PowerVSの受注件数は
2倍のペースで増加
イグアスは、日本IBMのVAD(付加価値ディストリビュータ)として、日本IBMやサードベンダーの製品・サービスをパートナー(ベンダー)に提供する事業を展開している。IBM Powe分野では最多のパートナー数を誇り、8割以上のシェアを占める。IBM Power Virtual Server(以下、Power
VS)に関しても、パートナーが販売したPowerVSの大半はイグアスを経由する商流である。つまりイグアスはPowerVSの販売動向を最もよく知るポジションにあると言える。
パートナービジネス事業部の徳田幸一氏(クラウド & AI営業開発部)は、「PowerVSは2021年以降、倍々のペースで新規受注件数を増やしています(図表1)。
毎年、上半期で前年の新規受注総数を超える勢いで、2023年はとくに後半に急増し、本番利用が9割以上を占めたのが注目すべき点でした」と語る。さらに、「利用企業を見ると、やはり従来からのIBM iユーザーが多数ですが、既存システムの置き換えだけではなく、BCP対応を検討するユーザーも多く見受けられます」と話す。
徳田氏はまた、「受注内容を見ると、2022年まではオンプレミスの内容をそのままリフトするケースが大半でしたが、最近はそれだけではない案件が増え、ニーズの広がりを感じています」と言い、新しい動きとして次の3点を挙げる。
(1)WindowsクラウドとPowerVSとのクラウド連携
(2)IBM iの利用インスタンス(区画)数の増大
(3)PowerVSの東京-大阪間のHA構成
(1)は、PowerVSへの移行と同時にWindowsシステムもIBM Cloudや他社クラウドなどへ移行し、両クラウド間で連携させるもの。
(2)については、「従来は多くても2インスタンス(区画)程度だったのが3インスタンス(区画)以上をお求めになるお客様が増え、中には10インスタンス(区画)以上の見積りを要求されるケースもあります」と、パートナービジネス事業部の小島奈津美氏(クラウド & AI営業開発部)は話す。
(3)は基幹システムのPowerVSへの移行に伴い、HAもクラウド化するケース。IBMの東京/大阪のリージョン間でHAを組むケースも増えているという。
PowerVSの普及に貢献する
見積・構成支援
イグアスはVADとして、次のような活動を行っている。
・製品・サービス情報の提供
・営業支援、見積・構成支援
・セリング支援
・テクニカル支援
・導入支援
・マーケティング支援
このなかでPowerVSの普及・促進に大きく貢献しているのが、見積・構成支援である。
その内容は、パートナーから見積依頼や案件相談が入ると、社内の各部署が連携してPowerVSへ移行した場合の構成やライセンス、サポートなどの要件をまとめ、見積額を算出してパートナーに回答するというもの(図表2)。
IBM Cloudには「コスト見積もりツール」というユーザーも利用できるサービスがあるが、イグアスによるこうした支援が不可欠なのは、「PowerVSが日々進化しているため、サービスや見積もりサイト、見積項目が前触れもなく変更・廃止になることがあるため」(小島氏)だからだ。「PowerVS関連サイトのチェックは毎朝のルーティンです」と、小島氏は語る。
同社は2021年に「イグアス総合クラウドサービス for IBM i」という、お客様に代わってイグアスがPowerVSへの移行、各種ソリューション提供、そして稼働後の運用支援までを一括管理するサービスをリリースした。しかし現在は「お客様自身による柔軟な運用・管理(リソース変更等)が可能な契約パターンが多くなりました」と、徳田氏は話す。
「PowerVSへの関心は年々高まり理解も広がっていますが、市場全体で見るとまだまだ一部に限られ、IBM iユーザーやベンダーへのさらなる情報提供や啓蒙活動が必要だと考えています。新しいサービスやネットワークに関する最新情報の提供にはとくに注力したいと思っています」(徳田氏)
同社は、「イグアス ハイブリッドクラウドセンター (IHCC)」と呼ぶ各種ソリューションやクラウドサービスのデモ・検証環境などを技術支援とともに提供する施設を開設している(https://www.iguazu-sol.jp/ihcc) 。また、製品・サービスの紹介サイト「イグアス ソリューションポータル」やIBM i総合情報サイト「iWorld Web」でクラウド関連情報の発信を活発に行っている。