IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、生成AIの安全な利用に必要となるリテラシーを向上するため、デジタルスキル標準(DSS)とITパスポート試験のシラバスに、生成AIに関する記載を追加し、8月7日に公開した。
デジタルスキル標準の改訂
急速に普及する生成AIがもたらす各企業のDXの促進やビジネスへの影響を考慮し、有識者によるワーキング・グループで検討を行い、デジタルスキル標準の一部である「DXリテラシー標準(DSS-L)」の改訂を実施した。
DXリテラシー標準は、働き手1人1人がDXリテラシーを身につけることで、 DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目的に策定されている。その構成はWhy(DXの背景)、What(DXで活用されるデータ・技術)、How(データ・技術の活用)、マインド・スタンスの4つを骨格とし、それぞれ必要となるスキル項目と内容、学習項目例を示している。
今回の改訂では、生成AI利用で求められるスキル、リテラシー習得の必要性を強調して示すとともに、普遍的な骨格を維持しつつ、各スキル項目に説明や例示を追加している。
マインド・スタンスでは、既存の7つのスキル項目と分けて、「生成AI利用において求められるマインド・スタンス」のページを追加し、重要性を示した。生成AIを生産性向上やビジネス変革等へ適切に利用すること、生成AI利用における注意点を理解していること、生成AIの影響について変化をいとわず学び続けることなどのスタンスを示した。
ITパスポート試験のシラバス改訂
ITパスポート試験のシラバスは、出題範囲をさらに詳細化し、知識の幅と深さを体系的に整理・明確化して、「項目」ごとに学習の目標と内容を示す公開資料である。
今回のシラバス改訂では、AIに関する既存の記載に生成AI関連の記載を拡充したほか、法務やセキュリティに関する項目にも生成AI関連の記載を新たに追加している。
たとえば、ITパスポート試験の「ストラテジ」分野における「ビジネスシステム」の項目では、「AIの活用領域及び活用目的」の記載箇所に、「生成AIの活用(文章の添削・要約、アイディアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成など)」を追加している。
また「AIを利活用する上での留意事項」の記載箇所に、「AIの出力データにおける、誤った情報、偏った情報、古い情報、悪意ある情報(差別的表現など)、学習元(出典)が不明な情報が含まれる可能性」などを追加している。
さらに「著作権法」の項目では、「AI が学習に利用するデータ、AI が生成したデータについて、それぞれ著作権の観点で留意する必要があること」を追加している。
今回のシラバス改訂を受けたITパスポート試験における出題は、受験者への周知期間、学習期間等を踏まえ、2024年4月の試験から開始する予定である。また、生成AIに関するサンプル問題を8月下旬以降に公開する予定である。
IPAは今回のDXリテラシー標準改訂およびITパスポート試験のシラバス改訂により、生成AIの可能性と課題やリスクに関する学習を促進することで、生成AIの安全な利用が進み、企業や組織のDXが加速することを期待している。
◎デジタルスキル標準の改定に関する公開資料
「デジタルスキル標準」 DXリテラシー標準(PDF:2.1 MB)
◎ITパスポート試験 シラバス 公開資料
「ITパスポート試験 シラバス」Ver. 6.2(PDF:870 KB)
「ITパスポート試験 シラバス」Ver. 6.2(変更箇所表示版)(PDF:879 KB)
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