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IBM Power、IBM iへの原点回帰を鮮明に Power市場のプラットフォーマーを目指す ~上野 誠也氏 ベル・データ 代表取締役社長

上野 誠也氏
ベル・データ株式会社
代表取締役社長

2024年10月、上野誠也氏がベル・データの代表取締役社長に就任した。創業から数えて4代目の若き社長は、今を第三創業期と位置付け、100年存続する企業となるべく、そしてPower市場のプラットフォーマーを目指して、新たな戦略を打ち出している。

「100年存続する企業」に向けて第三創業期へ

i Magazine(以下、i Mag) ベル・データに入社して、どのぐらいになるのですか。

上野 私は熊本県八代市の出身で、地元の大学を卒業しました。当時九州地区を管轄するベル・データの九州支店は熊本市にあり、2000年にそこへ入社しました。だから最初の勤務地は熊本です。当時は全社でまだ40名ほどの小さな会社でしたが、入社して2年ぐらい経ったとき、自分はこの会社を引っ張っていける存在になりたいと強く思ったことを覚えています。何も知らなかった自分を育ててくれた会社に対して、もっとよい会社にしたいという思いがありました。

i Mag 入社してからずっと熊本ですか。

上野 2004年に九州支店を熊本市から福岡市に移転したので、それとともに私も福岡へ移りました。営業部の主任、課長、支店長となり、九州の地でたくさんの出会いに恵まれてビジネスを経験し、2016年に大阪支店長として、大阪に勤務地を移しました。2018年に執行役員 西日本営業統括部長になり、中部地区以西の営業責任者となりました。IBM Power(IBM i)の事業責任者として、東京に移ったのは2023年1月です。

i Mag そして代表取締役社長への就任は2024年10月ですね。若き日の夢が、22年を経て現実のものになったわけですね。

上野 そういうことになります。ベル・データは1991年に設立され、創業者の今井、2007年に就任した小野寺、2018年に就任した鈴木を経て、私は4代目の社長になります。創業時を第一創業期と位置付けていますが、IBM Power(当時のAS/400)の中古機輸入・販売と自社技術員による保守サービスで、とにかく自社サービスの付加価値を必死に高めた時代です。

その後、小野寺就任の第二創業期では新たな製品やソリューションパートナーとの協業により、オープン・ネットワークビジネスの拡大やデーターセンタービジネスへの積極的参入、そしてアプリケーション保守からアプリケーション開発、さらには社会課題への取り組みなど新しい挑戦を続けてきました。

i Mag このころから、ベル・データの企業イメージは大きく変わっていきますね。

上野 そのとおりです。第二創業期では中古機ビジネスから大きく転換して、「One Stop Service」を掲げました。IBM Power(IBM i)市場でのNo.1を目指すと同時に、オープン系までを含めた全方位で、お客様のご要望にワンストップで何でもお応えしようとサービスを充実させていきました。

このころから、日本IBMやビジネスパートナーとの関係も大きく変化していきました。特に日本IBMとは、「競合」から「協業」へと関係性が変わり、中古機販売や保守サービスで競合する立場から、ともにIBM Power(AS/400、IBM i)を発展させていこうと、協業するパートナーへ立ち位置が変わっていきました。ベル・データが積極的に表舞台へ進出していった時期であり、市場での認知度も高まり、それに伴って私自身も充実感や達成感を強く感じるようになりました。

i Mag そして鈴木社長へとバトンが渡され、準備期間を経て2020年10月から第三創業期が始まるわけですね。

上野 そのとおりです。第三の創業期では10年をかけ、100年存続する企業を目指した礎作りを行います。これまで以上に企業を成長させていくため、グループ経営という経営形態を選択し、「技術探険と共創で、社会に安心を届ける」ことを我々の存在意義(パーパス)として掲げました。

最初に着手したのは、グループ経営の土台づくりです。小野寺はある意味、カリスマ経営者でしたから、その後継を1人で担うのは難しいと判断し、グループ経営により皆の力を結集して歩もうと考えたわけです。中長期戦略として、「BELLグループ Vision 2030」を策定し、3年ごとに中期経営計画を立案、実践を繰り返すことで目標の達成を目指しています。

i Mag 具体的には、どう実践していくのですか。

上野 「BELLグループ Vision 2030」では、2030年に達成したい未来を定義し、「人財作り」「事業作り」「器作り」という3つの基本戦略を定めています。10年間、この3つを軸に「変化に強いグループ経営」を目指すことで、100年存続する企業に向けた礎を築こうというわけです。

たとえばこのなかの「事業作り」として、2021年9月期からは5つの事業を強力に推進してきました。インフラサービス/DCサービス事業、アプリケーション事業、レンタル事業、Power事業、防災事業の5つです。それぞれにKPIを設定し、目標をクリアしてきました。

IBM Power、IBM iへの原点回帰を鮮明に

i Mag そしていよいよ上野さんが社長に就任した2024年10月から、セカンドステージが始まるわけですね。

上野 セカンドステージのテーマは、「各事業の強化」です。ファーストステージで注力していた5つの事業分野を見直し、セカンドステージではPower事業、アプリケーション事業、防災事業の3つに絞りました。防災事業は2023年10月に設立したグループ会社であるmilab(ミラボ)株式会社に移管しているので、ベル・データ本体として注力するのは、Power事業とアプリケーション事業の2つになります。

これはIBM Power、IBM iビジネスへの原点回帰だと考えています。One Stop Serviceでは、IBM iからオープン系までワンストップでご提供することを目指しましたが、再度事業を見直し、当社の強みや優位性を最も発揮できる事業領域として、Power事業とアプリケーション事業の2軸を据えました。

アプリケーションもIBM i、およびその周辺で連携するオープン系システムを対象としますが、核になるのはIBM iで、はっきりとIBM iにフォーカスを定めています。私が2023年1月にIBM iの事業責任者として東京へ移り、Power事業部長に着任したことはこの戦略に基づいた動きです。

i Mag なぜIBM iにフォーカスしようと考えたのですか。将来性を危惧して、IBM iからオープン系へ軸足を移そうかと悩むビジネスパートナーも少なくありません。

上野 だからこその、「使命感」だと言えます。確かに今、お客様にも、そしてビジネスパートナーにも、IBM iの将来性を懸念し、「いつまでこのプラットフォームを利用していけるだろうか」「いつまでこのプラットフォームでビジネスを展開していけるだろうか」という不安感が漠然と漂っていることは事実です。だからこれからも安心してIBM iをお使いいただけるように、当社が率先して市場を支え、切り拓いていこうと考えています。

i Mag Power事業を展開するにあたり、どのような施策を考えていますか。

上野 クラウドサービス、パートナーとの共創、コミュニティの形成、Power×Open
×AIのハイブリッドプレイヤー、そしてストックサービス強化の5つです。

まずクラウドサービスでは、2024年1月に日本情報通信とともに立ち上げた「PowerCloudNEXT」を積極的に展開し、IBM PowerのNo.1クラウドに成長させていくことが挙げられます。

それからパートナーとの共創ですが、これは当社が今まであまり実施してこなかったので、チャレンジングな領域と言えます。パートナーのなかには技術力や人的リソースの問題から、もうこれ以上、IBM iのお客様をサポートしていくのは難しいと悩んでおられる方々がおられます。お客様は、できればIBM iの運用を今後も継続したいと望んでおられるのに、パートナー側の事情でサポートできないのは実にもったいない話です。

そこで当社の技術力やノウハウ、経験、人的リソースがお役に立つのであれば、ベル・データがお手伝いしますから、いっしょにお客様へのサポートを続けましょうというスタンスで、アプローチしていこうと考えています。うちは黒子に徹しますから、ぜひ一緒にやっていく仲間として協業しましょう、ということです。

i Mag これまでベル・データは手強い競合相手だと警戒していた方々から見て、今後は手を携えて前に進める頼もしいパートナーになるわけですね。

上野 そのように認識していただけるよう努力をしていきたいですね。実際のところ、最近は関東圏からも、そして地方からもSOSに近い要請が寄せられるようになっていますから、ニーズは高いと考えています。

Power市場のプラットフォーマーになるために

i Mag 3つ目がコミュニティの形成ですね。

上野 そうです。当社ではe-bellnetという情報サービスを展開しており、メールマガジンには約1万人の購読者がいます。配信という一方通行の側面から、少しずつですが購読者の方々からフィードバックを得て、その要望にお応えした情報提供を行う双方向化や、お客様同士が情報交換・コミュニケーションを図るセッションを開催するなど、徐々に仕組みを構築しています。今後はこのe-bellnetを核としたコミュニティプラットフォームを醸成させていきたいです。

4つ目は、Power×Open×AIのハイブリッドプレイヤーとなることです。鍵はやはり注目の生成AIです。当社では今年9月に、IBM iと生成AIを連携させるサービス「生成AI連携サービス for i」を発表しました。これはIBM iとAzure Open AIを連携させたクラウドサービスで、運用担当者向けの技術支援機能やデータ抽出など、IBM iの技術継承に伴う後継者問題を解決するためのサービスとして発展させていきたいと考えています。従来の基幹システムを生成AIによってどのように使いやすくし、将来に向けて継承し、生産性を高めていくかが重要なテーマになります。

また、当社はIBM Powerを中心とした企業ですが、その周辺に位置するさまざまなオープン系システムや連動するクラウドサービス、さらにはアプリケーションなどのサポートにも力を入れており、優秀なエンジニアが多くいます。彼らのスキルをさらに活かすべく、このPower×Open×AIの領域で存在感を高めたいと考えています。

そして5番目が、ストックサービス強化です。今まで展開してきたレンタル事業を、サブスクリプションを軸にした新たなレンタルスキームとして展開すべく検討中です。

また、当社の代名詞である保守サービスや監視・運用サービス、データセンターサービス、ヘルプデスクサービスなどを進化させ、お客様により付加価値をお届けできるよう改善を続けていきます。

アプリケーションビジネスについても同様に、IBM iとその周辺システムを含めて、モダナイゼーション改革、アジャイルの推進、生成AIを活用したサービスの拡充などを施策として掲げています。

i Mag さらに2027年10月から2030年9月までの期間で、第三創業期のファイナルステージに突入するわけですね。

上野 そうです。ファイナルステージのテーマは、「グループ間シナジーの創出」で、具体的には次の中期経営計画で明らかにする予定です。これらの道のりを経て、2030年には、100年存続する企業の礎が構築できていることを目指します。

それと同時に、Power市場のプラットフォーマーとなることが、重要なテーマです。ベル・データがご提供するPower事業のプラットフォームは、お客様が直面するさまざまな社会課題に対し、異業種やお客様同士の連携を通じて新たな価値を生み出す共創基盤と位置付けています。前述したように、BELLグループの存在意義(パーパス)を「技術探検と共創で、社会に安心を届ける」と謳っていますが、プラットフォーマーになるとはそういう意味だと考えています。

「IBM iであれば、ベルに任せておけば安心だ」と思っていただけるように、お客様、そしてパートナーの方々にも今後、安心してIBM iをお使いいただけるように、社員一同努力していきたいと思います。

上野 誠也氏
2000年にベル・データに入社、九州支店営業部に配属。2011年に九州支店長、2016年に大阪支店長に就任、2018年に執行役員、大阪支店長 兼 西日本営業統括部長。2020年に執行役員、西日本営業本部長。2023年に執行役員、IBM i事業責任者 兼 ベル・ホールディングス 経営企画室長。2024年、取締役 Power事業部長に就任。2024年10月より現職。

撮影:広路和夫

 

[i Magazine 2024 Winter号掲載]

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