浦野 國弘氏
株式会社エム・アイ・エス
取締役社長
AIを活用した食品ロス防止システムや
大学向け基幹コアパッケージ
i Magazine(以下、i Mag) エム・アイ・エスの取締役社長に就任されるまで、ずっとIT業界で活躍されてきましたね。
浦野 私は大学を卒業後、日本ユニシスの前身にあたるバロースにシステムエンジニアとして入社し、その後は日本IBM、イグアスと、IT企業で経験とノウハウを重ねてきました。当時のエム・アイ・エスが創業30周年を機に経営体制を強化し、新しいソリューションの開発とビジネスモデルの創出を目指すにあたり、IT業界での経験を買われて、2016年に取締役社長に就任しました。
i Mag エム・アイ・エスでは、どのようなビジネスを展開しているのですか。
浦野 当社は1986年に、丸善の関連ソフトハウスとして石川県金沢市で創業しました。その後、1990年に東京事業所を開設し、現在は東京と金沢の2本社制を敷いています。SIerとして流通業や製造業はもちろん、業界内ではとくに食品・教科書・出版などに強く、システム開発、運用支援および業務ソリューションをご提供しています。
たとえば教科書供給会社向けシステムは今も当社の主力事業の1つですが、金沢をサポート拠点に全国30以上の都道府県の約8割近いお客様に向けて、現在はクラウドを活用した保守を実現し、業界のIT化促進に貢献しています。その実績を評価され、1995年には全国教科書供給協会から表彰されました。
また2012年から金沢市を拠点としたデータセンターサービスを開始し、多くのお客様のBCP対策やクラウドサービスの利用をご支援しています。
i Mag 社長就任後は、新たにどのようなビジネスモデルを目指しているのですか。
浦野 新しいビジネスモデルとしては、クラウド、AI、RPA、IoTなどの新しいテクノロジーに着目し、お客様に実践的なソリューションとしてご提供できるように体制を整えてきました。
AIでは、いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンドを得て、「AIを活用した食品ロス防止システム」を開発しました。これはAIを活用した需要予測により、無駄のない生産計画を立案し、製造原価の低減や食品ロスの防止につなげるクラウド型のAIソリューションです。食品はもともと当社の主力事業の1つで、金沢には当社がご支援する食品製造業のお客様がとても多くおられるので、このシステムをご紹介しています。おかげさまで、大変に高い評価をいただいています。
i Mag 新しいソリューション開発という領域では、どのような活動を展開していますか。
浦野 たとえば、「大学向け基幹コアパッケージ」があります。これは学生の成長支援を柱に、学生のキャリア・ポートフォリオと一体化したソリューションです。「学生情報の見える化」と「学生主体の情報管理」を中心に、退学の兆候を捉えて学生本人や担当教職員向けにアラートを発信する退学防止機能なども備えています。いわば大学のDXを推進するためのソリューションと位置付けています。
現在、DXの名のもとに、AIをはじめとした新しいテクノロジーにより、変化に迅速に対応し的確な意思決定や判断が行えるソリューションが求められています。それには何より、スキルフルな人材育成が不可欠です。当社では毎年、国内外から新たな人員を迎えて育成に取り組んでおり、2017年に設立したCIAセンターを中心に新しい技術エリアにチャレンジしています。
LANSAのリポジトリ情報を活かして
開発・改修を支援する「LREP」
i Mag IBM iビジネスには、どのように取り組んでいますか。
浦野 IBM iは当社の重点領域の1つで、早い時期からLANSAを活用して業務システムの構築に取り組んできました。今も売上の大きな割合を占める重要ビジネスです。LANSAは高品質かつ短期間でシステム開発を可能にするツールで、これにより当社の主要なお客様のシステム構築をご支援してきました。
また、LANSAの開発支援ツールパッケージとして 「LREP」(エルレップ:LANSA Repository Explorer for Productivity) を日本だけでなく、海外に向けてもリリースしました。これはLANSAリポジトリ情報を検索し、システム保守・改修で必要とされる影響調査を支援するツールで、20年以上にわたる当社のLANSA開発経験から誕生しています。
運用の歴史が長いIBM iでは今、長年にわたり開発・改修を続けてきたRPGプログラムのブラックボックス化という課題に悩んでおられるユーザーの方々が多いと思います。RPGだけでなく、LANSAについてもその課題は同じです。LANSAは基本的なプログラム履歴の管理機能を標準搭載していますが、当社では開発・改修作業に際して、LANSAのプログラム資産を調査するうえでさらに必要とされる機能を追求し、「LREP」の開発に至りました。開発生産性を大きく向上するのに加え、LANSAのリポジトリから情報を取得するので、担当者のLANSA経験やスキルに依存しない調査結果を得られる点もメリットです。
すでに何社もの大手ユーザー様にご利用いただき、大変な好評を頂戴しています。今後はAI機能を充実させ、より生産性を向上させる機能強化を計画しています。
i Mag 今後のIBM i市場、およびIBM iビジネスについてどのように考えていますか。
浦野 多くのユーザーの方々が指摘しているように、IBM iは信頼性や運用性、資産継承性に極めて優れ、基幹システムを運用するプラットフォームとしては欠かせないIT基盤です。当社にとっても、IBM iは今後も重要なビジネス領域であり、新しいテクノロジーを実践的にIBM i環境に取り入れながら、開発・運用のお手伝いをしていきたいと考えています。
株式会社エム・アイ・エス https://www.mis.co.jp/
[i Magazine・IS magazine]