7億4000万円(2021年12月期)
従業員数:45名(2021年10月)
事業内容:ジュエリーブランド事業、ダイヤモンドルース事業、直営店事業、和装事業、着物レンタル事業
https://www.orientaldiamond.jp/

ダイヤモンド原石を取引できる「サイトホルダー」の資格を日本で初めて取得したパイオニア企業。業務形態の再編に伴い、現在は世界のネットワークを通じて直接、ルース(宝飾用ダイヤモンドの裸石)を買い付け、ジュエリー商品の企画・開発・製造、卸し、小売までを一貫して展開している。2020年に、佐賀県に本社を置き、西日本を中心とする約60店舗で着物や宝石、装飾品などを販売する株式会社鈴花の100%子会社となる。2021年6月には、京都の呉服卸し問屋から事業譲渡を受け、和装用品の買付・卸し事業に進出している。

10月29日は和服の日。和服の素晴らしさを多くの人に知ってもらおうと、2020年に鈴花が制定。

 

オープン系パッケージへの
移行を検討

オリエンタルダイヤモンドは、1995年に導入して以来、長年にわたるIBM iユーザーである。基幹となる販売管理システムは、LANSAを使って構築してきた。

同社の情報システムは企画・開発から日々の運用管理に至るまで、業務部 ITインフラ&マーケティング担当の南勉マネージャーが担っている。入社前はITベンダーでLANSAのシステム開発を担当してきたスキルを活かし、既存システムの改修から新規システムの構築までを1人でカバーしてきた。

2007年に同社の100%株主であった住友商事がニッセンへ事業譲渡し、その後は2017年にゴードンブラザーズジャパンへ、そして2020年に鈴花へと親会社が変遷してきた経緯がある。

2020年に親会社が現在の鈴花へ移るのに前後して、業務形態の再編や事業方針などが検討されるなかで、経営陣から課題として指摘されたのが、基幹システムに関わるランニングコストであった。

同社はオンプレミスで運用していたIBM iを、2011年にネオアクシス(当時)が提供するPower Systemsに特化したクラウドサービス「NAXクラウド」に移行した。

それには、1名で基幹システムの開発・運用を担当する状況を考慮し、サーバーに関する運用管理業務を軽減する狙いがあった。その後さらに、2014年にはTISのクラウドサービスである「XiCloud」(サイクラウド)へ移行し、現在はこれを利用してIBM iを運用している。

「サーバーの運用管理業務はほとんど解消され、私はシステムの企画・開発業務に集中できるようになりました。その意味で、クラウドサービスの採用は正解だったと考えています。ただしオンプレミスでのサーバー導入コストに比較すると、クラウドサービスのほうがやや割高となるのは確かです」(南氏)

南 勉氏

さまざまな部門のコストを見直すなか、経営側にはIBM iのクラウドサービス利用コストが改善すべき課題と映ったのであろう。Windowsベースのジュエリー専門パッケージを運用するSaaS型のクラウドサービスへ移行する案を提案された。

そこで南氏は数カ月を費やして、現行環境とジュエリー専門パッケージのクラウドサービスとを、コストや機能、性能、運用性などあらゆる面で比較検討することになった。

そして出された結論は、「自社開発に勝るものなし」であった。

「単純に毎月の利用コストを比較すれば、IBM iのクラウドサービスのほうが、やや割高となるのは確かです。しかしWindowsベースのジュエリー専門パッケージを採用した場合、今当たり前にできている業務が立ち行かなくなる。業務プロセスに沿って追加機能をカスタマイズで実現すると、それだけで膨大な開発コストが発生すると判明しました。その結果を報告すると、経営側もすぐに納得して現状維持が決まりました」(南氏)

LANSAの開発力を活かし
新システムを短期間で実現

この決断は、同社のその後の業務刷新を舞台裏で大きく支えることになった。

コロナ禍以前から、展示会が大きな販売機会であったジュエリー商品の購買行動に変化のきざしが見え始め、ダイヤモンドを取り巻く業界動向は大きく変化しつつあった。この動向を受けて、商品の販売方法にも改革が求められていた。

同社が踏み切ったのは、「ダイヤモンドコンシェルジュ」という、取引先と仕入先をつなぐWebサービスの強化であった。

図表 ダイヤモンドコンシェルジュ

もともと同社では2008年から、約800社の取引先(全国の宝飾関連の販売店)に対し、Web上で在庫照会や発注を支援するサービスを提供してきた。「ダイヤモンドコンシェルジュ」ではこのサービスを強化し、ルース(宝飾用ダイヤモンドの裸石)の仕入先8社(同社では「パートナー」と呼ぶ)に対しても、ルースの在庫・受注を可能にしたのである。

同サービス上では、常時2500ピース以上の在庫情報をインターネットから照会できる。取引先が照会すると、仕入先が画面上でその商品の在庫状況を入力し、在庫があれば注文が可能になる。

検品をアウトソーシングしている専門会社やアクセサリーの加工会社にも、サービスの一部を開示している。ルースは仕入先から鑑定機関、加工会社、検品会社と経由し、必要であれば鑑定書を添付して取引先(販売店)に納品される。

つまり商品はオリエンタルダイヤモンドを経由することなく、売れ筋商品であるごく一部を除いて、同社はルースの在庫を一切もつ必要がなくなる。 

Webサービスによるこの業務刷新は、照会・在庫確認・受発注というリードタイム短縮や業務の効率化はもちろん、在庫の大幅な削減と、営業担当者の人員削減など大きな効果を生んでいる。

「ダイヤモンドコンシェルジュはもともとLANSAで構築していたWebサービスを機能強化したもので、開発期間は2カ月程度で済みました。パッケージ製品のクラウドサービスを利用していたら、とてもこれほど迅速には開発できなかったでしょう」(南氏)

この機動力・開発力は2021年6月に京都の呉服卸し問屋からの事業譲渡を受け、和装用品の買付・卸し事業に進出した際にも如何なく発揮された。

和装用品の買付・卸し事業の支援システムは、ルースの卸し事業を支える販売管理システムとほぼ同じ要件が必要とされていた。そこで既存システムをベースに、LANSAで和装用品独自の機能要件を加えることで、これもほぼ2カ月で完成させたという。

「既存のプログラム資産とLANSAでの開発ノウハウがあるゆえに可能になったことで、まさに『自社開発に勝るものなし』を実感しました」(南氏)

ちなみに現在は、「LANSA V14」を使用しており、LANSAのWeb構築手法であるWAM(Web Application Module)を開発に利用しているという。

南氏は自身のスキルとノウハウを引き継ぐ後継者育成に目を向けつつ、今後もIBM iとLANSAにより、業務に求められるシステムを実現していきたいとしている。

 

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