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特集|RPG進化論 Part1 ~RPGを新次元に導く完全フリーフォーム徹底解説

2013年10月にリリースされたIBM i 7.1 のTechnology Refresh (TR)7で、同時期にRPGの完全フリーフォーム化が実現した。固定フォームからの完全解放はRPGの機能をさらに進化させると同時に、JavaやPHPなどオープン系言語のプログラマーにRPGの存在を近づける。ここでは、注目のフリーフォームRPGの内容を詳しく紹介する。

◎本記事は、i Magazine 2014年2月号に掲載されたものです。RPG Ⅳの基本情報に大きな変更はないため掲載します。

 

 2013年に25周年を迎えたIBM i 。同年10月にはIBM i 7.1 TR7が発表され、時を同じくしてRPGにも大きな進化があった。ほぼすべての構文がフリーフォーム化され、固定フォームの制限から解放されたのである。

 IBMは今回のフリーフォーム化により、既存のRPGプログラマーはもちろんのこと、JavaやPHP、Visual Basicなどの開発経験がある新規RPGプログラマーにとっても、RPGがより理解しやすいものとなったとしている。

 振り返ってみると、RPGのフリーフォーム化はOS/400 V5R1のC仕様書フリーフォーム化から始まった。IBMでは、OS/400 V5R1からV5R2までをRPGの進化における第1フェーズと位置づけている。第2フェーズは、i5/OS V5R3からIBM i 7.1までで、組み込みSQLがフリーフォーム化された。そして今回が第3フェーズとなる。

 第3フェーズでは新たに、制御(H)仕様書、ファイル(F)仕様書、定義(D)仕様書、プロシージャー(P)仕様書がフリーフォーム化された。これで、入力(I)および出力(O)仕様書とRPGサイクルなどを除き、すべての構文がフリーフォーム化されたことになる。

 本稿では第3フェーズで変革を遂げたRPGについて、使用の前提要件から新フリーフォーム文法、導入にあたっての考慮点などを考えてみる。

 

フリーフォームRPGを
使用するための前提要件

 フリーフォーム構文のRPGをコンパイルするには、IBM i 7.1にRPGコンパイラー用PTF SI51094の適用が必要である。同PTF適用後もRPGは上位互換であり、固定フォームRPGのコンパイルをサポートする。

 コンパイルされたフリーフォームRPGのプログラムは、同PTFやTR7が未適用のマシン上でも実行できる。ただし、コンパイル時にターゲット・リリース(TGTRLS)がサポートされないので、IBM i 7.1上でのみ実行可能である。

 なおPTF SI51094の適用は、TR7の適用を前提としない。つまりTR7が未適用であっても、PTFを適用してフリーフォームRPGを使用できる。

 

●IBM i の前提要件

コンパイルおよび構文チェック
OS:IBM i 7.1
PTF:SI51094の適用(5770WDS、即時適用可)コンパイル済みプログラムの実行
OS :  IBM i 7.1

GUI統合開発ツールの「IBM Rational Developer for i」図表1は、v9.0.1 がフリーフォームに対応する。

 

●GUI統合開発ツールの前提要件

IBM Rational Developer for i 9.0.1

これ以降、フリーフォームRPGについて解説を進める前に、小文字でのコーディングについて注意点を述べておく。

 

 本稿で紹介するサンプルコードは小文字でコーディングされたものがほとんどだ。これらのサンプルコードを使用する際には、ソース物理ファイルのCCSIDとエミュレータ端末のコードページの設定に注意してほしい。たとえば、ソース物理ファイルのCCSID=5035の場合は、エミュレータのコードページ=939という組み合わせが必要となる。

 

 

フリーフォームRPGの概要

 ここでは、フリーフォーム化の概要とそのメリットについて見ていこう。また、最後に今回のフェーズで変更されない部分についても触れる。

 

各種仕様書のフリーフォーム化

 今回の目玉は制御(H)仕様書、ファイル(F)仕様書、定義(D)仕様書、プロシージャー(P)仕様書がフリーフォーム化されたことである。以下にその概要について述べる。

・ 仕様書の構文概要

 フリーフォーム構文の仕様書は、命令コードで開始し、セミコロンで終了する。コーディングの詳細は後ほど解説するので、ここでは以下に仕様書宣言のための命令コードとコーディング例を示す。なお、命令コードは大文字でも小文字でもかまわない。

 

○ 仕様書宣言の命令コード一覧

 

○ 仕様書のコーディング例

 

・ 長い名前やキーワードでも容易なコーディング

 仕様書がフリーフォーム化されるメリットの1つは、コーディングが容易になり、ソースコードの可読性が高まることだ。固定フォームは入力桁に厳しい制限があり、名前やキーワードの長さによっては、仕様書のコードが複数行にわたることがあった。

 フリーフォームの場合、8〜80桁目までであれば入力桁数を気にすることなく、名前やキーワードの入力が可能である。これでほとんどの仕様書は、1行でコーディングできるはずである。コーディング後に名前やキーワードの変更があっても、複数行にわたって桁数を調整しつつ修正する必要はない。メンテナンスも容易になるだろう。

 

○ 固定フォームの定義(D)仕様書例:長い項目名

 

○ フリーフォームの定義(D)仕様書例:長い項目名

 

○ 固定フォームの定義(D)仕様書例:長いキーワード

 

○ フリーフォームの定義(D)仕様書例:長いキーワード

 

固定フォームとフリーフォームの混在

 以前から固定フォーム構文とフリーフォーム構文の混在は可能であったが、今回のフリーフォームRPGもそれが可能である。大きく変わったのは、/FREE、 /END-FREEを使ってフリーフォーム部分を範囲指定する必要がなくなったことである。ソース内の/FREE、/END-FREEはコンパイラーから無視される。

 

○ 従来の混在コード例

 

○ フリーフォームRPGの混在コード例

 

仕様書構文内のコンパイラー指示

 仕様書の宣言構文内で、/IF、 /ELSEIF、 /ELSE、/ENDIFコンパイラー指示が使用できるようになった。

 

○ コンパイラー指示を含む仕様書例

 

固定フォームとフリーフォームの双方で使用可

これはつまり、/COPY対象のファイルに書かれている構文と、コピー先構文のフォームが異なる場合もコピーが可能ということである。下記の使用例1は、固定フォーム構文が書かれたfile1がコピー対象ファイルであり、コピー先はフリーフォーム構文で書かれた定義(D)仕様書である。これに対して使用例2は逆のパターンとなる。

 

○ /COPY構文の使用例1

<固定フォーム構文が書かれたファイルfile1の内容>

<フリーフォーム構文内でのfile1のコピー>

 

○ /COPY構文の使用例2

<フリーフォーム構文が書かれたファイルfile2の内容>

 

<固定フォーム構文内でのfile2のコピー>

 

名前付き定数のキーワードとしての使用

名前付き定数をキーワード値として使用できるようになった。下記の例では、QTR_END_RPT_FILEという名前の定数を使って、ファイル(F)仕様書のファイル名を指定している。なお、名前付き定数の宣言ルール等については後述する。

 

○ 名前付き定数のキーワード値としての使用例

 

制限の残る部分

 ここまで見てきたように、RPGの主要部分はほぼフリーフォーム化されたと言える。「フリー」でない部分は、以下を残すのみとなった。

・フリーフォームのコードの入力は、8〜80桁目まで

・入力(I)仕様書と出力(O)仕様書は固定フォームのみ

・RPGサイクル関連のコードは固定フォームのみ

 

制御(H)仕様書

基本構文

 フリーフォームの制御(H)仕様書は、命令コードCTL-OPT(Control-Option)で開始する。キーワードがあればそれが続き、最後はセミコロンで終了する。

 例1は、3つのキーワードを指定する制御(H)仕様書の例である。CTL-OPT命令コードで始まり、キーワードが3つ続いて、セミコロンで終了している。キーワードによる指定内容は、日付形式=*ISO、時刻形式=*ISO、ヌル値を含むレコードの処理=*USRCTLとなる。

 

○ 制御(H)仕様書の例1

 

その他のルール

 複数の制御(H)仕様書を宣言でき、固定フォームの制御(H)仕様書との混在も可能である。なお、繰り返しが許されないキーワードは、すべての制御(H)仕様書にわたって1度しか指定できない。

 また、フリーフォームの制御(H)仕様書が1つでも含まれていて、コンパイル・オプション・キーワードACTGRP、BNDDIR、STGMDLのいずれかがあれば、DFTACTGRP(*NO)がデフォルトで指定されるので、これを明示的にコーディングする必要がなくなった。

 

○ 制御(H)仕様書の例2

 

ファイル(F)仕様書

基本構文

 ファイル仕様書は、DCL-F(Declare file)で開始し、ファイル名、0個以上のキーワード、セミコロンで終了する。

 以下の例は、外部記述DISKファイルの定義である。DCL-Fで始まり、ファイル名、キーワードが2つ続き、セミコロンで終了している。DISK(*EXT)で外部記述DISKファイルを指定し、USAGE(*INPUT)により入力用のファイルであることを指定している。

 

○ ファイル(F)仕様書の例

 

ファイル名の指定

 EXTFILEキーワード(外部記述であればEXTDESCも必要)があれば、10文字以上の名前が使用できる。

 

○ 10文字以上のファイル名を持つファイル仕様書の例

 

キーワードの指定

 ファイル(F)仕様書の一番目のキーワードは、装置タイプまたは LIKEFILE でなければならない。また、デフォルト値を持つキーワードやパラメーターがあり、明示指定しない場合はそれらの値が使用されることになる。

ファイル仕様書の主要なキーワードに注目してみよう。

・ 装置タイプ

 装置タイプはDISK、PRINTER、SEQ、SPECIAL、WORKSTNの5つあり、明示指定しない場合のデフォルトは DISKである。さらに各キーワードには、オプションで指定できるパラメーターが2種類用意されている。

 1つ目は外部記述を意味する「*EXT」で、これがデフォルト値となる。もう1つはプログラム記述の場合に指定する「レコード長」である。これらのデフォルト値により、装置タイプを指定しない場合は、DISK(*EXT)を指定したのと同じになる。

 

○ ファイル仕様書の例〜装置タイプ

・ ファイルタイプ

ファイルタイプは、USAGEキーワードで指定する。USAGE

キーワードは、*INPUT、*OUTPUT、*UPDATE、*DELETEの4つである。これらを組み合わせると、固定フォームのファイルタイプ (I、O、U、C) やファイルの追加と同様のことが指定可能となる。

たとえばファイルタイプ=U、ファイルの指定=F、つまり更新・全手順ファイルの場合は、USAGE(*UPDATE:*DELETE)と指定する。指定方法の詳細については、図表2を参照されたい。なお、キーワードを明示指定しない場合は、装置タイプに依存したデフォルト値が使用される図表3

 

 

○ ファイル仕様書の例〜USAGEキーワードの非明示指定

 

 USAGEキーワードの使用で、注意すべきことがある。固定フォームのファイルタイプとフリーフォームUSAGEキーワードには、INPUT(固定:I、 フリー:*INPUT)やUPDATE(固定:U、フリー:*UPDATE)といった同じ値が存在するが、その意味するところが異なる場合がある。

 たとえば、固定フォームのファイルタイプ“U”は、入力(INPUT)・更新(UPDATE)・削除(DELETE)が可能だが、フリーフォームのUSAGEキーワードに*UPDATEを指定しても、レコードの削除(DELETE)はできない。明示的に*DELETEを指定する必要がある図表4

 

 

○ ファイル仕様書の例〜USAGEキーワードの明示指定

 

・ キー付きファイル

キー付きファイルについては、外部記述ファイルとプログラム記述ファイルで指定方法が異なる。指定方法は、図表5に示すとおりだが、プログラム記述ファイルでは文字列キーのみがサポートされるので注意したい。文字列キー以外については、データ構造を使用することになる。

 

 

○ キー付きファイルの宣言例

 

○ キー付きプログラム記述ファイルの宣言例

 

ファイル(F)仕様書と定義(D)仕様書の混在

フリーフォームRPGでは、ファイル(F)仕様書と定義(D)仕様書を混在させてコーディングできるようになった。ソースコード内で関連する項目の宣言文をまとめておけば、よりわかりやすいコードとなり、後のメンテナンスも容易になる。なお、固定フォームの仕様書であっても混在可能である。

 

○ ファイル(F)仕様書と定義(D)仕様書の混在例

 

ファイル(F)仕様書の変更点のまとめ

最後に、ファイル(F)仕様書のフリーフォームの比較を図表6に示す。今回かなり大きな変更が加えられ、対応するフリーフォームがないものもある。固定フォームと勝手が違い、馴染みにくいと感じるかもしれないが、柔軟なコーディングや明示指定なしで使用できるデフォルト値などフリーフォーム化によるメリットは大きい。

 

定義(D)仕様書

 定義(D)仕様書では、名前付き定数、独立フィールド、データ構造、プロシージャー・プロトタイプ、プロシージャー・インターフェースの5つの項目を定義できる。

 

基本構文

 命令コードDCL-X(Xは定義項目に依存)で開始し、定義項目の名前(名前がない場合は*Nも可)、0個以上のキーワードが続き、セミコロンで終了する。

 以下の例は、独立フィールドの定義である。DCL-S命令コードにより独立フィールドの宣言を開始し、独立フィールド名limitが続く。次に、PACKEDキーワードにより5桁のパック・フィールドであることを指定し、INZキーワードで初期値を200としている。最後はセミコロンで終了である。

 

○ 定義(D)仕様書の例

 

複数行にわたる宣言〜継続行

 フリーフォームでは、定義項目の名前の最後に省略記号“…”は使わない。次の行に名前が継続する場合にのみ、省略記号“…”を使ってつなげることができる。構文の余りと名前をつなげるために使用することもない。

 

データ型キーワード

 データ型キーワードには、CHAR、INT、POINTERなどのようにキーワード名とデータ型が一致しているものと、そうでないものがある(図表7)。キーワード名とデータ型が一致しているものについては、これまでのデータ型と同様と考えてよい。一方、データ型とそれを修飾するキーワード(VARYING、DTFMTなど)が統合されて新しいデータ型となったものがあり、注意が必要である。

 新しいデータ型は、VARYING、DATFMT、TIMFMT、PROCPTR、CLASSなど、従来のデータ型を修飾するキーワードとデータ型が統合して作られている。たとえば、VARCHARというデータ型キーワードは、文字データ型(A)とVARYINGキーワードを統合したものだ。以下に、いくつかの例を挙げる。

 

 

○ キーワード名とデータ型が一致している例

 

○ データ型と他キーワードの統合例

 

○ データ型の宣言例:固定フォームとフリーフォーム

 

名前付き定数

基本構文

 命令コードDCL-Cで開始し、定数名、オプションでCONSTキーワード、値が続き、セミコロンで終了する。CONSTキーワードがなくとも定義の意味は変わらない。

 以下の例1および2では、それぞれ同じ定義内容で3つの定数を定義している。違いはCONSTキーワードがあるかないかだけであり、定義の意味するところは変わらない。

 1番目のmin_numは­─­­­50という値を持ち、次のmax_numは200という値を持つ。最後のfirst_letterは‘A’という文字値を持つ定数である。

 

○ 名前付き定数の宣言例1〜CONSTキーワードあり

 

○ 名前付き定数の宣言例2〜CONSTキーワードなし

 

 注意すべき点は、リテラル値に対する引用符( ‘)の使用がフリーフォームと固定フォームとで異なることである。固定フォームではDTAARA、EXTNAME、EXTFLDなどのキーワードのパラメーターについて、リテラルを引用符(‘)で囲まずに指定できたが、フリーフォームではできない。

 下記の例では、文字リテラル値を持つnameという定数が定義されている。DTAARAキーワードのパラメーター指定で、これがどのように働くかを見ていこう。

 まず固定フォームで定義したdata1では、実行時に「*LIBL/NAME」が使用される。引用符(‘)なしでリテラルを指定できるからだ。

 一方、フリーフォームによる定義のdata3では、実行時に「MYLIB/DTAARA1」が使われる。data1と同様に「*LIBL/NAME」を使いたい場合は、DTAARA(‘NAME’)、またはDTAARA(‘*LIBL/NAME’)と指定しなければならない。

 次にdata2の定義を見てみると、*VARを使ってデータ域名を変数または定数で指定している。フリーフォーム(data4)では*VARが不要なので、data3と同様の指定方法となる。

 

○ 固定フォームとフリーフォームのリテラルの取り扱い例

 

独立フィールド

基本構文

 命令コードDCL-Sで開始し、定義項目名、データ型キーワード(オプション)、0以上のキーワード、最初のキーワードが続き、セミコロンで終了する。

 1番目のキーワードは、データ型キーワードかLIKEキーワードにする必要がある。データ型キーワードが存在する場合は、そちらを1番目にしなければならない。LIKEキーワードを使用する場合は、データ型キーワードは指定不可である。LIKEキーワードは、オプションで2番目のパラメーターを使って長さを指定できる。

 以下の例では、4つの独立フィールドを定義している。どれもDCL-S命令コードで始まり、定義項目名、キーワード、セミコロンで終了している。

 上の2つはパック・フィールドの定義例である。salaryは9桁(小数点以下2桁)で初期値0、qtr_salaryは7桁(小数点以下2桁)で初期値0である。

 下の2つは文字フィールドで、first_nameは固定長10文字で初期値が‘Taro’、last_nameは可変長で最大20文字である。

 

○ 定義仕様書〜独立フィールドの例

 

データ構造

基本構文

 命令コードDCL-DSで開始し、データ構造の名前(名前がない場合は*N)、0個以上のキーワードが続き、セミコロンで終了する。次にサブフィールド定義が続き、最後はEND-DS構文で終了する必要がある。オプションでEND-DSの後にデータ構造名を続けてもよい。

 またサブフィールドを持たない場合は、END-DSをDCL-DS構文の一部とすることもできる。この場合は、END-DSの後にデータ構造名を続けることができない。

 以下は、プログラム記述データ構造の例である。どちらもDCL-DSで始まり、データ構造名、サブフィールド定義が続き、END-DS構文で終了している。

 datastr1は、サブフィールドに固定長10文字の文字フィールド2つとパック・フィールド1つを持つデータ構造である。END-DSの後にデータ構造名が続いている。

 datastr2は、likedsキーワードによりdatastr1と同様のデータ構造を持つ。サブフィールドの定義がないので、END-DSをDCL-DS構文の一部としている。

 

○ データ構造の例

 

外部記述データ構造

外部記述の場合は、EXTキーワードもしくはEXTNAMEキーワードを1番目のキーワードとして指定しなければならない。END-DSはDCL-DS構文の一部としてもよいし、次の行で指定してもよい。

 

○ 外部記述データ構造の例

 

プログラム記述データ構造

プログラム記述でサブフィールドを持つ場合は、END-DS構文でサブフィールド・リストを終了する。サブフィールドを持たない場合は、END-DSをDCL-DS構文と同じ行にコーディングできる。

なお、END-DS構文はLIKEDSやLIKERECで定義するデータ構造では使用しない。

[サブフィールド宣言]

サブフィールドは、正式にはDCL-SUBで開始する。しかし、サブフィールドの名前がRPGの命令コード(add、readなど)と同じでない場合は、DCL-SUBの指定は任意である。

 

○ サブフィールドを持つプログラム記述データ構造の例

 

○ サブフィールドを持たないプログラム記述データ構造の例

 

○ LIKERECを使用するデータ構造の例

 

[POSキーワード]

 フリーフォームでは、データ構造のオーバーレイにPOSキーワードを使用する。固定フォームでの開始・終了位置およびOVERLAYが、POSキーワードに置き換えられた形だ。

 フリーフォームにもOVERLAYキーワードは存在するが、これはサブフィールドのみをオーバーレイする。データ構造をオーバーレイしたい場合は、POSキーワードを使用しなければならない。

 固定フォームのOVERLAY(ds:*NEXT)に対応するフリーフォーム構文は存在しない。OVERLAY(ds:*NEXT)は、“ここまでの全サブフィールドの後から”を意味しており、これはつまり、何もオーバーレイしないことと同じであるからだ。

 

○ POSキーワードの例

 

プロシージャー・プロトタイプ

基本構文

 DCL-PRで開始し、プロトタイプ名、0個以上のキーワードが続き、セミコロンで終了する。プロシージャーに戻り値があり、そのデータ型をデータ型キーワードで指定する場合は、それを1番目のキーワードにしなければならない。

 定義の最後には、END-PR構文が必須である。オプションで、END-PRの後にプロトタイプ名を続けてもよい。パラメーターがない場合は、END-PRをDCL-PR文に続けて1つの構文にできる。ただしこの場合は、END-PRの後にプロトタイプ名を続けることができないので注意しよう。

 例1は、どちらもプロシージャーの戻り値のデータ型を指定した例である。1番目のキーワードでCHAR(10)を指定し、プロシージャーが固定長10文字の戻り値を持つことを示している。また、パラメーターがないので上の例のようにEND-PRをDCL-PR構文の一部としてもよいし、下の例のように行を分けてもよい。

 

○ プロシージャー・プロトタイプの定義例1

 

 例2は、プログラムの外部名がtestPgmで、固定長10文字のnameという定数をパラメーターとして持つプロトタイプである。END-PRの後にプロトタイプ名を続けた形である。

 

○ プロシージャー・プロトタイプの定義例2

 

・パラメーター宣言

 パラメーターの宣言は、正式にはDCL-PARMで開始する。ただし、データ構造のサブフィールド定義のDCL-SUBFと同様のルールが適用でき、パラメーター名がRPGの命令コード(read、writeなど)と同じでない場合はDCL-PARMを省略できる。

 

○ プロシージャー・プロトタイプの宣言〜パラメーター1

 

○ プロシージャー・プロトタイプの宣言〜パラメーター2

 

プロシージャー・インターフェース

基本構文

 プロシージャー・インターフェースの定義は、プロシージャー・プロトタイプと非常によく似ている。DCL-PIで開始し、インターフェース名(名前がない場合は、*N)、0個以上のキーワードが続き、セミコロンで終了する。

 プロシージャーに戻り値があり、そのデータ型をデータ型キーワードで指定する場合は、それを1番目のキーワードにしなければならない。

 最後のEND-PI構文も、プロシージャー・プロトタイプと同様に必須である。関連するルールも同じだ。オプションでEND-PIの後にインターフェース名を続けることができる。ただし、END-PIをDCL-PI文の一部にする場合は、END-PIの後にインターフェース名を続けることはできない。

 例1は名前なし、パラメーターなしのインターフェースの定義である。1番目のキーワードで、プロシージャーの戻り値のデータ型(固定長10文字)を指定している。パラメーターがないのでEND-PIをDCL-PI構文の一部としてもよいし、行を分けてもよい。

 

○ プロシージャー・インターフェースの定義例1

 

 

 例2のtestPI1は、2つのパラメーターを持つインターフェースである。END-PIの後にインターフェース名を指定している。一方、testPI2は、パラメーターを持たず、END-PIをDCL-PI構文の一部としているため、END-PIの後にインターフェース名は指定できない。

 

○ プロシージャー・インターフェースの定義例2

パラメーター定義

 パラメーター定義についても、プロシージャー・プロトタイプの場合と同様である。正式にはDCL-PARMで開始するが、RPGの命令コード(read、writeなど)とパラメーター名が異なる限りはDCL-PARMを省略できる。

 

○ プロシージャー・インターフェースの定義例

〜パラメーター

 

プロシージャー(P)仕様書

 

基本構文

 命令コードDCL-PROCで開始し、プロシージャー名、オプションで戻り値タイプ、0個以上のキーワード、セミコロンで終了する。次に、オプションでパラメーター定義が続く。最後にEND-PROC構文が必須である。END-PROCの後に、オプションでプロシージャー名を続けることができる。

 例1は、exportキーワードを使って他のモジュールからの呼び出し可能なプロシージャーを定義している。定義はDCL-PROCで開始し、END-PROCで終了する。この例ではEND-PROCの後にプロシージャー名を指定していない。

 

○ プロシージャー(P)仕様書の例1

 

 例2では、プロシージャー・インターフェースでEXTPROC(*DCLCASE)が指定されている。*DCLCASEはフリーフォームでのみ使用できるパラメーターで、外部名とここでの定義名が同じであることを意味する。この例ではインターフェースに名前がないので、外部名はプロシージャー名“getNextOrder”と同じということになる。

 またINDキーワードもフリーフォームでのみ使用でき、識別子を意味する。ここではプロシージャーの戻り値が識別子であることを示す。

 END-PROCの後には、プロシージャー名が続いている。

 

○ プロシージャー(P)仕様書の例2

 

 これまで見てきたとおり、第3フェーズに入ったRPGは、制御(H)仕様書、ファイル(F)仕様書、定義(D)仕様書、プロシージャー(P)仕様書をフリーフォーム化した。これによりさまざまな制限がなくなり、仕様書のコーディングが飛躍的に容易になった。全般的にも固定フォームとフリーフォームの混在の許可や、デフォルト値によるコード省略など、細かい部分でコーディングのしやすさが配慮されているといえる。

 IBMは今回のフリーフォーム化の目的を、新規のRPGプログラマーに対しても、既存のRPGプログラマーに対しても、RPGプログラミングを容易にすることとしており、これを機にRPGプログラマーと非RPGプログラマーの間の垣根を取り除き、RPG全体の活性化を促進したい考えだ。

 今回のフリーフォームRPGについてはいろいろなご意見があるだろうが、まずは既存の固定フォーム構文をフリーフォームに変換するなどして、ぜひ進化したフリーフォームRPGを体験してほしい。

 

著者|岩下 文香

日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社
クライアント・イノベーション

[i Magazine 2014年2月号掲載]

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