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国際労働機関(ILO)、生成AIが雇用に与える潜在的影響をグローバル分析 ~「生成AIにより雇用は減少する」との懸念を否定、むしろ職業を補強する方向に変化する

国連機関の1つである国際労働機関(以下、ILO)は8月、「生成AIと雇用:雇用の量と質に対する潜在的影響についてのグローバル分析」と題したワーキングレポートを公開した。

生成AIの登場により、雇用喪失に対する懸念がグローバルに広がっている。同研究はそれを前提に、生成AI、特にGPT-4が影響を与える職業とタスクをグローバルに分析し、そのような影響が職務の量と質に及ぼす可能性について言及している。それによれば、このテクノロジーは「自動化」よりもむしろ、職業の「補強」に影響を与えると予測している。

影響が最も大きいのは、広範な職業に付随する事務作業である。事務作業の24%が大きな影響を受け、58%が中レベルの影響を受けると指摘している。

それに基づけば、生成AIに最も大きな影響を受けるのは、事務職の雇用比率が高い高所得国および高中所得国である。事務職は女性の重要な雇用源であるため、性別が大きく影響すると考えられる。

他の職業群では、最も大きく影響を受ける率は1~4%の間で変動し、中程度の影響を付ける作業は25%を超えない。その結果、このテクロノジーが与える最も重要な影響は、職種を完全に自動化することではなく、仕事を補強すること、つまり職種内の一部の仕事を自動化することで、他の仕事に時間を割けるようにすることであると指摘している。

潜在的な雇用効果は、職業構造の違いにより、補強であれ自動化であれ、国の所得階層によって大きく異なる。低所得国では、自動化の影響を受けるのは全雇用のわずか0.4%であるのに対し、高所得国では、その割合が5.5 パーセントに達する。

またその影響度は性別に大きく影響され、自動化の影響を受ける可能性のある女性の割合は男性の倍以上になる。より大きな影響を受けるのは職業の補強であり、低所得国では雇用の10.4%、高所得国では雇用の13.4%に影響を与える可能性がある。

ただし上記の分析は、インフラの制約により低所得国での生成AI利用の可能性が妨げられ、生産性格差を拡大する可能性が高いことは考慮していない。

同レポートは、正確な推計値に価値があるのではなく、今後起こりうる変化の方向性と性質について洞察を与えることこそが重要であると強調している。こうした洞察は政府、および企業や組織、研究機関など社会を構成するパートナーに対して、雇用の質に焦点を当て、公正な業務の移行を確保し、対話と適切な規制に基づく積極的な政策の必要性を強調している。

注:このレポートでは、ISCO-08基準における4桁の職業分類とそれに対応する作業に基づいている。GPT-4モデルを使用して、GPT技術に影響を受ける職業レベルおよびタスクレベルのスコアを推定し、その後、これらのスコアをILOの公式統計とリンクさせて、世界の雇用推計を導出している。また、埋め込みベースのテキスト分析とセマンティック・クラスタリング・アルゴリズムを適用することで、自動化の可能性が高いタスクの種類についての理解を深め、自動化・補強効果がさまざまな追加要因や特定の国の状況に強く依存することを分析している。

Generative AI and Jobs: A global analysis of potential effects on job quantity and quality (ilo.org)

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