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ローコードWebPerformerを標準ツールとし、基幹連携の倉庫DX・倉庫BIを開発・展開|濃飛倉庫運輸株式会社

 

濃飛倉庫運輸株式会社

本社:岐阜県岐阜市
創業:1916(大正5)年
資本金:4億9680万円
売上高:280億2400万円(2022年3月期)
従業員:1210名
概要:倉庫、貨物自動車運送、貨物利用運送(鉄道、海運、航空)、港湾運送、通関、自動車整備、不動産賃貸、損害保険代理などの事業
https://www.nohhi.co.jp/

1916(大正5)年に岐阜県の地元銀行の倉庫部門として誕生した。その後、倉庫、トラック・鉄道輸送へと事業の幅を広げ、顧客企業の海外進出にともなって国際物流も手がけるようになり、中国・香港・ベトナム・カンボジア・タイなどに拠点を広げてきた。現在は総合物流企業として国内・海外にネットワークを広げる。

 

WebPerformerで改修・開発し
不足部分はRPGで補う方針

岐阜市に本社をおき、中部・関西・関東圏を中心に物流ネットワークを広げる総合物流企業の濃飛倉庫運輸は、「お客様の未来を共に創造する」を目標にデジタル化とDXに取り組み、社内業務改革を進めている。

社内改革としては、業務の特性や地域特性に応じて縦割り型としてきた組織体制を一新し、全国10カ所の主管支店の部門を同一の構成にするとともに、本社体制も再編した。業務改革としては、高度化する顧客ニーズに柔軟に対応できるよう従来の“自社施設中心”の倉庫展開を変更し、外部施設の利用も推進してきた。また、社員・協力会社がよりスムーズかつ快適に業務を行えるよう仕組みの変更や働き方改革に取り組んできた。そしてこれらの改革を下支えし、リードしてきたのが情報システムである。

同社のシステム部門では現在、20年来運用してきた2つの業務システムのモダナイゼーションと、新しい倉庫・物流業務ニーズに対応した「倉庫DX」など4つのシステムの構築・横展開を推進中である。

旧来からの業務システムは、通関システムと海外システムの2つ。通関システムはベンダー製の開発ツールを使って、海外システムはRPGでそれぞれ構築し改修を重ねてきた。同社はこの2つのモダナイゼーションをローコードツールの「WebPerformer」
(キヤノンITソリューションズ)を使って進めている。

その理由をシステム開発部 副部長の浅野智勇氏(副参事補)は、次のように説明する。

「当社では2000年代からIBM iのフロントエンド系や貨物追跡システムなどをJavaを使って開発し、その後も適用範囲を拡大してきました。Javaを用いることによってIT環境のさまざまな変化に容易に追随できますが、要員の育成はRPGと比べてむずかしい面が多々あります。そこでJavaを簡単に扱えるツールを複数検討した結果、IBM iとも相性のいいWebPerformerを選択しました。ドラッグ&ドロップによる直感的な操作が可能なのでスムーズに利用を開始でき、Javaによるスクラッチ開発と比較して半分以下の工数で開発が行えています」

浅野 智勇

副参事補
システム開発部 副部長

 

またシステム開発本部長 兼 システム開発部長の國井健治氏(参事)もJavaの生産性を高く評価したうえで、「今後はWeb
Performerを標準ツールとしてシステムの改修や新規開発を進め、ローコード開発で不足する部分はRPGで補う方針を立てています」と話す。

國井 健治

 

参事
システム開発本部長 兼
システム開発部長

 

倉庫DXが先陣を切り
企業のDX化を推進

一方、倉庫・物流業務システムの改築では、倉庫DX、倉庫BI、バースブッキング、N・O-NETの4つのプロジェクトを推進中または計画中である。

倉庫DXは、商品の保管や入出庫業務を「劇的に」効率化するもの。従来は、物流センター(倉庫)の担当者がFAXで送られてくる「出荷一覧表」を見て、棚を探して商品を取り出し、荷札を貼って出荷していたが(荷札は事務所などからの送付)、新システムでは担当者にバーコードリーダー付きスマートフォンと携帯プリンターを配布し、棚から商品を取り出すたびに商品のバーコードを読み取るかスマホ・アプリをチェックすると携帯プリンターで荷札が印刷されるので、それを貼って出荷する仕組みとした。

また商品を棚に保管するロケーション管理は、従来は倉庫担当者の裁量に任されていたが、それを標準化し、個々の商品を広大な物流センターのどの棚のどこに保管するかを決め、システムと連携させた。

「倉庫DXシステムの導入によってピッキング作業がきわめてすばやく、正確に行えるようになりました。ペーパーレスも実現でき、作業品質が格段に向上しています」と、國井氏は評価する。現在、約30ある物流センターの5センターに導入を終え(2023年4月時点)、2024年3月末までに全センターへの展開を完了する予定である。

倉庫BIは、物流センター内の保管棚の空き状況を把握し、倉庫ビジネスの予実管理や顧客からの入庫依頼への対応、スペース管理やロケーション管理に活用するためのものである。

浅野氏は「倉庫BIの導入によって、従来感覚的に捉えていた空き状況が数値化されるので、予実管理や依頼などへの対応が容易になりました。また従来は、倉庫管理者からの依頼によって各種分析資料をExcelにして提出していましたが、倉庫管理者自らがシステムで随時確認できるので、システム部門の負荷が大きく軽減されました」と語る。

3つ目のバースブッキングは、物流センターに入場するトラックの受付管理システムである。従来は、センターへの到着順に入場可能としていたが、繁忙期や時間帯によっては到着が集中することがあり、長い待ち時間やエンジン稼働によるCO2の排出などが問題となっていた。またこの背景には、荷待ち時間の削減やトラックドライバーの労働環境改善を政府・省庁をあげて推進中ということもあった(荷主都合による荷待ち時間が30分以上あった場合、「待機時間料」の支払いを国が制度化)。

構築したバースブッキング・システムは、荷主の指示を受けたドライバーがスマートフォン画面で希望するセンター入場の時間帯(8時〜17時、15分刻み)を予約すると同社の管理センターへ送信され、その可否の返信がドライバー宛てに届くので、ドライバーは入場可能時間にセンターに到着後、備え付けのタブレットで受付をし、入場許可の電話連絡を待つという仕組みとした。システムとしては、ドライバーが受付を済ませるとセンターの出荷担当者にメッセージが飛ぶので、トラックへの早めの積載準備が可能になった。「このシステムの導入によりドライバーの待機時間を大幅に短縮できるようになりました」と、浅野氏は話す。

最後のN・O-NETは30年以上運用してきた倉庫管理システム(WMS)で、「本格的な改築はこれから」(國井氏)という。

「当社のDXは、倉庫DXが先陣を切って進んでいます。今後は商品の在庫状況をリアルタイムにお客様に提供したり、ロボットによる効率化などを視野に入れています。安定性の高いIBM iと、WebPerformerとRPGの活用を軸として、DX化を広げていく考えです」と、國井氏は述べる。

図表 濃飛倉庫運輸の倉庫DXシステム
図表 濃飛倉庫運輸の倉庫DXシステム

[i Magazine 2023 Spring(2023年5月)掲載]