LongRangeとTOUGHPADにより、バーコードスキャン機能をスマートデバイスに実装
専用ハンディターミナルから
スマートデバイスへ
片桐企業グループは、北海道で活躍する総合レンタル企業グループである。
中核事業会社は、今年で創業から82年目を迎える片桐機械で、建設機械・安全機器のレンタルおよび販売事業を主軸に据える。
それに仮設資材、物流機器、介護用品のレンタル・販売事業を展開する日建片桐リース(株)。オフィス機器やIT機器、イベント関連用品のレンタル・販売を手掛ける(株)レンタコム北海道。汚泥リサイクル事業を展開する(株)レンテック。さらにグループ内外にITシステムの構築・運用保守サービスを提供する北海道オフィス・システム(株)(以下、HOS)や、財務経理・総務・企画のシェアサービスを提供するカタギリ・コーポレーション(株)などの各社がグループを形成している。
同グループでは1986年にシステム/38を導入して以来、販売・在庫管理、人事・給与管理などの基幹システムをIBM iで運用してきた。2013年からは、HOSがグループ向けに提供するIBM iのプライベートクラウドへ基幹システムを移行している。HOSの提案により、グループ内では新しいシステム利用がさまざまな形で実現しているが、最近運用を開始したのが、レンタル機器の出入庫業務を支援するモバイルアプリケーションである。
大型の建設機械からオフィス・OA機器、イベント用など、同社からレンタル商品を借り受ける場合は通常、「工場」と呼ばれる同社の在庫管理ヤードに顧客が赴き、出庫手続きを終えてから機器や用品を運送車両に積み込む。これには数種類の手書き伝票処理が必要となる。返却する際の入庫作業でも同様である。
こうした煩雑な伝票作業の改善に同グループが初めて取り組んだのは、約10年前に遡る。2007年に、日建片桐リースとレンタコム北海道の2社が5250エミュレータを搭載した専用ハンディターミナルを導入し、バーコードスキャンによる伝票入力を実現。手書き伝票の記入ミスや基幹システムへの再入力作業などの解消に成功した。その後、2013年には片桐機械も同じ仕組みを導入している。
しかし昨今、スマートデバイスの普及とともに、出入庫業務の現場からは新たな要望が寄せられるようになった。
「ハンディターミナルの画面は名刺サイズぐらいで表示量が少なく、作業時に見づらい点が以前から指摘されていました。また参照のみで入力は行えず、タイムリーな在庫・予約数を現場で確認するといったニーズにも応えられませんでした」と語るのは、HOSの花田滋雄代表取締役社長である。
HOSの花田滋雄代表取締役社長
LongRangeとTOUGHPADで
厳しい環境条件をクリア
ハンディターミナルの新機種を導入して、今の仕組みを継続利用することも考えたが、導入コストが高額で、ピッキングに特化しているため用途が限定される。そのうえ今のままだと、管理用のWindowsサーバーの導入コスト、メンテナンスやOSのバージョンアップ作業なども必要であった。
「当社では2015年ころから、RPGを活用してネイティブ型のモバイルアプリを開発するランサ・ジャパンの『LongRange』に着目し、機能や性能を調査していました。そこでLongRangeを使って、バーコードスキャン機能を搭載したモバイルアプリを開発し、出入庫業務を改善できないかと考えたのです」と、HOSの情報システム室 棚橋賢司室長は語る。
HOSの情報システム室 棚橋賢司室長
ただし出入庫業務の現場は、環境条件が厳しい。道内の工場では冬季の気温が零下25度まで下がることも珍しくなく、端末には高い防塵・防滴・防水性、さらに耐環境性や耐衝撃性などが求められる。そうした要件をクリアするモバイル端末を探していた2016年夏、パナソニックから「TOUGHPAD」の新製品(FZ-N1、バーコードリーダー搭載モデル)がリリースされた。これはバーコードスキャン機能を実装し、厳しい環境条件にも耐えうる頑強なAndroid端末。レーザー照射角が斜めなので、画面を見ながらスキャンできるといった特徴を備える。
「TOUGHPAD」(FZ-N1、バーコードリーダー搭載モデル)
「TOUGHPADであれば、当社の条件をクリアできると判断しました。ただそれまでLongRangeにはTOUGHPADの活用例がなかったので、ランサ・ジャパンと共同で検証テストなどを実施し、問題ないと判断して、モバイルアプリの開発に踏み切りました」と、開発を担当したHOSの情報システム室 神田隆太係長は言う。
HOSの情報システム室 神田隆太係長
LongRangeで開発したのは48画面、プログラム数で62本。同社の開発者2名がトレーニングを含めて約3カ月、実質的には2カ月程度で開発を完了させた。
最初の導入は2017年1月、レンテックの建設機器レンタル部門である。同年4月に同部門が片桐機械へ移管・統合されたのを受け、現在は片桐機械が利用している。
この導入により、バーコードスキャンを活用した出入庫業務に加え、商品の出入庫情報の確認、工場内での出入庫指示書や伝票の印刷、各拠点の在庫状況や予約数の確認など、多様なデータの参照が可能になった。工場内のプリンタで指示書などを直接印刷できるので、顧客は今までのようにヤードと管理事務所を行き来して、受付作業を行うこともなくなり、顧客サービスの向上に役立っているという(図表1)。
【図表1 画像をクリックすると拡大します】
同グループでは出入庫業務用に合計35台のハンディターミナルを導入しているが、段階的にTOUGHPADにリプレースしていく計画である。
また2018年度には端末のカメラ機能を活用し、修理の必要なレンタル機器の破損部分を撮影して基幹システムの検収データに連携させていく予定もある。
単なるデータ参照だけでなく、スマートデバイスの端末機能を最大限に活かしたネイティブアプリにより、同グループ全体で現場作業の改革を目指していくようだ。
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COMPANY PROFILE
片桐機械株式会社
本社:北海道札幌市
創業:1935年
設立:1952年
資本金:5000万円
従業員数:167名(2017年4月)
事業内容:建築土木を中心とする建設機械器具および産業機械器具のレンタル・販売
http://www.katagiri-g.com/katagiri/
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北海道オフィス・システム株式会社
本社:北海道札幌市
設立:1990年
資本金:8000万円
従業員数:18名(2017年4月)
事業内容:IT機器・ソリューション販売、システム構築運用保守関連業務
http://www.katagiri-g.com/hos/
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i Magazine 2017 Winter(11月)に掲載