JBCCではオンプレミスでご利用中のPowerをPowerVSへ移行する数多くのお客様案件を担当し、知見と経験を積み上げてきました。それについて、講演した豊村洋二(JBCC株式会社 クラウドテクニカル本部 PowerSystems担当)は、「お客様の移行をご支援する中で、私どもも改めてPowerVSの価値を学んできました」と振り返ります。
「PowerVSは登場した時から“高い”“高額”“コスト高”と言われてきましたが、私どもはむしろ、PowerVSはコスト削減のための基盤になると、現在は確信しています。今回のセミナーでは、お客様の移行ご支援で当社が経験してきたことの中からコスト削減にテーマを絞って、経験のすべてをお話しします」と、豊村は語りました。
Speaker
豊村 洋二
JBCC株式会社
ソリューション事業
ハイブリッドクラウド事業部
クラウドテクニカル本部
PowerSystems担当
PowerVSへの移行で
コスト削減が可能になる理由
豊村は最初に、オンプレミスからクラウドへPowerを移行すると、どうしてコスト削減が可能になるのか、その原理的なポイントから説明を始めました。
まずデータセンターでの利用との比較です。Powerをデータセンターで運用すると、次のような費用がかかります。
・ハードウェア/ソフトウェア費用
・保守・ライセンス費用
・ファシリティ費用(電気代、スペース費用など)
・維持管理(人件費・運用費)
PowerVSでは、上記の費用はすべて含まれ、コストは低くなります。つまり、PowerVS上でリソースを選択すると、そこに上記の費用がすべて含まれているのです。
一方、オンプレミスでの利用でもデータセンターと同じ項目の費用がかかります。その点でもオンプレミスのほうがコスト高なのが一般的ですが、オンプレミスとPowerVSとのコスト比較では、利用するPowerのスペックがポイントになります。最近のPowerは性能が著しく向上しているので、オンプレミスの利用ではリソースを相当余らせて、つまり極端なスペックオーバーで運用しているケースが少なくありません。またオンプレミスでは、月に1~2回、あるいは年に数回のピーク時に合わせてマシンをサイジングする必要があるため、平常時の運用はどうしてもスペックオーバーになってしまう事情があります。
これに対してPowerVSでは、CPUやメモリなどを小さな単位で選択できるのでスペックを最適化でき、ピーク時はその都度リソースをスケールできるので、費用面でも適正化が可能です。
また豊村は、「Powerを長期にわたって利用する実際の運用では、このほかにも考慮すべき点が多数あります」と言い、次のように続けました。
「1つは、5~6年ごとに発生するPowerのリプレースにかかる費用です。データセンターやオンプレミスでの運用では、リプレースごとにハードウェア/ソフトウェアの費用が必要となり、移行・切り替え・バージョンアップなどの費用もかかります。弊社ではクラウド移行する事により、DCコストや運用にかかる無駄なコストをなくして、その余ったコストで新たな投資をしていただくという事を推進しております」
また豊村は、データセンターやオンプレミスの利用では得られない、PowerVSならではの多彩な価値についても話を進めました。
1つは、スモールスタートが可能な点です。オンプレミスのPowerでは4コアのプロセッサが最小スペックですが、PowerVSでは0.25コアからスタートでき、0.01コア単位で増減できます。またメモリは1GB単位、ストレージは10GB単位で増減可能なので、リソースを最適化させてスタートすることができるのです。
2つ目は、PowerVSでは標準で冗長化が行われる点です。オンプレミスやデータセンターで冗長化するには2台目のPowerが必要になりそれなりの費用がかかりますが、PowerVSでは標準機能として費用に含まれています。「クラウドセンターとしての高度な安全性に加えて、万が一の障害に備えて2台目の仮想的なIBM iがあるので、より高い安全性と安心が得られます」(豊村)
3つ目は、サポート終了済みのOSバージョンがPowerVSでサポートされている点です。IBM i 7.1と7.2はすでにサポート終了済みですが、PowerVSで利用可能です。またIBM i 7.3も2023年9月末にサポート終了となりますが、PowerVSでは継続して利用できる予定です。
そして4つ目は、ICOS(IBM i Cloud Storage Solution)による高可用性の実現という点です。PowerVSでは「ICOS」と呼ぶIBM i用のストレージ環境が用意されています。これをIBM iのバックアップ先として指定すると、保存データは3カ所以上に自動で分散保管されるので、データの保全性・可用性が高まります。バックアップ・データの分散保管をオンプレミスやデータセンターで実現しようとすると、費用や工数がかかりますが、PowerVSでは標準機能なのでメリットを享受できます。
豊村は今回の講演で、JBCCが経験し、分析し、実際のお客様事例で得た知見を多数ご紹介しています。実際どのようにサイジングをおこなってクラウド移行をおこなったかは、JBCCサイトを訪れていただき、見逃し配信動画をご覧にいただければと思います。
PowerVS 移行コンサルテーションサービス
JBCCでは、オンプレミスからPowerVSへの移行ご支援の経験を基に、現在「PowerVS 移行コンサルテーションサービス」と呼ぶ無償のサービスを提供しています。
サービスは、
・クラウド移行簡易診断
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・現状サイジング分析
↓
・運用課題の抽出
↓
・非機能要件の整理
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・PowerVSクラウドデザイン
のステップで進みますが、PowerVSへの移行を前提とした無償サービスではありません。お客様の現行システムを分析してアセスメントを行ったうえで、PowerVSへの移行かオンプレミスの継続かを診断するものです。PowerVSへの移行を推奨する場合は、ネットワークの接続構成やPowerVSのサイジングの提案まで行います。
IAサーバー クラウド移行コンサルテーションサービス
また、PowerVSへの移行では、IAサーバーのクラウド移行もあわせて実施するケースが少なくありません。そこで豊村は「IAサーバー クラウド移行コンサルテーションサービス」についても紹介しました。
このサービスも無償のサービスで、次のようなステップで移行診断を行います。
・クラウド移行簡易診断
↓
・クラウド制約整理
↓
・移行プラン検討
↓
・非機能要件の定義
↓
・アーキテクチャ策定
IAサーバーのクラウド移行におけるコスト削減は、PowerVSの場合と同じ考え方です。初めにサイジングによるシステムリソースの最適化を行い、その結果のリソースに対して契約・調達を最適化する考え方です。
「オープン系サーバーでは、インスタンスを1サイズ縮小するとコストを半減できるので、サイジングは非常に重要です。またCPUリソースを縮小すると、CPUサイズを基に課金するミドルウェア/ソフトウェアなどの料金も圧縮可能になります」と、豊村は指摘します。
またオープン系サーバーのクラウド利用では、リソースの長期利用に対するAWSの割引サービス(AWSの「リザーブドインスタンス」)や、AzureのWindowsライセンス持ち込み(BYOL)によるコスト削減策などについても、豊村は紹介しました。
クラウドへの移行検討~運用をカバーする「EcoOne」
JBCCでは、オンプレミスで運用中のIAサーバーをクラウドへ移行し、移行後の運用までをご支援するトータルサービス「EcoOne」を提供しています。移行検討フェーズでは、クリニックやアセスメントにより移行方法やクラウド上のシステム構成を確定させ、構築フェーズでは「SE構築サービス」により最適なクラウドシステムを構築、運用フェーズでは、コスト最適化サービス「CloudHealth」により継続的にクラウド構成の最適化とコスト削減を図っていきます。
また、PowerVSでは「PowerVSマネージドサービス」を提供しています。PowerVSへの移行後の運用をご支援するもので、JBCCクラウド運用管理センター(CLIC)よる24時間・365日の運用監視・障害通知サービスや、各種技術支援サービスを提供しています。
豊村は、「JBCCでは、PowerVSを含めAWS、Azure、IBM Cloudなどさまざまなクラウドサービスへの移行をご支援し、その経験と知見をベースにEcoOneやPowerVSマネージドサービスなどを提供しています。お客様が安心してご利用になれる環境が整っていますので、PowerVS・各種クラウドへの移行の際には、ぜひご相談いただきたく思います」と、講演を締めくくりました。
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