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ハイパーコンバージド市場の最新動向|宝出 幸久氏◎IDC Japan

導入理由は、ITインフラの効率化ニーズと
ビジネスニーズへの迅速な対応

 

宝出 幸久氏

IDC Japan株式会社 
エンタープライズインフラストラクチャ
マーケットアナリスト

 

IS magazine(以下、IS) 日本のハイパーコンバージド・システム市場の動向をどう見ていますか。

宝出 2016年の市場規模(支出額)は78億円となり、前年(2015年)が40億円だったのでほぼ倍増しました。2017年は対前年比77%増の139億円となるという予測で、2021年には300億円を超えると見ています。2016〜2021年の年間平均成長率は31.2%です(図表1)

図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

IS 昨年(2016年)の市場予測と比較して、何か違いはありますか。

宝出 昨年6月に発表した予測では、2016年を90億円としていたので若干、下回りました。その理由としては、2016年に新規に出荷された製品の市場展開に時間がかかったことなどから、想定ほど伸びなかったことが挙げられます。ただし、全体のトレンドに大きな変化はなく、急速に成長している市場であることに変わりはありません。

IS ハイパーコンバージド・システム市場が伸びている要因は何ですか。

宝出 最も大きな要因は、ITインフラに対する効率化ニーズの高まりです。仮想化環境を構築し運用してきた企業の間では、その管理に苦労するケースが増加しています。さらにそれを、そのほかの既存環境も含めて効率化したいというニーズが大きくなっています。その一方で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展に伴って、ITインフラに柔軟性と拡張性、俊敏性が求められつつあることもハイパーコンバージド・システム市場を拡大させている要因です。ITインフラを迅速に構築したいというニーズが、ハイパーコンバージドの伸びを支えると見ています。ハイパーコンバージド・システムは、当初はVDI向けに多く導入されていましたが、直近ではサーバー仮想化環境の割合が増え、用途が広がっていることも成長の要因の1つです。小規模なシステムで試してみて、より重要度の高い用途にも使えると判断され、導入規模が拡大するケースも出てきています。

IS 導入理由として多いのは何ですか。

宝出 先ほどの成長要因で挙げた「ITインフラの効率化ニーズ」と重なりますが、1位が「運用管理コストの削減」、2位が「ハードウェアコストの削減」、3位「運用管理の複雑性の解消」、4位「IT管理者の生産性の向上」の順となります(図表2)。この順番は2016年の調査とまったく変わらず、ハイパーコンバージドに対するニーズとして定着していると考えています。

図表2 画像をクリックすると拡大します】

 

IS やはり運用管理の効率化なのですね。

宝出 その背景には、ITインフラの管理者が不足気味ということも、一部の企業ではあるようです。つまり、高いスキルをもっている管理者を仮想環境の運用だけに張り付けておくことが難しくなってきており、ハイパーコンバージドを導入することで、たとえば入社1〜2年目といった高いスキルをもっていない人でも容易にインフラを管理できるようにしたいというニーズが高まっているというわけです。

IS 注目している導入理由はありますか。

宝出 図表2でオレンジ色にした、ビジネスニーズへの迅速な対応につながる項目に注目しています。DXへの対応をはじめとして、事業部門の要求に応えるべく迅速にインフラを用意したいというニーズが高まっていますが、それに応えられるのがハイパーコンバージドです。迅速にインフラを構築できることに加え、スモールスタートが可能で、性能や容量の拡張性に優れている点が、小さく始めて事業の拡大に合わせてインフラを拡張したいというニーズに合致しています。

IS その逆に、導入の障害となる要因は何でしょうか。

宝出 ハイパーコンバージド・システムはハードウェアとしては汎用的なサーバーですので、安価だと想像している人が少なくないようです。ですが、実際はストレージをたくさん積み、ソフトウェアの費用も加算されます。また、3台構成からスタートするケースが多いので、期待ほど安価なソリューションではありません。ですから、初期費用だけを見てしまう場合は導入が進みづらいようです。運用管理がどれだけ効率化されるのかをきちんと評価し、運用管理コストも含めて、たとえば5年間のTCOで判断することでハイパーコンバージドの導入効果を評価できる場合は、導入が進みやすいようです。

IS 導入企業に何か特徴はありますか。

宝出 導入企業の規模や業種にまったく偏りがないのが、ハイパーコンバージドの特徴です。専任の管理者がいないような企業・団体でも導入が進んでいるのが、興味深いところです。言い換えれば、ITインフラの構築・運用に関して高い問題意識と強い動機をもっている企業が導入しています。従来の運用を変えたいと強く思っている企業が導入しているのです。

ハイパーコンバージド・システムと言っても、仮想化基盤に変わりはありませんから、現行の仮想化基盤からの移行は比較的容易です。その反対に、もし何か問題が発生した場合に、ハイパーコンバージドから従来の仮想化基盤へ戻すこともそれほど難しくはありません。その点も、ハイパーコンバージドに踏み出しやすい理由の1つと見ています。

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IS magazine No.17 (2017年10月)掲載

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