「IIJ GIO」の設計思想に
IBM i独自の設計思想を融合
IIJグローバルソリューションズは、2013年にIBM iクラウドサービス「IIJ GIO Power-i
サービス」(以下、GIO Power-i)の提供を開始している。親会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が展開するクラウドサービス「IIJ GIO」シリーズの基盤上に構築したIBM iクラウドサービスで、データセンター事業者ならではの特徴を数々備えている(図表1)。
その1つは、高度な耐障害性である。GIO Power-iではサーバー(CPU、メモリ)、ストレージ、ネットワークなどのクラウドサービスの構成要素をすべて冗長化し、ハードウェアに障害が起きたとしてもシステムへの影響を最小限に抑える仕組みが採用されている。
もう1つは、高度なセキュリティである。他のユーザーと共用するCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークなどのリソースをサーバー仮想化(PowerVM)やVLAN技術による抽象化で保護し、かつLUNマスキングで区分けすることにより、高度なセキュリティを実現している。これによりユーザーは各リソースを自社の専用リソースのように利用することができる。
またオンプレミスからのアクセス方式も「共有インターネットVPN接続」「専用インターネットVPN」「専用網」を用意し、「共有インターネットVPN接続」構成の場合は、ユーザー側拠点に同社提供のVPN装置を配置することにより、ユーザーがオンプレミスで使用中のサーバーのアドレスを引き継いで利用を可能にしている。ビジネス統括本部の井川淳一氏(ビジネス開発本部マーケティング戦略部マーケティング戦略グループ)は、「これらの仕組みは、IIJ GIOの設計思想にIBM i独自の設計思想を融合させて構築したものです」と話す。
無償パフォーマンス分析は
約400社が利用
GIO Power-iは「IaaSに徹したクラウドサービス」(井川氏)である。OSから上層のミドルウェアやアプリケーションの運用・保守はユーザーの責任範囲となる(OSのバージョンアップやPTF適用もユーザーの作業範囲)。これは他社のIBM iクラウドサービスがさまざまなマネージドサービスでサービスを拡大しているのに対して、Power
VSと並ぶGIO Power-iの特徴である。
GIO Power-iには、CPWのサイズ別に5つの標準提供モデル(「グレード」と呼ぶ)がある。またそれぞれに“Lタイプ”というディスク拡張モデルがある。リソースの拡張は、CPUは600CPW単位、メモリは2GB単位、ディスクは140GBまたは600GB単位で行えるためカスタマイズモデルも提供可能(図表2)。
同社では「無償パフォーマンス分析」と「無償トライアル」という2つの無償サービスを提供している。
無償パフォーマンス分析は、サイジングのための無償サービスで、ユーザーのCPU・メモリ・ディスク・LANの利用状況を同社が分析しレポートする。「1日分のデータなら約1週間でレポート可能です。クラウドへの投資を最適化するには、事前のサイジングが欠かせません」と、井川氏は言う。
「無償トライアル」は、無償パフォーマンス分析に基づく推奨構成を契約前に確認するためのもの。ユーザーは推奨構成にアプリケーションをインストールし、パフォーマンスなどの検証・確認できる。
無償パフォーマンス分析は、これまでに「約400社」(同社)が利用してきたという。
「分析の結果、GIO Power-iの利用に進むのは半数程度のお客様で、半数のお客様は自社のシステムがクラウド向きではない(構成や費用感)と判断し、移行を断念されます。無償パフォーマンス分析は、お客様にGIO Power-iへ移行した場合のシステム構成や費用感をより身近に知っていただくいいチャンスだと考えています」(井川氏)
GIO Power-iの利用社数は、現在約170社(350区画)。「従業員1000人未満の中堅中小企業が大半です」と、井川氏。
「クラウドへの移行は、お客様のIBM Power更改のタイミングで行われることが多く、GIO Power-iでは2019年のPower6、Power7マシンのEOS時に50社以上も利用が増えました。この1〜2年はPower8のEOSに加えてIBMハードウェア/ソフトウェアの高額化が重なって移行を決断されるお客様が目立ちます。また、オープン系へ移行する際の“つなぎ”としてGIO Power-iを利用するお客様も増えています。IBM iクラウドを選択されるお客様は、今後ますます増えていくと見ています」(井川氏)
[i Magazine 2024 Spring掲載]