iEVO開催や支援サービスなど
ユーザーへの働きかけを拡大
IBMのVAD(Value Added Distributor)であるイグアスは、最近、IBM i分野の取り組みを拡大している。VADは、メーカー(IBMなど)から製品・サービスを仕入れて販売業者(パートナー)へ販売する卸にあたるが、「Value Added」(付加価値の提供)とあるように、製品・サービスを右から左へ単に流すのではなく、営業・技術・マーケティングなどのあらゆる局面でパートナーを支援する役割を担っている。そしてイグアスは最近、商流の先にいるパートナーの、さらにその先にいるユーザーへの働きかけを強めているのである。
たとえば、昨年11月に1000人規模の視聴者を集めて大成功を収めたオンラインイベント「iEVO 2020」の開催がその1つである。IBMやパートナーなどによる30の講演と資料ダウンロードの場などをWeb上に設け、ユーザーに情報収集や知識習得の機会を提供した。今年も秋に開催の予定という。
もう1つは、「イグアス『見える化』サービス」「イグアス導入支援サービス」「ヘルプデスクサービス」という、ユーザーがIBM・パートナー製品を利用しやすくする支援サービスの提供である。
ADであるイグアスがユーザーへの働きかけを拡大している理由について、ソリューション事業部ソリューション本部の結城敬宜 本部長は、「システムのモダナイゼーションやDX化の流れのなかで、技術の幅が大きく広がり、高度化し、スピードが速くなっています。そのすべてを1社でカバーするのはとうてい無理で、パートナー様も例外ではありません。またユーザー様もこれまで以上に幅広い情報や支援を求めておられるため、 パートナー様ご支援の一環として、ユーザー様への取り組みを推進しています」と、狙いを説明する。
「AIなどの最新技術採用」や
「RPG資産の利活用」に高い関心
イグアスは、「iEVO 2020」に参加したIBM iユーザーを対象にアンケートを実施した。図表1がその集計で、クラウド・ソフトウェア営業部テクノロジーリードの藤沼貴士氏は、次のように感想をもらす。
「大きな傾向は想像どおりでしたが、『AIなど最新技術採用』を課題とするお客様が予想以上に多く、その一方で『事業継続』への関心が低いのが意外でした。また『クラウド』への関心・課題が中程度なのは、コストやセキュリティ面で懸念をおもちのお客様がまだ一定程度いるからで、そうではないことを強く訴求していく必要性を感じました」(藤沼氏)
また結城氏は、「私どもは一昨年来、IBM i資産分析ツールのX-Analysisを推奨してきましたが、『RPG資産の利活用』が2位に入っており、今後もその活動を継続し、お客様の課題を取り除いていくのが当社の使命であると痛感しました」と話す。
イグアスは現在、「クラウド」「AI」「RPG資産の利活用」の3つを柱に、パートナー支援とIBM iユーザーへの提案活動を推進中である。
クラウドに関しては、第1弾として昨年9月に「イグアス Power on Cloud BCPサービス」をリリースした。IBMのPower Virtual Server上に災害・障害対策用のバックアップ機を配置し、オンプレミスの本番機との間でHA・DRを実現する。イグアスはこれに加えて、導入前の「開発・検証サービス」やクラウドへの移行・運用監視を支援する「マネージドサービス」も提供中である。
そして今、第2弾として準備中なのが「イグアス総合クラウドサービス for IBM i」である。今回のレポートでは詳しく紹介できないが、「Power Virtual Serverへの移行からシステムの設計、ISVアプリケーションのご提供、稼働後の運用・保守サービスまでトータルにご支援するフル・マネージドのサービスです」と、結城氏は説明する。
現在、IBM iのワークロードをPower Virtual Serverのようなパブリッククラウド上で運用する日本のユーザーは多くないため、ユーザーの間にコストや運用に関する不安や懸念があるのは事実である。
しかし、「コストは、オンプレミスで運用する場合の人件費や設備・施設の維持・管理費用などを含めると、5年程度の利用であれば、クラウドのほうが安くなります。また、オンプレミスからの全面移行だけでなく、部分的な移行やテンポラリーな利用も可能で、お客様の事情に合った使い方ができるのがクラウドのメリットです。システムを資産としてもつのではなく経費化できるメリットもあります」と話すのは、ソリューション事業部ソリューション営業部の徳田幸一氏である。
図表2は、イグアスの試算によるオンプレミスとクラウドのコスト比較、図表3はイグアスが整理したオンプレミスからクラウドへの移行パターンである。徳田氏は、「Power Virtual Serverを使いやすくする、さまざまなサービスを今後ご提供していく予定です」と語る。
ハイブリッドの検証環境を提供
IGUAZU Hybrid Cloud Center
また、クラウド・AI・RPG資産の利活用の3つに関わる取り組みとして、「IGUAZU Hybrid Cloud Center」と呼ぶデモ・検証センターを今年度に新設する予定である。オンプレミスとクラウドの両方の最新環境を用意し、無償でユーザーに開放する(クラウドの利用料金はユーザー負担)。テクニカルスタッフによる技術支援もあり、20種類に及ぶ製品・技術デモも用意するという(図表4)。
「企業システムの次を考える場合、最近は何らかのクラウドサービスを含めて検討するのが当然のようになっています。しかしハイブリッド構成の検証は、お客様にとって費用・技術・要員の面で負担が大きく、スムーズに進まないことが多くあります。IGUAZU Hybrid Cloud Centerは、ハイブリッドシステムをご検討中のお客様を対象に、実運用に近いシステムを構築して、検証を行っていただくためのものです。専門資格をもつメンバーがさまざまな技術サポートをご提供し、お客様のスムーズな検証をご支援します」と、藤沼氏は説明する。
検証のケースとしては、既存システムのクラウド化やBCP、オンプレミスとクラウドとの連携によるデータ活用、BCP、コンテナ環境、AI、IoT、セキュリティなどの先進的な技術検証を想定しているという。
結城氏は、「iEVOのアンケート結果を見ても、お客様が実に多様な課題をもっておられることがわかります。お客様のニーズに適うサービスの拡充を進めていく考えです」と抱負を語る。
[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]
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